『-さあ、本選もいよいよ大詰めとなって参りましたっ!
それでは、本選三回戦-クイックシュート-を開始しますっ!…さあ、まずは激戦を勝ち抜いた10名の超人達の登場だっ!』
スピーカーから合図が聞こえると、俺達選手の足元が上に向かって昇り始める。…そして、数秒後にはフィールドに出ていた。
『うぉーーーっ!』
『お次は、-ターゲット-の登場だっ!』
実況のアナウンスの直後、選手達と同じようにフィールドの下から複数の『サッカーゴール』が出現した。しかも、それらと共に『ゴールキーパー』も現れた。
『さあ、まずはルールの説明だっ!
今から選手の皆さんには、ゴールにボールをシュートして貰います。…ただし、-一度でも外してしまうと-その時点で脱落となるのでご注意をっ!
…え?キーパーが居るとはいえ動かないゴールに入れるのは簡単?…ハッハッハ。
-そんなヌルいゲームが、この大会にあるわけがないでしょうっ!』
実況がそう言うと、ゴールはゆっくりとフィールド外周を周り始めた。
『…ちなみに、これはあくまでも-レベル1-です。そして、二つ目は-一人の持ち時間は10秒だけ-。
-さあ、それでは-クイックシュート-を始めますっ!皆さん、宜しくお願いしますっ!』
『-5、4、3、2、1、GO!』
いつも通り観客がカウントダウンをした後、一人目がシュートする。…上手い。
ボールはキーパーを危なげなくすり抜け、ゴールに吸い込まれた。
『お見事っ!ファルム選手クリアッ!
さあ、続けてはセイランド選手の挑戦ですっ!』
すると、二人目の選手が前に進み出た。…そして、彼も素早くボールをシュートする。
『お見事、ファルム選手に続きセイランド選手クリアッ!
さあ、続いてはサクル選手の挑戦ですっ!-』
-その後、常連勢は続々とゴールを決めていきいよいよ俺の番になった。
『-さあ、一巡目のラストはやっぱりブライト選手に決めて貰いましょうっ!
ブライト選手、お願いしますっ!』
…はあ、完全に運だが都合良くアナウンスしてるな~。
そんなどうでも良い事を考えながら、軽くボールを蹴りゴールにぶち込んだ。
『ゴールッ!ブライト選手、危なげなくクリアッ!
…やはり、一巡目は当然の如く脱落者はナシだっ!それでは、続けて二巡目のスタートッ!』
『-ゴールアクションレベル2』
すると、実況とは別のアナウンスが流れゴールの動きに変化が現れた。…具体的にはほんの少し周回速度が上がった。
『それではファルム選手、お願いしますっ!』
そして、再び一人目からチャレンジが始まる。…おっ。
彼のシュートしたボールは、キーパーこそ抜けたがゴールポストに阻まれた…かに見えたがギリギリでゴールに入った。
『ゴールッ!…ファルム選手、ややギリギリでゴールしましたっ!
さあ、続けてはセイランド選手の二度目の挑戦ですっ!』
そして、再び二人の選手が前に出るが彼は少し緊張していた。…確か、彼はこの競技やや苦手だったな。
そんな事を考えている内に、彼は少ししてからボールをシュートする。…しかし-。
『-あーっとっ!?セイランド選手のボールはゴールポストに阻まれたっ!
セイランド選手、あえなく脱落っ!』
「……」
彼は悔しそうにしながら、潔くフィールドを後にした。
『さあ、やはりレベル2は相当の難易度のようですっ!果たして、何人が生き残るのかっ!?
-それでは、お次はランペルージ選手の二度目の挑戦ですっ!』
「……っ」
呼ばれた彼は、意を決して前に進み出た。…そして、前のセイランド選手のように少し待ってからボールをシュートする。
『-ゴールッ!ランペルージ選手、クリアッ!
さあ、それではお次はエルスマン選手二度目の挑戦です-』
-そして、再び常連勢と俺はゴールを決めて行き三巡目に突入する。
『-ゴールアクションレベル3』
するとまたもやゴールの挙動が変わった。…なんと、緩急を付け始めたのだ。これはなかなかにタイミングが読みづらい。
『さあ、それではファルム選手三度目の挑戦ですっ!』
アナウンスが流れ、ファルム選手が前に出る。…そして、持ち時間をギリギリまで使いシュートした。
『-ああっ!?ファルム選手のボールはゴールとゴールの間に入ってしまったっ!
ファルム選手、無念の脱落っ!
さあ、これで残りは後8人っ!一体誰が勝ち残るのかっ!
…それでは、ランペルージ選手三度目の挑戦ですっ!』
「……」
呼ばれた彼は瞼を開き、ゆっくりと前に進み出た。…そして、先程と違い少し早めにシュートした。
『-おっ!?…あーっ!惜しくもキーパーにブロックされてしまったっ!
