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予選-共闘-

『-っ!』

 …お、どうやら他の参加者も『クリア条件』を満たしつつあるようだな。

 近くで聞こえる『決着』の音を聞きながら、俺は迷わず出口に向かう。

『……っ!……っ』

 ……?なんだ……?

 しかし、次に聞こえて来た音はなにやら『不穏』な予感を抱かせた。なので、一旦足を止めて静かに歩く。

「-大人しく渡せば良いモノを…。だったら、遠慮なく『潰して』やるよっ!」

「…っ!」

 すると、怒気を纏った声が近くから聞こえて来た。…そして、相対している人物の身構える声を聞いた途端俺は咄嗟にバトンを投げた。

「…っ!?誰だっ!…いぎゃっ!?」

 バトンは回転しながらはそいつの手にクリーンヒットし武器を落とさせた。当然、そいつは振り返りこちらに迫ってくるがその隙を見事に利用され『ショックグローブ』によって気絶させられた。


「…油断大敵だよ」

「…やれやれ、案の定『ハイエナ』が出て来たか」

 俺はバトンを回収しつつ、ため息を吐いた。

「…やっぱり、君だったんだね」

「(……ほう)やあ、イアンさん。…お、ゴーグルはゲットしたんですね」

 すると、彼から声を掛けられたのだが纏う雰囲気は初日とは別人のようだった。

「…うん。君の方はそろそろ全部揃うのかな?…それとももう揃っているのかな?」

「(……なるほど。こりゃ、『確信』を持って『推測』を立てているな。…なら-)はい。『何故か三人掛かりで来た』ので、一気に集まりましたよ」

 俺はあえて隠す事はせず、『そのまま』説明した。

「…っ。初参加で、もう『有力候補認定』されるなんてね…。…やっぱり-」

 彼が『答え』を言いそうになったその時。俺は、ジェスチャーで『静かに』と伝えた。


「-……っ」

 彼はハッとし、空中に『クエスチョンマーク』を描いた。なので、俺は右手人差し指で後ろを指指して左手で『2』のジェスチャーをする。

 すると、彼は『どうするの?』と聞いて来た。…うーん。『まともな人』だったら良いんだが、さっきみたいな輩だと『後々面倒になる』んだよな~。

 そうこうしている内に、だんだん『向こう』はこちらに近付いて来た。……っ!

「……っ」

 その時、キツイ香水の匂いが俺と彼の鼻を襲った。…はあ、よりによって『三人目』か。

 誰が来ているのかが分かってしまったので、俺は迷わず『エスケープ』を選択した。

「…っ、……」

 彼は少し迷ったが、賛成を示す為頷いた。…助かる。

 なので、俺はバトンの先端で壁を叩いた。


「-っ!?」

 彼は慌てるが、俺は構わず連続で叩いた。…そして、10秒後に叩くの止めた。

『……っ』

 すると、相手の足は見事に止まっていた。…後は。

 俺はすかさずさっきの輩の武器を拾い、彼に『5』と『投げるモーション』のジェスチャーと見せた。

「…っ」

 言わんとする事を察した彼は、いつでも走り出せる体勢になる。そして、俺は彼に見えるように『カウントダウン』を始めた。

『-0』

 そして、ゼロになった瞬間俺はやたらとデカイショックナイフを『あちらさん』に向かってぶん投げ直後に走り出した。

『…っ!?』

 数秒後、後ろから落下音と派手な放電音が聞こえた。…うわ、エグい威力だな。

「…っ!」

 やや引いていると、前方から『例の音』と足音と気配を感じた。…ちょうど良い。『お手並み拝見』といこうかな?


