「-瞬突」
しかし、その僅かな隙を狙い皿目掛けて高速の突きを放った。
「…っ」
直後、無理に皿を動かした結果玉も大きく動き皿から落下した。
『-あーっと!アレイスター選手、脱落っ!
これで残りは41人だっ!』
「…お見事ッス」
「どういたしまして」
『-うわっ!』
アレイスター選手はそれだけ言って、フィールドから離れた。…直後、別の方向から大勢の声が聞こえた。
『-っ!おっと、一方マオ選手は一気に5人を脱落させた模様っ!』
『-あひぃっ!』
『嘘ぉーっ!?』
続けて、悲鳴やら驚愕の声がフィールドに響いた。
『そして、負けじとばかりにクルーガー選手は巧みなテクニックで3人をっ!ジュール選手は冗談みたいな方法で6人を攻略っ!
これで、残りは一気に27人になってしまったっ!』
『-っ!』
…早っ。はあ、マジでどう攻略しよう。
『…おや?…っ!お三方は、ブライト選手の元に進軍したっ!まさか、此処で勝負を決める気なのかっ!』
『-っ!?』
…考える暇も与えて貰えないか。なら-。
俺は頭から手に皿を戻し、驚愕で動けない選手の中を小走りで通り抜けた。
「-っと」
直後、背後から『次々と嫌な音』が聞こえたので左手を身体の前にずらした。すると、直前まで左手があった場所にナイフが飛んできた。…危ない危ない。
そして、ナイフはそこでピタリと止まりまるで映像をリバースするかのように『持ち主』のところに戻って行った。
『-……え?』
『おっと!またもやクルーガー選手によって5人が脱落!いやはや、いつ見ても素晴らしいテクニックです。
さあ、これで残りは22人っ!』
『-っ!』
すると、常連勢は一斉に身体を盾にしゃがんだ。…まあ、確かに一番の安全策だが多分-。
「-ふんっ」
直後、予想通りジュール氏は特殊な形状のグローブで『フィールド』を叩く。なので、それに合わせてジャンプした。
『-っ!?』
数秒後、咄嗟にジャンプしなかった選手の皿から玉が落ちた。…要は『揺らして』落としたのだ。
『おぉっ!ジュール選手お得意の-ウェーブインパクト-がまたも火を吹いたっ!それにより逃げ遅れた6人が脱落っ!
さあ、残りはいよいよ後16人っ!果たして、この猛攻をくぐり抜ける選手はいるのかっ!』
…うわ、なんつうコンビネーションだよ。ホント、今まで良く『マンネリ』にならなかったな…あ、お次は-。
若干引いていると、視界からマオ氏が消えていた。なので、俺はバトンを下に向ける。
「-落雷」
そして、ほんの数秒早く着地した俺は身体を反転する。
「-良い判断だ」
「「「-……あ」」」
直後、背後から誉められたかと思ったら3人の選手が唖然としながら玉の落下を見届けた。
『-早いっ!早過ぎるっ!マオ選手、またもや高速のキックアーツで3人を-蹴落とした-っ!
さあ、泣いても笑っても残り僅かだっ!』
「「-さあ、行きますよ?」」
『-っ!』
そして、その間に距離を詰めていたクルーガー女史とジュール氏が『素敵な笑顔』を浮かべた後、素早く移動を開始する。…じゃあ、『俺』も行くとしますかっ!
