『-大変長らくお待たせ致しましたっ!いよいよ、本選二回戦の開始ですっ!』
『うわ~~っ!』
実況のアナウンスで、再び会場は熱気に包まれた。そして、同時に俺達選手は競技スペースに入場する。
『…さあ、二回戦のゲームはこれだっ!』
すると、モニターに競技名が表示された。…『今年』はこれか。
『…っ』
『-おっと、まさか今年はよりによって慎重さがモノを言う、-バランスムーヴ-だっ!』
実況がコメントすると、反対側の出入り口からカートを押した5人のスタッフが出てきた。…そして、その上には『丸い玉が乗った底の浅い鉄の小皿』が10個あった。
『さあ、選手の皆さんっ!お皿をお取り下さいっ!』
アナウンスに従い、全員がそれを利き手と反対の手に取った。そして、直ぐにフィールド中に散開していった。…さて、俺はどこに行こうかな?
『-さあ、選手の皆さんが場所決めをしている間に今回の-決め方-を発表しましょう。
果たして、-時間-か-人数-かっ!?』
すると、モニターにルーレットが表示され回転が始まる。…まあ、今回は『少し多いから』多分-。
『-おーっと!今回は人数だっ!つまり、次に進めるのは10人までだっ!』
予想通り、かなりシビアなサバイバルが始まるようだ。…うん、此処にしよう。
そうこうしている内に、適当な場所を見つけたので陣取る。
『…さあ、どうやら選手達のスタンバイも整ったようですっ!
おっと、その前に-たった一つ-のルールを説明致しましょう。…それは、-相手への直接攻撃禁止-ですっ!
それでは、カウントダウンをお願いしますっ!』
『-5、4、3、2、1、GO!』
直後、いつものように負荷が掛かるが同時に小皿の上の玉から『バリア』が発生した。すると、左腕に掛かる筈の負荷が消えた。…『重力軽減バリア』。『半世紀前』では超重要だったシステムも今ではエンタメの小道具か。ホント、面白い事になってるよな~。
「-…やれやれ、ホント初参加とは思えないッスね~?」
すると、アレイスターさんが呆れた様子で話し掛けて来た。…驚いた。離れた場所に居た筈なのにもう来たのか。流石精鋭は違うな~。
俺はワクワクしながら右手でバトンの中心を持ち『ソード』のように構えた。
「…良いッスよ。どのみち君とぶつかるのは避けられないんス。
…なら、今ここで『白黒』付けさて貰うッスッ!」
『おおっ!』
すると、彼と共に周囲にいた常連勢が一斉に襲い掛かって来た。…どうやら、協力して俺をリタイアさせる気のようだ。
『-あーっと!?アレイスター選手を筆頭に多くの常連勢がブライト選手に仕掛けたっ!ブライト選手早くも絶体絶命かっ!?』
実況はその内容とは真逆の興奮した様子コメントした。つまり、『また俺が盛り上げる事』を期待しているのだ。…まあ、実際俺も焦りよりも『感動』が勝っているのだが。
『-っ!?』
「-…ああ、ホント『宇宙に出て良かった』」
直後、彼らは『ぶつかり合わないよう』に急停止した。…そんな彼らの後ろから俺は心から沸き上がる気持ちを言葉に出した。
『-やはりブライト選手は魅せてくれましたっ!ブライト選手、素晴らしいスピードで包囲網を易々と突破しましたっ!』
「…害獣相手の時は、守る為に戦っていたから『感じる暇もなかった』けど。
-こんな『楽しい気持ち』になる戦いは、生まれて初めてだっ!
