「-それでは、私は近くに待機しておりますのでごゆっくりどうぞ」
「ありがとうございます」
会長の邸宅地下で『受け取り』を完了した俺は、会長のご厚意でゲストルームでのんびりと昼まで過ごしその後昼食をご馳走になり、それから再度スタッフの人の運転で『フォトスポット』がある場所…ポターラン史料館に来ていた。
…さてと、入り口は-。
そして、一旦スタッフの人と別れ予め彼が予約してくれていたチケットで購入機に並ばずゲートを通過しガイドボードを見て入り口に向かった。…うわ、流石に昼頃になると『参加者』も増えているな。
入り口付近に近付くと、観光客に混じって参加者もちらほらと見掛けた。それを横目で見ながら俺は入館する。
「-ようこそ、ポターラン史料館へ。こちら、ガイドマップです」
「ありがとうございます(…ま、どうせ『目当て』の物は混んでるだろうし後回しだな)」
アンドロイドのスタッフに小型ツールを貸して貰い、とりあえずエアウィンドウを展開する。すると、興味を引かれる展示物を見つけたのでそちらに行く事にした。
「-……っ。………っ」
その道中、ふと微かなうめき声が聞こえて来た。…まさか。
その声は聞き覚えのある声だったのて、視線を下に移した。すると、視線の先に休憩スペースがありそこに銀の髪をツインテールにした小柄な少女…に見える成人女性のアイーシャさんがちょこんと座っていた。…しかし、その顔色は若干優れないように見えた。…えっと、確か『あれ』は-。
常備してある『改善の策』を探しつつ、彼女の元に向かう。
「……っ。……っ」
「-大丈夫ですか?」
「……?……え?」
声を掛けると、彼女はゆっくりと顔をこちらに向け…直後に唖然とした。
「…お、オリバー…さん?な、何で…?」
「とりあえず、まずは『これ』使って下さい」
一旦質問をスルーし、彼女に『酸素スプレー』を差し出した。
「………。…ありがとうございます」
彼女はキョトンとしたが、素直にそれを受け取り新鮮な空気を身体に取り入れた。
「-…っ。ふう…」
数回呼吸をすると、彼女の顔色は若干良くなった。
「…大丈夫ですか?」
「…はい。すみません、お手数をお掛けしてしまい……」
「お気になさらず。…あれ?そういえばイアンさんは?」
「…イアンは、『フォトスポット』の方に行きました。あのコは毎回此処に来る度に『あれ』と一緒にフォトを撮るのが好きなんですよ…」
「…へぇ。意外な一面…でもないのかな?
何せ、お姉さんも『マニア』ですから」
「…私は一回で満足する理性的なタイプですよ」
俺の言葉に、彼女は心外といった表情をした。…うん、大丈夫そうだな。
「…で、何で此処に居るんですか?」
顔色が良くなったので立ち上がろうとすると、案の定彼女は最初の疑問を再度ぶっ込んで来た。
「…逆に聞きますが、このタイミングで『観光』で来たと言うと思います?」
俺はあえて挑発的な笑みを浮かべながら、質問を質問で返した。
「……っ。まさか、貴方も参戦するんですか?」
「勿論。…あ、そういえば俺の身分はまだ明かしてませんでしたね。
-俺は、『トレジャーハンター』なんですよ」
「……。…なるほど、だからあれ程の『戦闘力』を……」
「謎が解けてなりよりです。
さて、とりあえず俺はいろいろと見るつもりですが…一旦、外まで同行しましょうか?」
「……。…いや、そこまでして貰わなくても大丈夫です。貴方が貸してくれたこれのおかげで随分と楽になったので、自力で出れます」
再びキョトンとした彼女だが、首を振り酸素スプレーを見せた。
「そうですか。…あ、それの『お返し』は気にしなくて大丈夫ですよ」
「…じゃ、そうさせて貰います。
では、また-」
彼女はそう言って立ち上がり、去り際にお辞儀をして出口に向かった。…さ、気を取り直して行くか。
