『-さあ、遂にこの時がやって来てしまいました…。短いようで長かった本選もいよいよファイナルラウンドを迎えますっ!
果たして、誰が-最終関門-に挑めるのかっ!?
…皆様は今宵、その目撃者となるっ!』
『-うぉぉ~っ!』
『さあ、まずは激戦を勝ち抜いた四人の英傑達の紹介だっ!
-まずはこの方っ!大会参加歴、そして優勝回数最多の大ベテラン、アーロン=マオッ!』
実況の紹介が入ると、マオ氏は悠々と競技フィールドに向かって行った。
『-そして次はこの方っ!女性船乗り達の-永遠のお姉様-っ!フレイ=クルーガーッ!』
『お姉様、頑張って~っ!』
クルーガー女史がフィールドに入ると、女史のクルーやファンによって結成された『チアガール』達が声援を送った。
『そして、三人目はこの人っ!最年少でプラチナランク傭兵に登り詰めた天才っ!エリィ=マクシミリアッ!』
呼ばれた彼女は、少し緊張しながらフィールドに出て行った。
『そして、最後はこの人っ!まさかまさかのルーキーが、決勝の舞台に上がって来たっ!…ビギナーズラック?いや、紛れもなく彼は実力で此処まてやって来たのだっ!
さあ、皆様も皆様を常に楽しませて来た-彼-ご一緒にお呼び下さいっ!
…せーのっ!』
『-オリバー=ブライトーーーーーッ!』
熱のあるアナウンスと凄まじい人数のコールを聞き、俺はフィールドに向かって駆け出した。…いやしかし、たった二日間でここまでの人気を得られるとはな~。
『さあ、ファイナルラウンドはこの選ばれし四人で行われますっ!
…そして、肝心のゲームはこれだっ!』
実況のアナウンスが流れると、フィールドの中心から至るところに取っ掛かりとゴルフボールサイズの『色とりどりの玉』が取り付けれた極太の円柱がせり上がって来た。…ほう、今年は『これ』か。
『-そう。今年のファイナルラウンドは大人気の-ハーヴェスト&クライミング-だっ!
ルールは単純っ!
一つ、円柱に取り付けられた取っ掛かりを登りながら-ポイントボール-を回収っ!
二つ、制限時間内に登り切りるっ!
三つ、ポイントボールの合計と-残りタイム-が-得点-となるっ!
…ちなみに、ポイントボールは上に行くほど高得点だっ!…ただし-』
すると、デモンストレーションの為にスタッフが現れ素早く円柱を登って行く。…本当、此処のスタッフって高スペックだよな。
感心しながら見ていると、スタッフは一番上の紫色の玉を取り背負った透明なリュックに入れた。すると、数秒後に玉は光り『負荷』がリュックに掛かった。
『-このように、-50-のボールは-グラビティボール-となっておりますので欲をかくのはオススメしませんっ!…つまり、考えながらの攻略が求められるのですっ!
さあ、そうこうしている内に選手達の-スタンバイが出来たようですっ!』
…そう。実況が言うように説明の間俺達は安全の為の装備していたのだ。
『それでは、只今よりファイナルラウンドを開始しますっ!
皆様、お願いしますっ!』
『-5、4、3、2、1、GO!』
カウントダウンの後ブザーが鳴り響き、俺は決められた初期ポジションから登り始めた。
『さあ、遂に始まりましたっ!
-おおっと、各選手下段のポイントには目もくれずに一気に中段まで登って行くっ!』
…やっぱり、考える事は同じか。
しかし、俺は慌てる事なく慎重に登って行く。そして、手近なボール…『20ポイント』を取りリュックに入れた。
『-っ!マオ選手、ボールゲットッ!少し遅れてブライト選手もゲットッ!
おっと、ようやくクルーガー選手も中段に到着したっ!マクミリアス、出遅れたかっ!?』
そんな早口の実況を、俺は平行移動しながら聞いていた。…やっぱりマオ氏は早いな。それに、女史もなかなかに早い-。
『-マオ選手、三つ目ゲットッ!続いてブライト選手、三つ目ゲットッ!
おおっと、クルーガー選手素早くも二つのボールをゲットッ!遅れてマクシミリア選手も二つ目ゲットッ!』
「-っ!」
そんな中、同じく平行移動していたマクシミリア選手と出くわした。…ふむ、ターゲットが被りそうだな。…それに、そろそろマオ氏と女史も『勝負を決める頃』だし-。
「-っ!?」
『-あっとっ!?ブライト選手、-降下-を始めたっ!?』
素早く決断を下した俺に、彼女も実況も驚いた。まあ、普通は考えられないよな。
『ブ、ブライト選手、まるでレスキューのように素早く下段まで降りたっ!
…な、なんだあの動きはっ!?ブライト選手、まるで実りを収穫する-果樹園農家-のようにどんどん回収して行くっ!?』
実況の言うように、俺はボールをリュックに投げ入れながら次々と回収して行った。
-…良し。こんなもんかな。
『-っ!一方、マオ選手とクルーガー選手はそれぞれ五つ目と四つ目をゲットッ!マクシミリア選手は、三つ目を……っ!オリバー選手、15個数を回収し凄まじい速度で再度登り始めたっ!
