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二日目-助っ人-

「…では、以上で会議を終了しますが-」

「-そろそろお聞かせ願えますか?何故、同席なされたのかを」

 再び少佐がこちらを見て来たので、変わりに俺が聞いた。…流石の少佐も、お三方の放つオーラに若干圧されているようだ。

「なに、簡単な話しですよ。

 我々が此処に来たのは『手間を省く』為です」

「こちらをどうぞ」

 ジュール氏がそう言うと女史は一枚のデータチップをこちらに差し出した。…まさか。

「…ありがとう。君-」

 予想を立てつつ少佐に渡したそれは副官の手に移り、そして中身がスクリーンに表示された。

「…これは『参加者のリスト』?…っ」

 少佐も察したようで、ハッとしながらお三方を見た。


「…お察しの通り、そこに名前が載っている者達は『我々同様』有事の際に動くと約束してくれた『助っ人』達だ」

『……』

 …なるほど。だから揃って歩いていたのか。

「…ご協力感謝します。お三方を始め『プラチナやゴールド』、『名だたる人達』がいれば百人力です」

 …いや~、流石顔が広いな~。

「…それで、『有志の方々』はどのように動くのでしょうか?もしまだお決めになっていないのであらば-」

「-大丈夫だ。…我々は『彼の指示に従う』と既に決めているのでな」

『……』

「…はい?」

 マオ氏は淡々とした衝撃的な発言に、将校達はおろか俺も驚愕した。

「あら、何も不思議な事ではないでしょう?

『優秀な貴方』が指示を出せば、有事の際であってもトラブルなく動けますわ」

「すなわち、民間人や我々や軍人の方々に誰一人として犠牲を出す事なく『敵』を叩き潰せる訳だ」

 …なんか、凄い評価を受けているな。


「…それで、早速聞きたいのだが『我々』はどう動くべきかな?」

「…そうですね-」

 お三方からの信頼の眼差しを受けたので、決意を固めてリストを見た。…ありがたい事に、顔や基本情報だけでなく『戦い方』や『長所』までもが記載されていた。

「-まず、『傭兵チーム』は連合防衛隊の艦隊と共に敵勢力の迎撃を行って欲しいです。…というのも、恐らく『事が起こっている最中』は『重たいモノを持ち辛く』なるからです」

『……』

 俺以外の全員は冷や汗を流した。どうやら『何が起きる』か察したようだ。

「…次にお三方を除く『ハンターチーム』には、地上部隊と協力し観客と民間人の避難誘導ならびに警護をお願いしたいです。」

「…分かりました。両方のチームに伝えておきましょう」

「お願いします。…そして、お三方には当日発生するであろう『有志』を率いて遊撃を頼みたいのですが、宜しいでしょうか?」

「…よかろう」

「任せて下さい」

「引き受けましたわ」

 お三方は凛とした表情で快諾してくれた。…これで一応は大丈夫かな。


「…では、解散です」

『はっ!』

 少佐に目線を送ると、彼は速やかに終了を宣言し将校達も迅速にブリーフィングルームを出て行った。

「さて、それでは我々も帰ると……あ、そういえば君は『事情聴取』が有りましたね」

「……?いや、彼は-」

 ジュール氏の言葉に少佐はこちらを向いた。…当然俺は苦笑いを浮かべた。

「-…なるほど。『うっかり』していたのだな?」

「…はい。なので、少々早いですが『会場警備班』には『お伝え』しておこうと思います」

「…分かった。

 確か、そろそろ事情聴取を終え『送迎前のミーティング』の為に此処に集まる筈だから、その際に話してくれ」

「…了解です」

「…では、我々は先に車で待っているとしましょう」

「…すみません」

 俺は待たせしまう事に申し訳なくなりながら、頭を下げるのだった-。



 ○



 -Side『チャレンジャー』



「-以上で事情聴取を終わります。ご協力、ありがとうございます」

「…どうも」

 一方その頃、イアンも基地内にて事情聴取を受けており今しがた終わったところだった。なので、彼はお辞儀をして小会議室を出た。

(…疲れた。とりあえず、外出て姉さんに連絡しよう)