「……っ」

 足を止めた俺を見て、彼は少し躊躇いを見せた。しかし、直ぐに臨戦態勢に入る。…ほう、隙のない良い構えだ。なるほど、『白兵戦』担当か。

「…っ!」

 そして数秒後、一人のスタッフが曲がり角から出現した。すると、彼はこちらが二人いたのに驚く。なので、俺はカードキーを取り出し彼を指し示した。

「……っ。……」

 スタッフは唖然とするが、直ぐに彼に向かって行った。

「…っ!?」

 しかし、彼は半身を下げつつ『ショックスタンプ』のブーツで足を引っ掛けた。

 そして体勢が崩れたところに、『ショックグローブ』で武器を持つ腕を痺れさせる。

「…っ!?」

 スタッフは思わず武器を離してしまった。そして、間髪入れずに彼は武器を蹴り飛ばした。


「-…どうします?」

「……参りました。それでは、『これ』をお受け取り下さい」

 彼に聞かれたスタッフは身体を起こし、潔くカードキーを差し出した。

「それではお二人共。頑張って下さい」

「ありがとうございます」

「…どうも」

 またもやエールを受け、俺と彼はお礼を言い出口に向かって掛け出した。

「-お見事でした」

「…ありがとう。でも、正直君の『腕』に比べたら僕のなんて大した事にはないよ」

「…いやはや、『プロ』としていくつもの実戦を経験してきた貴方にそう言って貰えて嬉しいですよ」

「-……『否定』はしないんだね」

「だって、『もう気付いて』いるんでしょう?」

「…やっぱり『そう』なんだ」

「ええ」

 俺は迷いなく頷いた。すると、彼は走りながらこちらを向く。

「…『あの時』はありがとう」


「……っ」

 内心何を言われるかびくびくしていた俺は、その言葉に驚く。

「…もしも貴方が居なかったら、私達は『託されたモノ』ごと『星』になるところだった。本当に、ありがとう」

「…どういたしまして。…はあ、しかしまさか『気付かれる』とは思ってもみませんでしたよ」

「…決め手は、初日に姉さんを介抱してくれた後にしてくれた『アフターケア』。…だけど、正直言えば『関係者』じゃなかったら多分推測すら出来なかったと思う」

「…なるほど。ちなみに、他のきっかけは?」

「…『イエロトルボ』の記念公園の噂が一番大きい」

「…はあ、やっぱり『そこ』ですか。…っと」

 話している内に、気付けば複数のドアの前についていた。…どうやら此処で一旦お別れのようだ。

「…じゃあ、また後……なんかある?」

「いえ、『夜の用事』まで特に待ち合わせとかはありませんけど…」

「…なら、終わったら一度イーストエリアの『トワイライト』ってホテルに来てくれる?」

「(…なかなかのお姉さん思いだな。)分かりました。それでは、お互い頑張りましょう」

「…うん」

 俺達は改めて握手を交わし、それぞれの出口から出てすぐ近くの階段から上に向かった。



 -そして、地下二階にたどり着く前にスコープとカードを返却ボックスに入れフロアに入る。

『-侵入者追加。攻撃ヲ再開シマス』

 直後、フロアの中心に鎮座する大型の『ガードロボット』が警告音と電子音声を発し『ショックネット』をこちらに放った。

 しかし、俺は即座に近くの壁に向かい攻撃を避ける。

「-…っ。もう此処まで来たんですか。

 正直、驚きました」

 すると、近くにいたジュール氏に声を掛けられた。

「(…これがベテランか。)…あはは、どうやら『認定』されたのが功を奏したようです」

「…ほう。やはり貴方は面白い人だ。

 -これならば、『協力者』は少なく済みそうだ」

 ニヤリと笑った彼は、指でガードロボットを指差す。…ま、つまりは『共闘』してくれという事だ。

「…ちなみに、今何人いますか?」

「常連が二人に、『厄介』なのが一人居ます。…ふむ、此処は貴方に知恵を借りるとしましょう」


「…っ!分かりました…(…なかなかに面倒な状況だな)」

 彼が頼って来た事に少々驚きつつ、俺は即座ににプランを練った。

「-それで、どうしますか?」

「…次に入って来た人次第ですね。

 常連勢なら『二で敵・一を封殺』。『同類』なら『妨害させ合い』ましょう」

 彼はこちらが『準備出来た』タイミングで聞いて来たので、『2パターン』を提示する。

「…素晴らしい。

 分かりました、それで行きましょう」

 賞賛した彼はすんなりと了承し、スッと立ち上がった。…いやしかし、すげぇガタイだな。セサアシスや今集まってる選抜の人達と同じくらいの筋量だ。

 軽量スーツ故、その鍛え抜かれた肉体がはっきりと分かる。これは、『相対したら』かなり苦戦を余儀なくされるだろう。

「-っ」

 そんな事を考えていると、俺が入って来た方向にある複数のドアの一つが開いた。…っ!…『同士討ち』プランだな。

 その瞬間、『一度覚えたらなかなか忘れられない匂い』が伝わって来たので俺は内心ため息を吐いた。


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