俺も立ち上がり、最初の目的地に向かった-。
-…おお、これはなかなか。
それからいくつかの展示物やら史料を見た後、この史料館の目玉…二階まるごとを使った『S.S.ロード』のコーナーを見に来た。そこは、一階以上に人で溢れていたが一際人が集まる場所を発見した。
-『S.S.ロード試作品』。
そう表示された電光ボードの下には、一欠片の青い大きな『S.S.ロード』が展示されていた。…おわ、『1グループ5分まで』とかしっかりしてるな。
人の流れに乗って少しずつ近付て行くと、注意を促す電光ボードが展示物の近くに設置されていた。そして、ちょうどそこには銀の髪の男性…イアンさんが立っていた。
『-それでは、最後の一枚を撮影します』
「…っ!……あ」
アンドロイドのスタッフがそう告げてフォトツールのシャッター押すその瞬間、彼はこちらに気付き視線を逸らしてしまった。
『はい、撮影完了です。フォトデータをお受け取り下さい。
それでは、次の方どうぞ』
直後、シャッターは押され彼は『しまった』という顔をした。…やべ、邪魔してしまったようだ。
「……」
彼は残念そうな表情をこちらに向けながらデータチップを受け取り、少し離れた休憩スペース移動しそこに留まった。恐らく、姉同様事情を聞くつもりだろう。
『-それでは、次の方どうぞ』
気付けば、いつの間にか俺の番が来ていた。どうやら、彼程熱心な人はいなかったようだ。
『-それでは、記念撮影を始めます。フォトは一枚で宜しいですか?』
「はい」
『畏まりました。それでは、撮影を始めます』
スタッフがそう言うと、俺は試作品の横で『感涙しながら背を伸ばした』。
『……っ』
その瞬間、近くにいた地元スタッフはびっくりする。
『-はい、撮影完了です。フォトデータをお受け取り下さい
それでは、次の方どうぞ』
俺はスタッフの脇にある機械からデータチップを受け取り、イアンさんの所に向かう。
「-お久しぶりです」
「……そうだね。…まさか、こんな所で再会出来るとは思わなかったよ。
…おかげで、最後の一枚がー」
彼は沈んだ様子でフォトチップを自信のツールにインストールし、画面を見た。
「-………あれ?」
しかし、彼はぽかんとする。何故なら、『失敗』と思っていたそのフォトは『試作品の-道-を見て驚く人』のようになっていたからだ。
「…良かった。なんか、意外に良いフォトが撮れたようですね」
「……。…君って、幸運体質?」
「…さあ、あんまり自覚した事はありませんが…『今回や今後』は役に立ちそうですね」
「……やっぱり、君も参加するんだね」
すると、彼は表情を真剣なモノに変えた。…うわ、話し聞いた後だからか本気度が違うっていうのが分かるな。
「…これは、俄然負けられなくなったな。
それじゃ、僕はこれで失礼するよ」
「…あ、お姉さんでしたら外で待ってますよ」
「…姉さんに会ったの?……あ」
すると、彼は不安な表情を浮かべ忙しいで下に向かおうとする。
「-大丈夫ですよ。さっき応急処置として酸素スプレーを渡したのでしっかりとした足取りで出て行きましたし、『外で待っている知人』に連絡を取って外の休憩スペースに行った事も確認済みです」
「……へ?」
彼はピタリと足を止め、唖然とした様子で振り返った。
「…なんで、姉さんが『人酔い』だって分かったの?…というか、この混雑の中どうやって姉さんを……」
「そうですね…。
-どちらも、『必要だから身に付けさせられた』って感じですかね?」
「……制圧術以外にも、いろんなスキルを習得しているんだね。これは、一番厄介なライバルかも知れないな…」
「…アナタのような『プロ』にそこまで意識していただけるとは、とても光栄です。
では、次は大会でお会いしましょう」
「……うん-」
俺が差し出した手を彼はがっちりと掴み、そして彼とはそこで別れた。