「……」
当然、彼も鼻を抑えつつ顔をしかめた。…もしかすると、『この匂い』が駄目なのかもな。
『-侵入者確認。攻撃ヲ再開シマス』
「-っ!?」
直後、ガードロボットは新たな侵入者に向けて攻撃を開始するが彼女はなんとか反対側の壁に避難した。
「(…まあ、むしろ当たってくれなくて良かったと思おう。)じゃあ、まずは俺が『誘導』します」
「お願いします。それでは私は『伝達』を引き受けましょう」
「ありがとうございます。
では-」
俺は壁の左側から飛び出し、ガードロボットに接近する。
『捕獲シマス』
当然、ガードロボットはショックネットを繰り出すが俺は直後前に飛んだ。
『-侵入者ノ接近ヲ確認。-セカンドフェイズ-ニ移行シマス』
…まあ、そうだよな。
至近距離に近いたのは良いが、ガードロボットはそのデカい図体から最早お馴染みのマジックハンドを出現させた。…さて、逃げ-。
「-アハハッ!残念だったわねぇ~っ!」
直後、甲高く下品な笑い声が聞こえた。…良し、ちょうど良いから『このまま』行こう。
若干イラッとしたので、『ターゲット』を即決しそちらに向かった。
「…っ!?来るんじゃないわよっ!」
当然だが、彼女は『ムチ』を取り出し振るう。…止まって見えるな。
しかし、俺は軌道を見てから余裕でジャンプ回避し再び彼女に迫った。
「…っ!このぉっ!」
彼女は苛立ちながら何度もムチを振るってくるが、その都度余裕で回避する。
「…っ!ホントに、『何者』なのっ!…クソッ!」
その際、彼女はポツリと気になる『ワード』を呟きその後悪態を付きながら退避を選択した。…ほお、『そういう頭』も回るのか。
少々驚きつつ、彼女の行き先を確認すると-。
「-っ!?来るんじゃねぇよ『行き遅れ』っ!」
予定通り、『厄介同士』が出会った。…しかも、そいつは怒りにまかせて『禁句』を解き放った。……っ!?
次の瞬間、重力負荷とは別系統の凄まじい『圧』が目の前から伝わって来た。
「-…ツブス」
「……っ!」
彼女は怒りのあまりカタコトになり、先程とは比べモノにならない速度と正確さで『不届き者』を攻撃し始めた。…ホント、恐ろしいな~。
「-今ですっ!」
「了解ッス!」
冷や汗を流しつつ『サイン』を送ると、ジュール氏と若い男性傭兵が壁から飛び出しガードロボットに接近した。…おぉ~、金茶髪のあの人なかなかの速さだ。
『第2、第3侵入者確認』
すると、ガードロボットは半分の量のマジックハンドを二人に割いた。しかし、それらは二人を捕らえる事は叶わず容易に本体まで距離を詰められた。
そして、先にたどり着いたジュール氏は突如カードロボットに背を向けた。
「行くッス!」
直後、金茶髪の人はスピードを上げ彼に向かって突進する。
「-せいやっ!」
すると、ジュール氏は身を屈めタイミング良く金茶髪の人を上空に投げ飛ばした。…おぉ~。
飛ばされた彼は綺麗にカードロボットの頭上に降り立ち『停止スイッチ』を押した。
「-グハッ!」
…おっと、ゆっくりはしていられないな。
直後、『同士討ち』が終わってしまったので一息つく間もなく俺は一目散に次の階への繋がる階段に向かった。
「-なかなか良い足ッスね?…あ、自分はマルコ=アレイスターと言う者ッス」
その道中、俺は金茶髪の人に声を掛けられた。
「どういたしまして。私は、オリバー=ブライトと申します」
「オリバー君スね。…あれ、ひょっとして初参加ッスか?」
「(…ライバルを顔を記憶しているのか?)ええ」
「…ほぇ~、とんでもないルーキーが現れたッスね……。……っと」
ぽかんとする彼だが、階段に差し掛かると会話を止めて俺が入ろうとしていたドアの隣に向かった。
「-それじゃ、『本選』で会えるのを楽しみにしているッス!」
それだけ言った彼は隣の階段に入った。すると、ドアは閉じ分厚いシャッターが降りて来た。
「-私も、楽しみにしている」
ジュール氏も、真剣な表情で告げて階段を昇って行った。…楽しくなって来たねぇ。
気付けば俺はワクワクしながら階段を昇るのだった-。
