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前夜

「-ダハハハハッ!良いモノを見せて貰ったぞっ!」

 それから1時間後。いつものように会長の屋敷に行きお部屋に入ると、物凄く上機嫌で迎えられた。

「…はあ、はあ。…全く、こんなにも笑ったのは久しぶりだ……。

 …『星になる前』に最高の思い出が出来た。ありがとうのぅ」

「……それは良かった。…ですが、そのお言葉は『明日を無事に終えて』からです」

「…全く、気持ち良く終えたいのにとことん無粋な連中じゃ。…まあ、そっちの方もあまり心配しとらんよ。

 -何せ、最高にして最強の面子が揃っているのじゃから」

 会長は俺を見た後に、後ろに居たお三方に目線を向けた。

「…持ち上げ過ぎですよ、会長」

「まあ、精々微力を尽くすとしましょう」

「精一杯、頑張らせて頂ぎますわ」

 するとお三方は、謙虚な返事をした。…本当、見習うべき点が多い方々だ。

「期待しておるよ。…さ、真面目な話はここまでにして楽しいディナーを始めるとするかの…と言いたい所じゃが-」

『-会長、-お二人-をお連れしました』

 会長がなにやら意味深に言葉を切ると、エアウィンドウが展開した。…『お二人』?……まさか-。

「「「……」」」


「ご苦労。…まあ、流石に分かるか」

 お三方と俺とが確信に近い予想を立てていると、会長はあっさりと『認めた』。

「-し、失礼します…」

「……します」

 直後、寝室のドアは開き案の定ちょっと高級かつお洒落な格好をした2人…ランスター『姉妹』が緊張しながら入って来た。…うわ、こう言っちゃなんだがまるで別人だな。

「…こ、こんばんは……」

「……ばんは」

 二人は使用人に導かれ、空いている椅子に座る。そして、消えいりそうな声でこちらに挨拶した。

「おう。よう来たのぅ」

「「「こんばんは」」」

「…会長、もしや-」

「-そう。お前さんが求めとった『人材』だ」

 俺の確認に会長は頷いた。…マジか。

「「……はい?」」

 すると、詳しい説明を受けていないであろう二人はぽかんとした。

「…もしかして、二人にも『当日』手伝って貰うのですか?」

「しかも、聞く限り『特別な役割』のようですが?」

「はい。…と言っても『危険』がないようキチンと私がフォローしますのでご安心ください」

「……ちょ、ちょっと待って下さい。一体、何の話をしているんですか?」

 すると、アイーシャさんは待ったを掛けた。

「まあ、簡単に言うと翌日に『大きな事件』が起こりそうなので二人にも手伝って欲しいんですよ」


「-っ!?な、何ですって?」

「………信じられない」

「…まあ、直ぐには信じて貰えないでしょう。…なので『これ』を読んでみて下さい」

 俺はタブレットを取り出し、アイーシャさんに渡した。

「……。……っ!こ、この人達は…」

「…『参加証泥棒』。……嘘」

 二人はタブレットに記載された『報告書』を、食い入るように読んだ。…いやー、まさかこんなに詳細な『計画』が入手出来るとは思ってなかったな。

「-……、…ま、まさか『こんな事』が起ころうとしていたなんて……。……ひ、ひょっとしてお三方が此処に居らっしゃるのは…?」

「ええ。私達も微力ながら協力する事にしました」

「それと、信用出来る常連達も地上と宙に別れて協力してくれる事になっています」

「…そして、我々三人は当日に『立ち上がる』であろう有志を率いての遊撃だ」

「…あ、ちなみに私は『トラブル解消』を行うつもりです」

「……な、なるほど。……でも、だったら何故私達にも協力を?」

「…正直、それだけの面子が揃っていれば私達の役割はないと思うんですけど?」


「…またまたご謙遜を。会長が貴女達を呼んだという事は、『それだけ』の技量があると知っているからです。

 …ですよね?」

「ああ。

 -まずはアイーシャ」

 一層困惑する二人に会長は自信満々に頷いた。そして、まずアイーシャさんを見る。