ランペルージ選手、ここで脱落っ!』
「…はあ、ここまでか……」
彼は天井を見上げながら呟き、フィールドから出て行った。
『さあ、続いてはアームストロング選手三度目の挑戦です』
「…っ!良し…」
彼は頬を軽く叩き、前に進み出た。…そして、丁度5秒のタイミングでシュートする?
『-ゴールッ!エルスマン選手、まだまだ余裕だっ!
さあ、次はアンダーソン選手の三度目の挑戦だ-』
-そして、またもや常連勢は余裕で決めていき俺の番が回って来た。…さて、そろそろ『良く見ない』とな。
俺が前に進み出るのと同時に、モニターがカウントダウンを始める。…その間、俺は目に神経を集中しタイミングを見計らう。
-っ!今だっ!
そして、ギリギリでシュートを放つ。…ボールは地面スレスレを飛んで行きキーパーの股を通ってゴールに入った。
『ゴールッ!…てか、なんだ今のシュートはっ!?低空を飛びキーパーの股下の僅かな隙間をくぐり抜けたぞっ!?
相変わらず、ブライト選手は魅せつけてくれますっ!
…さあ、これで三巡目は終了となりいよいよ四巡目に入りますっ!』
『-ゴールアクションレベル4』
すると、周回していたゴールはゆっくりと止まって行く。…そして、次の瞬間ゴールの何個かはフィールドに収納され『不規則』な並びになり再び周回を始めた。
『さあ、それではエルスマン選手の四度目の挑戦ですっ!』
「……」
呼ばれた彼は前に進み出るが、その顔にははっきりと緊張が浮かんだ。…そして、少し早いタイミングでボールをシュートする。
『-あ~、残念っ!エルスマン選手のボールはゴールを捉えられなかったっ!
エルスマン選手、ここまでだっ!これで、残り6人だっ!
さあ、次はアンダーソン選手四度目の挑戦ですっ!』
呼ばれた彼は前に進み出て、じっと前を見る。そして、時間ギリギリで四度目もシュートを放った。
『-あっ!?あー、残念っ!惜しくもボールはゴールに入らなかったっ!
アンダーソン選手、ここで脱落っ!
さあ、次はマクミリアス選手の四度目の挑戦ですっ!』
「……」
すると、彼女は緊張した様子で前に進み出る。…いやしかし、今までの大会で女史以外で三回戦まで勝ち残る人は数えるほどしかいなかったが、まさか俺の初参加と被るとはな。
「っ!」
内心で感想を述べていると、彼女は繊細なコントロールのシュートを放った。
『-おぉっ!?…ゴールッ!
マクミリアス選手のボールは、ギリギリでゴールに入りましたっ!
さあ、次はノア選手の四度目の挑戦ですっ!』
「……ふう」
「……」
彼女は胸を撫で下ろし、奥に引っ込んだ。そして、入れ替わるように前に出た彼はこれまでと違い険しい表情だった。…そして、彼は素早く力強いシュートを放つ。
『-ああっ!?ノア選手のボールは、ゴールポストに嫌われてしまったかのように阻まれたっ!
ノア選手、ここまでだっ!
…さあ、これで残りは四人となりましたが当然これで終わりではありませんっ!何故なら、クルーガー選手マオ選手、そしてブライト選手の挑戦がまだ残っているからですっ!
さあ、三人は果たしてゴールを決める事が出来るのかっ!?』
『-ワァァ~っ!』
『それでは、次はクルーガー選手四度目の挑戦だっ!』
「……」
呼ばれた女史は、先程までと変わらない様子で前に進み出た。…そして、素早く見極めた後に美しいフォームでシュートを放つ。
『-ゴールッ!クルーガー選手、いとも容易く入れたっ!凄まじいテクニックだっ!
さあ、お次はマオ選手の四度目の挑戦ですっ!』
「…さて、行くか」
すると、床に座り精神統一をしていたマオ氏はゆっくりと立ち上がり前に進み出た。…そして、ラインに立って僅か数秒後にはシュートを
放っていた。
『-ゴールッ!相変わらず軌道が読めないっ!なんてスピードだっ!
…さあ、お待たせしましたっ!次はブライト選手の四度目の挑戦だっ!果たして、今度はどんなシュートを見せくれるのかっ!』
…さて、どうしようかな?
俺は前に出てタイミングを計る。…っ!そうだ、『せっかく』だから-。
一つのプランを導き出したので、素早く実行に移した。
『-ああっ!?……え、あ、ゴ、ゴールッ!…な、な、なんてトリッキーなプランだっ!ブライト選手、キーパーのブロックを利用しゴールに入れたっ!普通は思い付いてもやらないぞっ!?
…っ!なんと、此処で試合終了っ!まさかまさかの四人進出だっ!』
…ふう。
「「「……」」」
俺はほっとしながら、フィールドを後にするのだった。…当然、マオ氏とマクミリアス選手の唖然とクルーガー女史の『興奮』の眼差しを受けながら-。