 基地内では通信ツールは使えないので、速やかに出入口に向かう。

「-あ、イアンっ」

 すると、後ろから親しみ易い男性の声が聞こえたので振り替える。

「…あ、フリッツさん。こんばんは」

 そこにいたのは、爽やかな雰囲気を纏う先輩傭兵だった。

「こんな所で会うとはな…。…お互い、災難だったな?」

「…ですね。まあ、言う程酷くはありませんが…」

「…それもそうか。

 しかし、まさかカードに『あんなモノ』が仕掛けられていたとは驚きだった…。…そのおかげで盗まれずに済んだ訳だが、ありゃどういう仕組みなんだろな?」


「…さあ、僕にはなんとも」

 話しの流れで彼は質問してくるが、イアンにも皆目見当もつかなかった…訳ではないが正直『お伽噺レベル』な予想なので彼は口には出さなかった。

「…だよな~。

 じゃあ、会えたらまた明日」

「…はい」

 ウィリアムはそう言って、足早に出入口に向かった。

(…しかし、実際問題『この星系にまつわる伝承』としか考えられないんだよね。会長さんが『過負荷だった頃』のこの星から旅立てたあたりの記録も、微妙にぼかされてるし。…と-)

 頭の中でいろいろ考えている内に、彼は出入口を出ていたので通信ツールを起動した。

『-あ、イアン。終わったんですか?』

「…うん。…あ、ご飯は食べて良いよ」


『…まだ大丈夫ですよ。

 それに、-聞きたい事-もありますし』

 気遣ったつもりだが彼女はやや不満げに返す。そして、案の定『気になって』いるようだった。

「…分かった。それじゃ、戻ったら詳しく話すよ。あ、念のため警備班の人達が送ってくれるら早く帰れると思う」

『そうですか。…じゃあ楽しみに待ってます-』

 心底ワクワクした声で彼女がそう言った後、通信は切れた。

(…ホント好きだな。…さて、確か正門前で待ってくれてるんだったよね)

 やれやれと思いつつ、正門へと向かう。すると、既に彼同様聴取を終えた参加者達が沢山いた。

(…えっと、何処に行けば良いのかな-)

 彼は、正門脇の移動式のガイドボードを見た。



      -ご案内-

『イーストエリア方面・前方緑ライト』

『ウェストエリア方面・後方白ライト』



(-…緑ライトの所だな)

 確認を済ませ、彼は緑のライトスタンドの前に出来た行列に並んだ。

(…なんか、こっちに来てから並んでばっかりだな。…そういえば、『彼』は来ていなのかな?)

 なんなとく『彼』…昨日再会したオリバーの姿を探すが日もすっかり落ちていたので見つける事は叶わなかった。

(…まあ、また会った時にでも聞いてみよう-)

『-お待たせしましたっ!ただいまより、送迎を開始しますっ!』

 そんな事を考えていると、拡声ツールでのアナウンスが流れた。そして、続々と参加者達が送迎用のバスに乗り込んで行きちょうど彼女前で一台目が発車した。

『-こちらにどうぞっ!』

 直後、短いアッシュブロンドの髪の女性軍人が誘導を始めた。

(…なんかあの人、他の人に比べて日焼けしてるな。…ブルタウオウ辺りの出身かな?)

『-それでは、出発します』

 やがて、定員になったバスは動き始め少しして宿泊しているホテルに着き彼は姉の待つ部屋に向かった。



「-…なるほど。そんな事があったんですか…」

 それから、シャワーで汗を流した彼は姉と共にホテル一階のレストランにて夕食を食べていた。そこで、事件の事を話すと姉は『キラキラ』とした表情になった。

「…やっぱり、姉さんは『そう予想』するんだね?」

「当然ですよ。…むしろ、『それ以外』は考えられない」

「…でも、最新版の『参加者リスト』には彼の名前はないよ?」

「…流石に、こういった場には出て来ないでしょう。そうなると、恐らく『名前と姿を変えて』参加しているのでしょうね。

 確か、『登録時に正式な名前』を登録していれば大会中は『偽名』でも大丈夫な筈です」

「…なるほど。彼の『後ろ盾』を考えるとその方が自然か…

 …『新顔』の辺りかな?」


「…うーん。データをみる限りは違うでしょうね…。…彼らは『普通』に降りていましたよね?」

「…多分。…そうか、会長さんがお三方と同様に『VIP待遇』にしない訳ないか」

「その通り…ちょっと待って下さい……」

 そこまで言った時、姉は『待った』のジェスチャーをした。

「初日の事を…『史料館』での出来事を思い出して下さい。

『その時』、オリバーさんは何と言っていましたか?」

「…?…えと、『知り合いが確認してくれたから大丈夫』的な事だったかな?……嘘」

 彼は姉の推測を察し、唖然とする。

「…まさか、彼も『特別待遇』なの?…でも、いくらなんでも彼が『そうだと言う』のは無理があるんじゃない?」

「…分かりませんよ?『腕の立つ人間』は総じて『力を抜く』のが得意ですから」

「……。…なら、『確かめる』しかないね」

「頼みましたよ」

 強い決意を漲らせる弟に、姉は微笑みながらエールを送った-。


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