しかし、既に中段は取り尽くされているっ!そして、マオ選手は既に回収を始めクルーガー選手も間もなく始めようとしているっ!果たして、間に合うのかっ!?』
…現状俺がリードしているが、直ぐに逆転されるだろう。
しかし、それでも俺は勝利を諦めてはいなかった。
『-マオ選手、上段二つ目ゲットッ!クルーガー選手一つ目ゲットッ!おっと、此処でマクシミリア選手とブライト選手がほぼ同時に上段に到着したッ!』
「-っ!…どういうトレーニングを積んだら、そんな風になるのかしらっ!?」
「…簡単ですよ-」
俺は突然の質問に、ニヤリと笑いながら『負荷』状態のボールを下段の時と同様リュックに投げ入れる。
「-……な」
「…『そういうのが必要な環境』で育って来たからですよ」
『-は、はあっ!?ブライト選手、重たいボールを乱雑に入れたっ!あれでは、肩に負荷が掛かり持たなくなる……ぞ……?』
「………-」
当然彼女も実況も唖然とするが、追い討ちのように俺が素早く平行移動するのを見て愕然とした。
『-な、な、な、なんだ~っ!?ブライト選手、平然と移動を始めたっ!というか、乱雑に入れた際に発生する筈の肩への衝撃が見えないように思えたぞっ!?第一、相当な重量になっている筈のリュックを背負っているのにスピードはほとんど落ちていないっ!?
い、一体どんなテクニックを使っているんだっ!?』
…まあ、いうほど大したテクニックは使っていないんだけどな。どちらかと言えばこれも『必要だったから身に付けた』モノだ。
『-しかし、マオ選手は三つ目を回収っ!クルーガー選手は二つ目を回収し一足先にゴールを目指し始めたっ!…そうそう、ちなみに残りタイムによるボーナスは10秒につき-10-入りますっ!』
「-全く、本当に君には驚くばかりだっ!」
実況がアナウンスをするなか、マオ氏は心底嬉しそうに言った。
「恐縮です」
『-マオ選手、四つ目を回収っ!そして、ゴールに向かって行きますっ!そして、今クルーガー選手がゴールッ!残りタイムは2分45秒っ!つまり、160ポイントが加算されましたっ!
おおっと、ここでオリバー選手三つ目を回収っ!しかし、依然スピードに大差なしっ!そして、マクシミリア選手ようやく二つ目を回収っ!…おっと、やはり辛そうだっ!』
…しかし、それでも移動出来てるあたり流石といえよう。…っと、『そろそろ』か。
『-マオ選手、ゴールッ!残りタイムは2分20秒っ!すなわち、140ポイントが入りますっ!
おっとっ!オリバー選手、四つ目回収っ!…というか、何でスピードが落ちないんだっ!そして、更に斜め右上に移動を開始したっ!まだ、取る気かっ!?』
実況は興奮と驚愕の混じったアナウンスをした。…まあ、次で終わらせるつもりだけどね。
『-マクシミリア選手、三つ目回収っ!そして、ゴールに向かって行ったっ!
一方、ブライト選手は五つ目回収っ!…そして、ようやくスピードが落ちた模様っ!ついでにゴールを目指し始めたようだっ!』
いやしかし、なんか『昔』を思い出すな~。…本当『アイツ等』って無駄に重たかったし。
『-おっとっ!?マクシミリア選手、ペースダウンっ!そして、その間にもブライト選手は涼しい表情で迫るっ!』
「-っ!?」
「お先に失礼します」
彼女は驚愕でこちらを見たので、断りを入れてから追い抜いた。
『ゴールッ!オリバー選手、残りタイム1分42秒っ!すなわち、100ポイントが入りますっ!』
「-…ふう」
俺はゆっくりと腰を下ろし、リュックを外した。…はあ、楽になった~。
「-……っ、……っ、…っ」
『-そして、今マクシミリア選手がゴールッ!残りタイム1分33秒っ!すなわち、90ポイントが入りますっ!
そしてここで、ゲームセットッ!なんとなんと、全員1分残しでクリアしたっ!』
すると、円柱はゆっくりと下がって行き数分後には再び地上に降りていた。そして、直ぐにリュックは集計スタッフに回収されいよいよ結果発表となる。
『-さあ、どうやら集計が終了した模様ですっ!果たして、結果はいかにっ!?』
直後、会場は暗くなりスポットライトが色々な処を照らし出す演出が始まった。…そして、数秒後4本のスポットライトは俺を照らし出した。
『-やっぱり彼は決めてくれましたっ!
オリバー=ブライト選手、510ポイントを獲得っ!つまり、初のルーキーが-最終関門-のチケットをゲットしましたっ!』
その瞬間、大歓声や惜しみない称賛の声が会場中に鳴り響いたのだった-。