目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
予選-驚愕-

-それから一時間後に予選は終了し、昼休憩を挟んだ後に俺達選手達は再び会場に集まった。そして、直前に行われた『抽選』により俺は競技スペースに出現した10個のリングの一つに立っていた。

『-……』

 当然、一人ではなく『大勢』の常連勢と一緒なのだが彼らはこちらに意識を向けていた。どうやら、かなりの注目を集めているようだ。

『-さあ、いよいよ予選第二試合-パワーサークルが-始まりますっ!

 ルールは単純。これからランダムでリング上に光の輪が出現します。そして、10カウント以内にその中に向かいカウント終了まで中に居ればオーケーですっ!

 それでは、-スタンバイ-ッ!』

 実況の合図で会場のモニターに『5』と表情された。

『さあ、皆様もご一緒にカウントダウンを!』


『-5、4、3、2、1、GO!』

 観客達は割ればかりの大声でカウントダウンをした。すると、直後にリングの中心に大きな光の輪が出現した。

『おぉーっ!』

 次の瞬間、負荷環境をものともせずに選手達は俺の居る中心に向かって来た。…うわ~。

『-10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、そこまでっ!』

 引きながらそれを見ていると、カウントが始まりブザーが鳴った。

『おおっと、流石に一回目では脱落者は居ないようですっ!

 それでは、どんどん行きましょう!』

 すると、今度は『3時』の方向に一回目より僅かに小さい輪が出現した。なので、俺は反対方向に向かって走り出し少し遠回りをしてそこに向かった。

『-そこまでっ!

 おや、どうやら3、5、7のリングで脱落者が発生した模様っ!出遅れてしまったのかっ!?

 …それでは、脱落者の方はリングより降りて下さいませ』

『……』

 脱落者が降りて行くのを輪の外周近くで見ていると、再び俺に視線が集まった。

『-それでは、どんどん行きますっ!』

 すると、対角線上にまた少し縮小したポイントが出現した。なので、今度はまっすぐそちらに向かった。


『-そこまでっ!

 おぉーっと、奇数リングでは脱落者が続出っ!偶数リングではついに脱落者が出てしまったっ!

 …さあ、これで残りは400を切りましたっ!此処からは一気に範囲が狭くなるのでご注意をっ!』

 脱落者がリングから降りている内に、実況は中間報告と『レベルアップ』を伝えた。

『-さあ、第4フェイズスタートですっ!』

 直後、『12時』の方向に予告通り急に規模が小さくなったポイントが出現した。…そろそろかな?

 俺は『予想』を立てつつ駆け出し、早めにポイントの外周付近に到着しバトンを構えた。

「-甘いですよ」

 次の瞬間、俺はバトンを後ろに回し攻撃を防ぐと同時に蹴りを放つ。

「…っ!」

 そして瞬時に振り返ると、二重で驚いた『要注意組』の男性傭兵が居た。ふう、やっぱり『狙って』来たか。


「…ちぃっ!」

 そいつは舌打ちした後、直ぐさま人混みに消えた。

『-そこまでっ!

 っ!な、なんと、全てのリングで脱落者が出ましたっ!そして、一気に300が見えて来てしまいましたっ!』

 …っ。どうやら、他には『居ない』ようだな。

 脱落者を見るが、担架で運ばれた人はいないようだった。まあ、今残っているのは気配感知や危険感知に長けた人達しかいないから当然だが。

『-さあ、いよいよ二回戦も佳境を迎えましたっ!

 それでは、第5フェイズスタートですっ!』

「-だから無駄だと言ってるでしょう」

 直後、更に小さくなったポイントが出現するのと同時に俺は瞬時に反転し正面から攻撃を防いだ。


「っ!?」

「(…仕方ない。)十衝」

 この先も狙われそうなので、さっさと倒す事にした。

「-ガベッ!?」

 直後、そいつはリング端まで吹き飛ばされた。…良し、行こう。

 気絶した事を確認した俺は、素早くポイントに駆け出した。

『-そこまでっ!……へ?』

 ギリギリでたどり着いた直後にブザーとコールが聞こえるが、直ぐに実況が唖然とした。

『な、な、な、なんとっ!第8リング、一足先に終了だ~っ!』

『-っ!?』

 衝撃の宣言に会場はどよめく。すると、モニターに数秒前の映像が映し出された。

『こ、これは、なんて事だっ!

