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二日目-対策-

ーそれを『離れた所』で見ていた俺は、少し考えながら『危険判定機能のある』ゴーグルを取り『プラトーのゴーグル』を装着し部屋を出た。

「-…どうだね?君の目から見て『彼女』はどう思う?」

 すると、隣の部屋に集まっていた『白い軍服』を来た数人の男女を代表し威厳溢れる雰囲気を纏う壮年の軍人…『連合防衛隊』の代表が早速聞いて来た。

「…確かに、お借りしたデータを見る限り『クロ』なのは間違いないでしょう。

 ですが、彼女は『引き付け役』でしょうね」

『……っ』

「…『本命』は別にいるという事か?」

「大将閣下は『木を隠すなら-ウッドプラネット-の中』という言葉をご存知ですよね?」

「…?ああ…。

 -っ!まさか、『取り巻き』の中にいるというのか?」


『……』

「…誰かまでは今のところ分かりませんが、『ヘビ』が反応したので間違いないでしょう。

 なので、『他の要注意人物』も取り巻きには充分にご注意下さい」

 俺は先程まで装着していた『目』を指差した。

「分かった。早速、情報共有するとしよう。

 …いやはや、君が招待されていて本当に良かった。おかげで、ファロークスからの情報が直で来るのだから」

「お役に立ててなりよりです。

 …では、私はそろそろ失礼致します」

「ああ」

『ありがとうございます』

 指揮官の人達に見送くられ俺は『会議室』を出た。そして、その足で敷地内にある『トレーニングフロア』に向かった。



「-そこっ!遅れてるぞっ!」

『サー、イエッサーっ!』

「さあ、次は誰ですかっ!」

「自分が行きますっ!」

「もっと精度を上げなければ、敵に当たりませんよっ!」

『はいっ!』

 中に入ると、怒号と雄叫びが聞こえた。…良い熱気だな。

『選抜された精鋭』の人達を横目で見ながら、フロアの奥にある仮設テントに向かう。

「-失礼します。エージェント・プラトー、入ります」

『……っ!貴方が…』

『…ほう』

 名乗りながらテント入ると、『連合防衛隊』の地上警備チームの責任者達が一斉にこちらを見た。


「…待っていたよ、キャプテン・プラトー」

 そして、一週間前に別れたばかりの俺の『兄貴分』であるグラハム少佐も近付いて来た。

「お久しぶりです、レーグニッツ少佐」

「ああ。…また、貴官と共に任務に当たれて嬉しいよ」

「私もです」

 俺と少佐は固い握手を交わし、それから他の責任者の方とも敬礼と握手を交わした。

「-…さて、それでは私も訓練に参加させて頂くとしましょう」

「ああ。…今だと-」

「-せいっ!」

「…と。はい、終わりです」

 少佐と共に左側を見ると、見覚えしかない女性下士官…ウェンディ少尉が自分よりも背の高い男性軍人の攻撃を避けてその背後に回り込み、訓練用のビームガンを背中に押し当てた。…ああ、少尉も選ばれたんだ。

「…少尉は、選抜試験において上位の成績を修めたので会場警備…それも『観客席』の担当に抜擢されたんだ」


「…はあ~。流石ですね~」

 そう反応しつつ、俺は大会用のロングバトンを取り出した。

「…あれを見てやる気を滾らせるか。

 -気を付けたまえ。以前の彼女とはまるで別人のように成長しているぞ」

「ご忠告、感謝致します-」

 その言葉で俄然やる気になった俺は、『トレーニングジャケット』を着てそこに向かった。

「-さあ、次は誰ですかっ!」

「次は私がお相手を勤めさせて頂きます」

『…っ!?』

「…っ!プラトーさんっ!」

 早速名乗り出ると、他の人達は突然現れた俺にぎょっとするが少尉は嬉しそうに駆け寄って来た。

「お久しぶりですね、少尉」

「はいっ!プラトーさん。…っ、それが大会用の武装ですか?」

 互いに握手を交わすと、少尉は俺の持つロングバトンを見る。


「ええ。…ちなみに、これは前にお見せした『任務用』のと違い本当に普通のロングバトンです」

「……っ。なるほど、『対人戦』を予想した訓練がしたいのですね…」

「よろしいですかな?」

「…良いですよ」

 その瞬間、彼女の表情が真剣なモノになる。…最初会った時とは違いその目には一切の油断がなかった。

「…どなたか、コールをお願いします」

「…っ!…では、私が……」

 少尉の言葉に、女性軍人が名乗り出て俺と少尉の間に立った。

「-スリーカウントっ!

