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本選-狩猟-

-大会二日目。俺は自分の控え室で『準備』を整えていた。…良し。

 俺は『今日の為』に用意した『衣装』を身に纏いロングバトンを構えた。

「…ふっ!…せいっ!…はっ!」

 そして、三回程突きを放ってみる。…うん、良い感じだ。

 専用衣装は、身体の動きを阻害しない伸縮性に長けた物を使用しているのでいつも通り動けた。

『-ブライト選手。お時間です』

「はいっ!」

 すると、大会スタッフの人が呼びに来てくれたので返事と共にバトンを背中に戻し部屋を出た。

「-っ!」

 そして、スタッフの案内の元会場に向かっていると『イアン』さんと会った。

「おはようございます。イアンさん」

「……おはよう、オリバー」

 挨拶すると、彼は少し間を置いた後返事をした。多分、『切り替え』ている事に驚いているのだろう。


「……。……それも、『故郷』の製品?」

 そして、しばらく驚いていた彼はふと俺の衣装に注目した。

「ええ。…いやはや、昨日に引き続き『まさか』ですよ」

「…うらやましい。こっちは毎回新調しているのに」

「まあ、品質もさる事ながら道具一つ一つをとても大事にしますからね。余程の事がない限り、大体4~5年は持ちます」

「…それ、他の製品でも出来る?」

「…モノによりますが、『そういうのも』教わっているんで多分大丈夫だと思います」

「…助かる」

「「……」」

 気付けば世間話をしている俺達に、案内のスタッフは唖然としていた。

「…何か?」

「…いや、お二人共随分『リラックス』されているので……」

「…というか、お二人はお知り合いなのですか?」


「まあ、『共通の知り合い』が居るのは確かですね。…それと-」

「-…『リラックス』なんてしていないよ?」

『-っ!』

 いつしか裏手に来ていた俺達は、他の常連勢に真剣な眼差しで見られた瞬間武者震いをした。まあ、さっきの会話はお互いなんとか冷静を保つ為にやっていたのだ。…流石に、この状況で『落ち着いて』いられないからな。

「「…それでは、しばしお待ち下さい」」

「ありがとうございました」

「…どうも」

『-それでは、予選を勝ち抜いた選手達の入場だっ!』

「-皆様、ゆっくりお進み下さい」

 それからさほど時を置かずして、俺とイアンさんを含めた選手達は悠々と競技スペースに入って行った。


 ◯


『-さあ、いよいよ本選一回戦-インフィニティロード-の始まりだっ!

 ルールは三つ!

 一つ、段々と負荷が増えるフィールドに立っている事!

 二つ、ターゲットの誰かが持っている-トレジャーチップ-を種類に応じた数回収する事!

 三つ、当然ライバルから奪うのもアリ!

 アーユー、レディ~っ!?』

『イエーイッ!』

 実況のアナウンスに、選手達は勿論観客席からも返事が来た。…ついに、『マジの戦い』が始まるんだ。

 俺は心が昂るのを感じながら、バトンを構えた。

『-それでは、またもや皆様ご一緒に!』

『5、4、3、2、1、GO!』

 直後、フィールド全体に軽い負荷が掛かると共に『ポイントターゲット』…大勢のスタッフ達が姿を現した。…要は、彼らが『トレジャーチップ』を持っているのだ。

『-でやっ!』

『ガハッ!?』

 開始直後、お三方を筆頭に常連勢は次々とスタッフを倒しチップケースを奪って行った。…さて、俺も行きますか。


『-早いっ!やはり常連達は魅せてくれますっ!』

 倒されたスタッフ達が救護ドローンによって運ばれて行くのを横目に見ながら、俺は素早く近くに居たスタッフに攻撃を仕掛けた。

「-ガッ!?」

 身軽な印象をさたスタッフは即座に回避しようとするが、あっという間に距離を詰め胴体に数回打ち込むと彼は態勢を崩した。なので、更に接近し首にかけられた『チップケース』を奪い取る。