『-っ!?ブライト選手、お二方に向かって行ったぞっ!何を考えているんだっ!』
「-良いですわっ!お相手をさせて頂きましょう!」
すると、女史は走りつつワイヤー付きナイフを回し数秒後には玉目掛けてナイフが飛んできた。
「-ここっ!」
『-っ!?』
しかし、当たる直前で俺はタイミングを見計らいナイフを掴んだ。当然、会場は驚愕する。
「-嘘…。…っ!」
直後、俺はそれを力の限り引っ張る。勿論、女史は咄嗟にワイヤーの根元を手放した。
「-…と」
「…っ!させませんよっ!」
根元もキャッチした俺は『大詰め』に入る。…が、『何か』を察したジュール氏は再び拳を地面に-。
「-貰いました」
俺は素早くバトンにワイヤーを巻き付け軽く縛り、高速で振り回した後にジュール氏に向かって投げた。
「「-っ!」」
まさかそんなタイミングで仕掛けて来るとおもわなかった二人は仰天する。直後、ジュール氏の玉は落ち同時に『ウェーブインパクト』が来るが俺は空中でそれを回避していた。
『-………っ!じ、ジュール選手脱落っ!』
実況が驚愕のコールを聞きながら、俺はバトンを素早く回収。そして、再び常連勢に向かって駆け出す。
「-本当に飽きない子だ」
すると、直後に『笑み』を浮かべたマオ氏がルート上に現れた。…やれやれ、とんだベテランだな。
俺は引きながらバトンとナイフを分離しナイフを空中に放り投げる。
「-っ!」
しかし、次の瞬間にはマオ氏は目と鼻の先まで迫っていた。…なので再び皿を空中に皿を-。
「-甘い」
マオ氏はそう言い、俺が投げるより早く跳躍した。…だから、俺は皿が肩の高さに上がったタイミングで腕を止める。
『-っ!ブライト選手、フェイントを入れたっ!?この局面で、絡め手を入れるとはなんて強靭な精神力だっ!』
「…っと」
俺は反動で上がった玉を皿でキャッチし、身を屈めてマオ氏を避けた。
「…っ」
「-っ!」
『-あっ!?先程ブライト選手が投げたナイフがマキシス選手の玉にヒットし脱落っ!なんてコントロールだっ!
いよいよ、決着の時だっ!』
「…なかなかやるな。だが、次は『上手く』はいかないぞ?」
直後、少し離れた場所に着地したマオ氏は再び俺に向かって来た。どうやら、投げるのもフェイントも潰すプランがあるのだろう。…しかし、俺はニヤリと笑い左手をやや下げた。
-直後、再び皿のあった位置をナイフが通過した。案の定、誰かが最大のチャンスだと思って投げたのだろう。そして、ナイフはそのままマオ氏の皿に向かって飛んで行く。…だが、マオ氏は易々と皿を守ったのでナイフは更に奥に飛んで行く。
「-そおりゃっ!」
そのタイミングで俺は反転し頭に皿を乗せ、両手で力いっぱいワイヤーを引っ張った。
「-うわっ!」
予想しないアクションに、投げた選手は対応出来ずにバランスを崩し玉を落とした。
『-決まった~っ!やはり、最後はブライト選手が決めた~っ!
-これにて、ゲームセットっ!』
直後、実況のアナウンスとブザーが流れ大歓声が会場を包んだ。
「…やれやれ、本当に素晴らしい子だ。まさか、『私との戦い』や奇襲さえも味方に付けるとは。
君との決着は次までに取っておくとしよう」
「…分かりました」
利用されたというのに、マオ氏は非常に満足しながらそう言いフィールドを後にした。
「-お見事でしたわ…」
次に、クルーガー女史に声を掛けられた。その表情にはやはりマオ氏同様に不満はなく、むしろ物凄く色気に満ち溢れていた。
「…あんなにも簡単に『受け止められる』とは、思ってもみませんでしたわ。それに、私では思い付かなかった『テクニック』や『刺激的な扱い』まで出来るなんて。
…これは、次のゲームには『オトされてしまいそう』ですわ」
うっとりした声でそう行ったクルーガー女史は、上機嫌でフィールドを離れた。…こりゃ、次は間違いなく直接対決になるな。
俺は腹を決めフィールドを後にする。そして、スタッフの案内の元控え室内に向かう途中ふと通信ツールが振動した。…スリーバイブか。
そのパターンで、『何処から来たのか』察し俺は意識を切り替えた-。
-…良し。
控え室に着いた直後、俺は念入りに『防諜確認』をしてコールをした。
『-っ!こちら、合同地上警備隊レーグニッツだ。…休憩中に済まない』
すると、レーグニッツ少佐が通信に出た。…その表情には申し訳なさと少しの『戸惑い』が見えた。
「(…少なくとも緊急の要件ではなさそうだ。)お構い無く。…それで、どうされましたか?」
『実はな-』
「-………はい?」
少佐の報告を聞いた俺は、思わず間抜けな声を出してしまった。…それぐらい、『信じられない』事を少佐は言ったのだ。
『…私も君と同じ気持ちだ。だが、これは間違いの無い-事実-だ』
「……とりあえず、私もそちらに行きます。あ、それとお三方にも意見を聞きたいのですがお連れしても宜しいでしょうか?」
『…勿論だ。むしろ、そうしてくれた方が助かる。…ならば、ランチはこちらで用意しておこう』
「ありがとうございます。…それでは、また後ほど」
『ああ』
…はあ、なんか面倒な事になったな。
俺はため息を吐きながら、ついさっき別れたばかりのお三方に連絡を入れるのだった-。