 …3、…2、…1。GO!」

 直後、彼女は素早くホルスターから獲物を抜き撃って来た。しかし、俺は更に速く身を屈める。

「-っ!」

 そして、低い姿勢を維持したまま『負荷環境』の中を素早く移動する。

「…っ!」

 彼女は慌てず撃って来るが、俺は片足で急ブレーキの直後方向転換する。

 彼女は、直ぐにこちらにビームガンを向け撃つ。しかし、俺はまたも方向転換した。


「…っ!」

 すると、軽量仕様故にビームガンのエネルギーがわりかし早めに尽きてしまう。…さあ、『見せて貰おうか』。

 俺は、『直感的な何か』を感じながらバッテリー交換のチャンスを狙う。

「-甘いっ!」

 すると、予想通り彼女はビームガンを逆手に持ち替え銃身をこちらに向けた。

 直後、甲高い音が周囲に響き渡った。

「…まさかこの短期間の間に近接戦闘を習得しているとは。凄いですね?」

「これも、貴方に会ったおかげです…よっ!」

「…っ!」

 すると、彼女はゴムナイフを抜き振るったので後ろに飛ぶ。…おお、これはなかなか。

 俺が感心していると、少尉は素早くバッテリーを交換し再度ビームガンを構えた。

「…貴方と任務を共にし、いかに自分が『鍛練不足』だという事を思い知りました。このままでは、いつか『不測の事態』が発生した時に足同僚達の手まといとなってしまう。

 なにより、再びまた貴方と任務を共にした時『迷惑』を掛けてしまうかもしれない。…そんな時、今回の件を知り『知り合い』に師事して貰い身に付けたんです」


 …『最高の機会』と捉えた訳か。いやしかし、短期間で実戦レベルまで磨き上げるとは……。…こりゃ、『その知り合い』は『俺の先生』と同種の人間だな。そして、なによりこの人の高い才能があってこそだ。

「…さあ、これでエネルギー切れを狙う戦術は封じました。どうしますか?」

「…ははは。本当に変わられましたね。

 -まだまだ、『これから』ですよ」

 俺はロングバトンの先端を少尉に向け、腰を落とす。

「…っ-」

 直後、少尉は表情を引き締めビームガンを放つ。それと同時に、勢い良く駆け出した。

「…っ!」

 先程と同じく少尉は撃ってくるが、俺は先程と違いまるで障害物を避けるかのような最小回避をしてそのまま直進する。

「…っ」

 すると、少尉は撃つのを止めて近接戦闘の構えを取った。

「-『落雷』」

 それを想定していた俺は、直前でジャンプしロングバトンを真下に向け『そのまま』落下した。

「…っ!?」

 負荷環境なだけあって高速で落下してくる俺に、少尉は驚きつつも後ろに飛び落下予想地点に銃口をに向ける-。

「『十衝』」

 -しかし、俺は構えを解いて着地し直後少尉に迫り『連続突き』を放った。


「-っ!」

 直後、ビームガンは少尉の手から離れ素早く出したゴムナイフも呆気なく吹き飛ばされた。

『……』

「…っ!そこまでっ!」

 俺がバトンの切っ先を突き付けた直後、終了のコールが出された。

『…おおーっ!』

 すると、見ていた軍人達は歓声と共に称賛の拍手を送ってくれた。

「…お見事です。はあ、やっぱりまだまだ練度が足りないみたいです…」

「いやいや、正直驚きましたよ。…これなら、気兼ねなく大会を『楽しめる』」

 やや落ち込む少尉に、俺は心からの笑顔を浮かべた。

「…っ。…ありがとうございます」

「…どういたしまして。

 -では、次はどなたが相手をしてくださるのでしょうか?」

『…っ!?』

 その笑顔を軍人達に向けると、実戦慣れしている筈の彼らはぎょっとした。

「…さて、充分小休止はとれたと思うのでトレーニングを再開したいと思います」

『……』

 そして、少尉の言葉に彼らは意を決し直ぐに二人の男性が前に出て来るのだった-。


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