 ブライト選手は倍の体格を持つクルーゼ選手を吹き飛ばしているっ!これによりちょうど8人減ったようですっ!』

『……』

 完全に偶然だが、実況はまるで『狙ったかの』ようなアナウンスをした。そのせいで、会場中の視線が俺に注がれた。…やべ、ちょっとやり過ぎたかな?…これは、『お小言』を貰ってしまうかも……。

 俺は、目立ち過ぎた事に若干の『不安』を覚えたのだった-。



 ○



『-予選通過おめでとう…と、本来ならば賞賛したい所だが、少々-やり過ぎた-ようだな?』

「…返す言葉もありません」

 数時間後。案の定『上司』である閣下にお小言を貰っていた。

『…これで君は、表でも-連中-に認知される事になってしまった。…どうするつもりかね?』

「…いえ、特に変更すべき点はありません。

 -むしろ、敵の行動を予想しやすくなりました」

『…そうか。ならば、私もこれ以上は控えておくとしよう』

 俺の返答に、閣下はすんなりと『圧』を解いた。…ふう、助かった。

『それでは、今日の通信は此処までとしておこう。

 -あまり、-レディ-を待たせるのも良くないだろうから』

 すると、閣下は真剣な表情でそう言った。

「…やはり、閣下は二人の事をご存じだったのですね」


『ああ。…しかし、いくらアドバンテージがあるとはいえ君の正体に自力でたどり着くとはな。末恐ろしい孫達だ』

「…ですね。

 -でも、正直言うと『それで良かった』と思えるんです。…まだ会ったばかりなのに不思議ですよ」

『……。…そうだ、大事な事を伝え忘れていた』

「……?」

『…もし、あの二人の事をクルーにしたいと思った時は私の-許可-を得る必要はない。

 その代わり、決して-不幸-にはするな』

 閣下は真剣な眼差しで俺に告げた。…もしかしたら、閣下は『特別な事情』もご存知なのかも知れないな。

 察した俺はその場では聞かず、強く頷く。

「…肝に銘じておきます」

『宜しい。では-』

 そこで通信は切れたので、俺は身支度を整えラウンジに向かった-。



 -それから数十分後。俺はガイドの人の運転する車で二人の宿泊するホテル『トワイライト』の地下駐車場に来ていた。…まあ、要は『マスコミ』対策だ。いやー、ホント『VIP待遇』じゃなかったら今頃もみくちゃになっていただろう。

 そして、エレベーターの前に着くとそこには二人が居た。

「-すみません、お待たせしてしまって」

「…人気者だからしょうがない」

「ですね。…というか、謝るのはむしろこっちです。大会で疲れているのに、お呼び立てしてしまってすみません」

「…あ、そんなに疲れていないですからお気になさらず」

「…要らない気遣いでしたね」

「…僕なんて、ようやく回復したのに……」

 謝るアイーシャさんに元気アピールしたら、案の定二人に引かれた。


「…っと。じゃあ、『会長が用意して下さった部屋』に行くとしましょう」

 そんな話しをしていると、ちょうどエレベーターが来た。すると、アイーシャさんはエレベーターに乗り込み『ファロークスのエンブレム』が刻印された銀のカードをコンソール下のスロットに差し込む。

 直後、エレベーター内部に電子メロディーが流れ電光板に『EXTRA』と表示された。…あ、やっぱり『大事な話』をするつもりなんだな。

 そして、ものの数分でエレベーターは止まりドアが開く。…そこは、一見すると普通のホテルの廊下だった。だが、直ぐに違うと気付いた。

 何故なら、そのフロアにはドアが一つしかないのだ。つまり、このフロアは-。

「-…念のため言っておきますが、いつも格安ホテルに泊まっていますからね?

 ですが、今回会長のみならず宰相閣下やクルーガー女史に強く勧められたのでこの『エグゼクティブフロア』に宿泊する事にしたんです」

 やや仰天しながらアイーシャさんを見ると、彼女は気まずくそうに弁明した。

「…凄く気疲れしたけど、その理由がようやく分かった。

 -『私達を守る』為だったんだ」


「…クルーガー女史も『知っていた』んですね。いや、『同性』だった事を考えたら当然なのでしょう」

「…っ。…やっぱり、『本題』に気付いたんだね?」

「…まあ、『秘密を知ったのだからそれに見合う何かしらのモノ』は差し出してくるとは思っていました」

「…敵いませね。

 それでは、どうぞ」

 イアンさんの問いに答えると、アイーシャさんは苦笑いしながらドアを開けた。…おわ。

 中に入ると、落ち着いた雰囲気の広いリビングが視界に飛び込んで来た。

「…それでは、少しこちらで待っていて下さい」

 すると、アイーシャさんは近くのソファーを指し示した。…どうやら、何かしらの『準備』がいるようだ。

「分かりました」

 言われた通り座ると、二人はお辞儀をして寝室に向かった。


コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?