ああ、実に最高だ…-」
「「「-っ!?…っ」」」
俺はテンションのまま近くに居た三人の元につかつかと歩き出す。すると、三人は一瞬驚くが即座にこちらに向かって駆け出す。
「-おおっ!皆さん見事なバランス感覚ですねっ!…なら、俺は『もっと凄い』なバランス感覚をお見せ致しましょうっ!」
『………はい?』
『-な、な、な、な、な、なんとー!?ブライト選手皿を空中に放り投げたっ!』
「「「-っ!?」」」
「-余所見は良くないですよ?」
「「「しまっ…-」」」
「-突風」
選手のみならず、会場全体が皿に視線を向けるなか俺は素早く三人に近付きその手にある皿目掛けてバトンを横に振るった。
「「「っ!」」」
しかし、彼らは後ろに飛びギリギリ避けた。
『-うわっ!』
「…ほら、だから余所見は良くないと言ったでしょう」
直後、落下して来た自分の皿を空中でキャッチしその上に玉を収め揺らさないように足を曲げて着地し、『倒れ込んだ人達』にニッコリと告げた。…そう、三人は後ろを確認せずに飛び前方確認を疎かにしていた選手達にぶつかったのだ。
『-おぉーっ!?なななんと、一気に8人リタイアッ!ブライト選手が、またもややってくれましたっ!まさか、-相手を利用-するとは誰が思い付くでしょうかっ!?
さあ、これで残りは42人になりましたっ!』
『……』
そんなコメントの中、リタイアした選手達は呆然とこちらを見ながらフィールドから離れて行った。
「-…やってくれたッスね」
すると、アレイスターさんが常連勢をかき分けてやって来た。その表情には苦笑いが浮かんでいた。
「…確かに貴方達は『一人一人』は俺よりも凄い人達だ。
だが、『連携』に関しては申し訳ないが『素人並み』と評せざるを得ない」
『……』
「…『即席の連携』で勝てる程甘くはないって事ッスか……。…『集団相手』の経験も、害獣退治で培ったモノなんスね?」
「むしろ、単体で来るパターンは稀ですね。…後は、大会前に『集団戦の得意な友人の方々』にシゴいて貰ったお陰でしょう」
「…なるほど。『プロ』を相手に特訓してりぁ、俺達の連携なんで『子供の遊び』に見える訳ッスか。…ホント、君のお祖父さんって一体何者ッスか?」
「さあ?…何せ伴侶である祖母はおろか実の息子である父と嫁の母。更には親戚一同や市長、果ては国家元首の誰もが祖父の経歴を知らなかったんです。…ただ一つ分かっているのは、祖父もまた『夢追い人』である事だけです」
「…っ」
「だから俺は知りたい。祖父が何をしていて、何故『秘宝』を追い求めたのか。
…そして、きっと『友人の方々』が俺に色々と教えてくれたのは彼らも『それを知りたい』からである共に、俺が『たどり着けるように』してくれたんだと思います」
「…それが、君の『理由』って訳ッスね。…はあ、『次に繋げる為』の俺ら傭兵とは違ってとんでもなく『熱い』じゃないッスか。
…どうやら、まだ君の事を下に見ていたらしいッスね-」
『-……』
すると、彼や残りの常連勢は真剣な瞳でこちらを見た。…やっべ、本気を語ったら『本気』にしちゃった。
「まずは、俺から行くッスよっ!」
すると、彼は先陣を切って駆け出して来た。…まあ、下手な連携よりも単騎で攻める方が確実だろう。
しかし、俺はさほど慌てずに皿を『頭に乗せ』両手でバトンを持ち迎撃態勢に入る。
「…っ!なら-」
すると、彼は頭の皿目掛けてゴム製のナイフを放った。
「-っと」
しかし、俺は慎重かつ素早くしゃがみナイフを避ける。
「…っ!……っ」
彼はすかさずナイフを投げようとするが、直前で止まった。…そう、俺が立ったら『攻撃』と見なされるからだ。
「…来ないなら、こちらから行きます」
そして、一度足を止めてしまえばこちらから仕掛けられる。
つまり、俺は『身体を盾』にしながら相対しているのだ。…まあ、元々これは『財宝を横取りしようとする輩』相手に祖父ちゃんが編み出した『財宝を盾にする戦術』…そのまんまな名前の『トレジャーシールド』を応用した戦い方だ。
「-っ!」
そして、俺は難なくアレイスターさんに接近し手に持つ皿を攻撃する。しかし、当然だがそこでアレイスターさんは距離を取った。