-そして、いよいよ俺は予選最後の関門がある
地下一階にたどり着いた。…ほう。最後は『これ』か~。
フロアに入った瞬間、俺はニヤリとした。理由は、床に散らばる色とりどりの大量のカードだ。
そう、つまり最後の関門は『宝探し』という事だ。…とりあえず、出口を見てみよう。
カードを避けながら反対側に進み、出口となる閉ざされたドアをじっくりと見る。しかし、ドアは下で見て来た物と全く同じで『ヒント』となるモノはなかった。
なので、次にドアの周囲を確認していく。……っ!ビンゴッ。
すると、ドアの右側のタイルの一つに小さな『青い☆マーク』を発見した。…青、青、青、……っ、あれだな。
俺はフロアを見渡し『青いカード群』を探す。すると、フロア入り口付近にそれを見つけた。
-…っ、あった。
再びカードの中を通り抜け、そこにたどり着いく。そして、その中から『☆マーク』の描かれたカードを発見した。…その裏を見て再び俺はニヤリとしてしまう。
-『ファロークス運送の旗は?』
そこに書いてあったのは、『一般常識問題』だった。なので、再びフロアを見渡し対角線上にある『紫のカード群』の所に向かった。
そして、その中から『二本の角』が描かれたカードを取った。…お、『レベル』が上がった。
次に書いてあったのは、少々難易度が高い『選択問題』だった。…しかし-。
-…えっと、『ホワイトメル』より『イエロトルボ』が先でその前が『ブルオウタウ』。…つまり『帝国に一番近い星系の中で-銀河連盟-に一番遅く加入した星系』は我が故郷『グリンピア』だ。
俺はあっさりと解き明かし、フロア中央の『緑のカード群』の元に向かった。そして、その中から農耕に使う『クワ』の描かれたカードを取った。…ほう、これはなかなか。
その内容を見た俺は、今まで集めた三枚のカードがそれぞれ置かれていた場所に向かう。
まず、青い☆マークのカードがあった所に向かい『その下』と天井のライトの間にカードを挟む。すると、電子音がした直後そこにカード差し込み口が出現した。…手が凝ってるな~。
ワクワクしながらそこにカードを差し込むと、ドアから解錠音が聞こえた。
なので、俺は同じ要領で紫と緑のカードを所定の場所に差し込んで行った。…すると、鋼鉄のドアはゆっくりと開いて行きゴールへ至る階段が姿を現したのだった-。
『-来たァ~っ!最強のルーキー、オリバー=ブライト選手だァ~っ!』
階段を昇り切り短い通路を抜けると、ゴール地点である会場にたどり着く。すると、実況が興奮しながら俺の到着を告げた。
『……っ!』
『…っ、……っ!』
観客席も余程予想外だったのか、ざわざわとしていた。…良いね~。
俺は気分良く小走りしながら中央に出現したステージに上がり、『ゴールスイッチ』を押した。
『ゴールッ!12番目のチケットは、最強のルーキーことブライト選手が獲得しましたっ!』
「-こちらにどうぞ」
すると、脇に控えていたスタッフの内の一人が近付いて来て誘導を始めてくれた。そして、俺は再び会場の上にある『ラウンジ』に通された。
「-っ!来たか…」
「お疲れ様です、オリバーさん」
そこには、ソファーでゆっくりと寛ぐマオ氏とジュール氏と-。
「-……」
うっとりとしながらこちらに近付くクルーガー女史がいた。…そして、至近距離まで迫った女史はそっと俺の両肩に手を置いた。
「…眩い輝きのような『技能』を見せて頂まして、本当に『ありがとうございます』」
彼女は感謝の言葉と共に深く頭を下げた。…あ、そういえば女史は『そういうモノ』を見るのが堪らなく好きなんだったな。
「…全く、驚きだ。その年で此処までやるとは。
-久しぶりに、楽しめそうだ」
マオ氏は立ち上がり、ニヤリとしながらこちらを見た。
「ええ。…さて、オリバーさんは何を飲みますか?」
ジュール氏もニヤリとしながら頷き、直後に普通の表情に変えてタブレットを差し出して来た。…はあ、これはなかなかに大変そうだ。
そして、俺も笑顔で受け取り注文するのだった-。