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本選-激戦-

「-乱回」

『-っ!?』

 俺はバトンを頭上に掲げ高速回転させ、『激しい雨』から身を守った。一方、醜い争いをしていた『要注意組』は次々とフィールドに倒れて行く。

『アギャッ!?』

 中には、ショック系の武器が『ショート』した事で自滅や周りを巻き込んでの事故を引き起こした。…ロクな武器使ってないな。てか、ちゃんと下調べしてたら『耐水』のモノを買う選択は出てくるだろうに。

 …つまり、『連中自体』は『バックアップ』を受けていない可能性があるという事だ。

 そんな推測を立てていると、『雨』はゆっくりと止まった。

『-あーっと!ケースの奪い合いをしていた選手達は此処で一斉にリタイアだっ!

 そして、やはり残るはお三方を始めとする-超人-達だっ!』

「-……」

 そんなコメントが流れる中、先程迫っていた女傭兵を見るとそいつは苦悶の表情をしながらゆっくりとこちらに迫って来ていた。…まあ、『負荷』に加え『足に水が入って』いるんだ。相当の負担が掛かっている事だろう。


 一方、常連勢や俺はちゃんと履き口をはっ水勢の高いやや大きいズボンの裾で覆い、更に裾をバンドで固定する完璧な対策を施しているのであんな状態にはなる筈がない。…やっぱり、『バックアップ』は受けていないのだろうか?いや、それとも-。

「-っ!臨戦態勢にさえ、入らないとは…っ。とことん、ナメ腐った野郎ですねっ!」

 考え込んでいると、いつのまにかかなり接近していたそいつは下品な言葉を吐きながらムチを振るった。

「-螺旋」

 しかし、俺は慌てずバンドを前に突き出しつつその場で高速回転した。直後、ムチは呆気なく弾かれた。

「-あ~、手が滑った~」

「-っ!?」

 そして、すかさず丁度良いタイミングでバトンを手から離すと遠心力でそいつの元にぶっ飛んでいった。

「くっ!」

 そいつはムチを戻し、バトンに向けて振り回すが-。

「-あがっ!?」

 僅かに軌道を変えるのがやっとで、バトンはそいつに命中し後方に吹き飛ばした。…しかし-。


「-っ!」

 床に倒れたそいつは素早く起き上がり、再度こちらにムチを振るった。…ほう。今のを喰らって起き上がるとは。見た目に反して『鍛えて』いるようだ。

「…これで、終わりだぁ~っ!」

 冷静に分析していると、そいつは勝利を確信したのか雄叫びを上げた。

「-やれやれ、無礼ているのはどちらか…なっ!」

「-っ!?」

 俺はムチが当たる直前で駆け出し、数秒でそいつに接近する。

「-零撃」

 そして、超至近距離寸前で急停止し腹部目掛けて『ショックグローブ』による掌打を放った。

「…がっ!?」

 そいつは痺れながら後ろに吹き飛び、床に倒れんだ。…ふう、やっぱり装備しておいて正解だったな。

「…く、そ……-」

 そして、そいつは最後まで悪態をつきながら意識を手放した。


『-き、決まったーっ!ブライト選手、バトン技術のみならず素手の戦いも得意だったーっ!しかも、-ショックグローブ-まで準備していたっ!これは、とんでもない天才が現れたぞっ!

 -っ!そして、此処で更に負荷が増しますっ!』

 すると、身体に掛かる負担が更に増した。これは、なかなかに動きにくい。

「-っ!?」

 そんな事を考えながらスタッフに接近し、数回突いて転ばせ素早く回収した。…そして、周りを見るとスタッフは残り数人となっていた。

『-さあ、ターゲットの数も残り僅かとなって参りましたっ!…つまりこの先は、-ライバル-から回収するより他ありませんっ!

 それでは、ケースの-開封-並びに-クリアライン-を発表しましょう!』


 -っ。…良く出来てるな~。

『……』

 すると、残った常連勢は周囲を警戒しながら一旦動きを止め自分が回収したチップとスクリーンに表示された内容を見比べた。

『-ブロンズ:10枚。シルバー5:枚。ゴールド:3枚。プラチナ:クリア』

 …今手元にあるのは、ブロンズ2枚にシルバーとゴールドが1枚ずつか。

『さあ、果たして選手達はどんな調子なのでしょうかっ!?

 -それでは、-オープン-』

『…っ!』

 すると、今度は現状『クリア』に近い選手が表示された。…まあ、当然そこに俺も映る訳で……。

『あーっと!やはり、ブライト選手は凄いっ!

 なんと、ゴールドを1枚を持っているぞーっ!』

『……』

 すると、案の定常連勢は一斉に俺を見た。…はあ、大変だ。


『…しかし、やはり今回も-プラチナ-獲得者は出ていないようです。つまり、まだ-即勝ち抜け-のチャンスは残っていますっ!