「…っ!は、はい…」

「お前は昔から、『避ける』のや『全体を見るの』が上手じゃったな?」

「は、はい」

「ならば問題はない。お前が『手伝う事』はその才能を使えば『簡単』に出来る内容じゃ。

 …次にアイン」

「…はい」

「お前は『集中力』があり『耳も良い』。その上度胸もあったのぅ?」

「……はい」

「ならばお前は役立たず等ではない。その才能や精神の強さは必ず『彼の役』に立つじゃろう」

「「……」」

「…いやはや、会長が推薦するだけはありますね」

「驚きましたわ…。会長がそこまで二人の才能をご存知だったなんて」


「…となると、後は『武装』と『役割』だけか。…どうする気だ?」

 マオ氏の問いに、俺は予め持ち込んでいた複数のアタッシュケースを取り出した。

「…二人には俺のフォローをお願いしたいんですが、宜しいですか?」

「「……へ?」」

「…だから、『フォローするから大丈夫』と仰ったのですね」

「…た、確か、オリバーさんは『トラブル解消』って言いましたが具体的には何をするんですか?」

「…簡単ですよ。

『ロストチップ』を『システムフロア』まで死守し、尚且つ道中並びにそこで良からぬ事をしている『敵勢力』を叩き潰します」

「………マジなんすか?」

「……一番大変なポジションじゃないか」

「…確かに一番大変ですが、同時に一番『安全』なポジションですよ」

「…何せ『ロストチップ』を持っているのだ。連中も下手に手は出せまい」

 二人はドン引きするが、ジュール氏とマオ氏はこちらの真意を察してくれた。

「まあ、勿論しっかりとした『プラン』は立てています。…その半分は-」

 そう言いがらアタッシュケースの一つ開き、全員に中身を見せた。

「-こういう『アイテム』達です。

 まず、この二つのヘルメットは右がアイーシャさん左がアインさん用です」


「…見た感じ、同じデザインのようですが……」

「…『中身』が違うの?」

「ええ。…後は-」

 俺は一旦ヘルメットを戻し、二つ目を開ける。

「こっちのグローブはアインさん専用の装備ですね」

「…もしかして、私と姉さんで違うの?」

「ええ。…あ、ちなみにアイーシャさんは『良くご存知のブーツ』ですよ」

「-本当に、協力を承諾すれば『あれ』を貸して頂けるんですか?」

 ふとアイーシャさんと見ると、彼女は若干興奮しながら聞いて来た。

「…勿論です」

「…っ、失礼しました…。…アイン-」

「-…まあ、お三方も大丈夫って言ってるし良いと思うよ?…それにこれは『良い機会』でもある」

 彼女の問いに妹は異を唱えなかった。…しかし、なんだろうか?

「…では、我々も協力させて頂きます。

 ちなみに、報酬は?」


「ご心配なく。イエロトルボの時と同様帝国政府がしっかりと支払ってくれますよ」

「なら安心ですね」

「-さて、話しも纏まったようだし皆はこの後はどうするんじゃ?」

「…とりあえず、我々は夕食の時間までに出来るだけの準備をしておきます」

「私は-。

 …二人は、この後に何か用事はありますか?」

「特にありません」

「…うん」

「なら、この後当日のプランと『動作』の確認をしましょう」

「…分かりました」

「…了解」

「…という訳で会長。『あのお部屋』を貸して頂けないでしょうか?」

「構わんぞ。…ほれ」

 会長は許諾し、例の『鍵』を貸してくれた。

「……まさか?」

「ええ、そのまさかです。」

 では会長、それとお三方。私達はこれにて失礼します」

「「ああ」」

「「また後程」」

 俺は断り入れ、二人を連れて『格納庫』に向かうのだった-。



 -勿論、そこでアイーシャさんが暴走し掛け何故か『ゲーム』をしたりするのだがそのおかげで濃密なトレーニングが出来た。…そして、気付けばディナータイムになっていたので俺達は会長の部屋に戻りそれから最高の夜を過ごすのだった。


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