「…っ」

 すると、彼は驚きつつ速やかにフィールドを離れた。…まあ、何も『倒す』必要はない訳だ。だって『回収』すれば良いのだから。

『……』

『-おーっと、ブライト選手!なんとターゲットを倒さずにケースを回収したぞっ!なんて素早い動きだっ!』

 すると、やはりフィールドの選手達や実況は俺の行動に驚きを現す。…やれやれ、『スマート』にやるのも楽じゃないな。

 俺は気を取り直し、スピードを上げて少し離れたスタッフに背後から接近した。


『ブライト選手、次のターゲットに接近!果たして-』

「-悪いけど、それは私の獲物よっ!」

 すると、左方向からケバい化粧にツンと鼻に付く香水を漂わせる『要注意組』の女傭兵が狂気的な笑みを浮かべながら迫って来ていた。…ふむ-。

「-っ!あははっ!昨日とは違って随分あっさりと…っ!?」

 直後、俺が足を止めたのでそいつは昨日みたく馬鹿にしたような下品な笑いを浮かべた。しかし、直後俺がスタッフの足に向かっバトンを投げた事で直ぐさま驚愕に変わる。

「っ!」

 しかし、当たる直前でスタッフはジャンプしてしまいバトンが当たる事はなかった。しかし-。

「-あだっ!?」

 その先にいたスタッフの足に絡まるようにヒットし、彼はバランスを崩した。

「「-っ!」」

 二人が驚くのを尻目に、俺は前を走るスタッフを追い抜き倒れたスタッフから素早くケースを回収する。そして、気を取り直したそいつの方向を向きそれを頭上に放り投げた。


「-瞬突」

 そして、丁度良い高さに落ちて来たタイミングでケースを目にも留まらぬ速さで突いた。当然、ケースは高速でそいつまで飛んで行く。

「-っ!?」

『おーっと!?ブライト選手、ケースを回収せずクロイス選手に向かって飛ばしたっ!?一体、何を-』

『-っ!』

 すると、実況の言葉を聞いた『要注意組』が一斉にそいつの元に向かった。…うわー、効果抜群だな。

『-な、なんとっ!ケースに他の選手達が群がって来たっ!ブライト選手は、これを狙っていたのかっ!?

 …おっと、此処で-負荷-が増えるぞっ!』

 実況はコメントをした後、『丁度良く』アナウンスを流した。

 直後、負荷によってケースは失速しやがてそいつのやや後ろに落下した。


『-寄越せーーーっ!』

「…やってくれましたねっ!」

 そして次の瞬間、『同類』が集まって来たのでそいつは憤怒の形相で俺を見た後素早くムチを振り回した。…なので、俺は悠々と『そいつのターゲット』に再度接近し易々とケースを回収した。

『-イギャっ!』

『バベっ!』

『-おらっ!』

 一方、落ちたケースを回収しようとした何人かはそいつのムチで倒されるが、大きな武器を持つ者はなんとそれを力いっぱい投げ飛ばした。

「っ!?」

『貰ったー』

 当然、そいつはその場所から離れた。すると、武器を投げた連中が駆け出す。

『-馬鹿がっ!』

 しかし、武器を失ったそいつらの背後から別の集団が襲い掛かった。…いやホント、ズル賢い奴らだな。


「-……っ!……っ!?」

 すると、そいつは悪態を付いた後『諦める』選択をした。そして、そいつはようやく『俺がかなり離れている』事に気付いた。…ちなみに、俺は醜い争いを視界の端に捉えながらプラス3個回収している。…いや~、怖いくらい上手くいったな~。

 そう、何も『同士討ち』させるだけが目的じゃなく一ヶ所で争いを起こさせる事でスタッフの行動に、『制限』を掛けたのだ。そうする事でルートを予測し易くなれば良いと思っていたが、此処まで上手く行くとは思わなかった。

「……っ!」

 すると、そいつは再び憤怒の形相でこちらに迫って来た。…まあ、当然潰しに来るか。だが-。

『-さあ、そろそろ-恒例のアレ-が始まる時間ですっ!』

 直後、実況が興奮しながらアナウンスを流した。そして、天井の一部が開き巨大な『ノズル』が大量に姿を現した。

『観客の皆々様、ご唱和下さい!

 せーのっ!』

『スプラッシュスコール!』

 実況の合図で、観客達がコールをした次の瞬間。フィールド目掛けて大量の『水』が降り注いだ。


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