 さあ、それでは-後半戦-のスタートですっ!』

 実況がアナウンスすると、複数人の常連がこちらに迫って来た。…良し、『逃げよう』。

 流石に彼ら相手だと分が悪いので、チップを上着のポケットに戻し即座に逃走を始める。

『おーっと、ブライト選手すかさず逃げを選択!やはり、流石の彼でも-超人達-を相手には出来ないようだっ!』

 …俺が勝てるプランは只一つ。『プラチナ』を回収する事だ。しかし、追っ手から逃げながらは流石に無理だ。

 -ならば、取るべき手は一つ。

 俺は急停止しチップの入っているポケットを一つ『外し』、上に投げる。

『-っ!?』

「瞬突天返」

 そして、上に向かって対空迎撃用の攻撃を放った。当然、ポケットは明後日の方向に飛んで行く。


『-な、な、な、な、なんとっ!?ブライト選手、回収したチップを放棄したっ!…まさか、まさかまさかまさかまさかっ!-プラチナ-狙いかっ!?』

 そして、残り3つのポケットもそれぞれ違う方向に飛ばした時実況を通じて俺のプランは全員に伝わった。

『-っ!』

 直後、残っていたスタッフの一人が何者かに倒される。…まあ、多分マオ氏だろう。

「「ぎゃっ!?」」

 そして、続けて二人のスタッフがジュール氏とクルーガー女史に倒された。間違いなく、お三方は『プラチナ狙い』だ。…しかし、流石のお三方でも特定は難しいようだ。その証拠に、彼らは回収したケースの『中身』を確認していないのだから。まあ、残っているのはプラチナを除くと『ブロンズ』だけなのだから当然だろう。


『おーっと、お三方は中身を見ないっ!何故なら、-経験上-プラチナ-ではないとわかっているからだ。

 そして、ここで更に-増加-っ!』

『-っ!?』

 …後半戦になってから、ペースが上がったな。となると-。

『-アーンドッ!』

『スプラッシュスコールッ!』

 実況の振りに、観客達はノリノリでコールした。直後、再び激しい『雨』がフィールドに降り注ぐ。

乱回…さあ、『来るかな』?

 全員の足が鈍るこのタイミングで、俺はゆっくりと考え始める。…『初回』から『前回』までのを数回見たが、ホントに『上手い』としか言えない。だって、『入れ替わり』が起きていたのだから-。


『-さあ、そろそろ雨が上がりますっ!』

 そして、アナウンスが流れると共にフィールドを素早く見渡した。…っ!『そう来たか』っ!

 俺はニヤリと笑いながら、『雨』が上がる直前で回転を止め駆け出した。

『あーっと!ブライト選手、堪らず駆け出したっ!……え?』

 実況は突如唖然とした声を出す。何故なら、お三方も駆け出していたからだ。…間違いない。『俺が見つけた』と確信している。

『-っ!?これは、まさかの直接対決かっ!』

 …いやしかし、良くこの状況の中を普通に動けるよな~。ホント、宇宙は広いぜ…。…しかし-。

『-っ!?ブライト選手、ルートを変更っ!-選手達-の元へと向かって行ったっ!?…まさか、プラチナチップ狙いではないのかっ!?』

「「「-っ!?」」」

 お三方は驚愕し、ほんの一瞬戸惑いが生まれた。

『-っ!』

 そして、当然だが常連勢も迎撃態勢になるがその中で『二人』程違う行動を取る者が居た。


「-っ!」

 一人は、『驚愕』の様子でこちらを見て固まる『ベテラン風』の男性。

「……っ」

 そしてもう一人は、『真意』に気付きその男性に駆け出す銀の髪の傭兵…すなわちイアンさんだ。…うわ、なかなかの『運』だな。『レアターゲット』の近くに居るなんて。

「-ぜやっ!」

 驚いていると、前列の傭兵の一人が襲い掛かかって来た。

「-とおりゃっ!」

「-っ!?」

 俺は直前でジャンプしその頭上を通過する。そして、着地と同時に再度駆け出す。

『……っ』

 それを見た事で、後ろの常連勢にもお三方同様に戸惑いが生まれる。その隙に、俺はどんどん距離を詰めた。

「-っ!」

 すると、イアンさんは咄嗟に片方のショックグローブを外しレアターゲットに向かって投げた。


「-甘いですよ。『この距離』ならば、『余裕で』間に合います…よっ!」

『-っ!?ブライト選手、更に加速っ!彼に、限界と言う言葉はないのかっ!?』

 実況の言うように、俺は素早くグローブとターゲットの間に割り込み『余裕』ではたき落とした。

 そして、その際の回転を利用しバトンをターゲットに投げて転ばせる。

「…っ」

 彼はそれでも諦めずに駆け出すが、当然俺のほうが早く到着した。…っ!

『-………な、なんという事でしょうか。ぶ、ぶ、ぶ、ブライト選手……、-プラチナチップ-……か、獲得だーーーーっ!』

『うぉぉーーーっ!?』

 そして、確信の元にケースを開きそのまま天に掲げると実況は仰天しながらコメントし直後会場は興奮のるつぼに落ちたのだった-。


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