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制圧

-Side『バンデット』



 -約束の日当日。水賊達が根城としている無人島は、真夜中にも関わらず賑わっていた。

「-これが、例の新装備かっ!」

「すげー『イカス』デザインだなっ!」

『はは、そうだろそうだろ~』

 略奪担当の手下達は、先程届いたばかりの『兵器』を早速潜水艇に装備し他の仲間に見せびらかしていたのだ。

「…やれやれ、お祭り騒ぎやね~」

「彼らも余程嬉しいのでしょうね。…さて-」

 美女の呟きに微笑みを浮かべていた首領の男は、手を叩いて手下達の意識を自分に向けさせた。

「-さあ、今日は『大仕事』の日です。なんと、性懲りもなくまた『客人』が本土に逃げ出すようです」

『-…っ』

「…しかも、『我が右腕』の報告では三グループもいるそうです」


『…っ!』

 その言葉に、手下達は凶悪な笑みを浮かべた。

「…前回は惜しくも取り逃がしましたが、今回は『新武装』もある。そして、何より『敵のブレーン』はこちらの手の中だっ!」

 男が嬉々として告げると、奥から悲壮感に満ちた表情の『女性』が二人の手下に連れて来られた。…良く見ると、女性は『拘束』されていなかった。

「…ああ。とても嬉しい事に、彼女は右腕の『おかげ』でこちら側についてくれました。故に、彼と『彼女自身の言葉』を信じ拘束はしません」

『おお…』

「……」

 手下達が首領の男に尊敬の眼差しを向けていると、女性は『目に力を込め』ゆっくりと頭を下げた。

「…そして彼女は、実に有益な情報をもたらしてくれました-」

 すると、今度は全員が持つツールに『情報』が来た。

『……』

 それを見た手下達は、一瞬唖然とし直後に互いの顔を見てニヤニヤし始めた。


「…いやはや、まさか『そんな弱点』があったとは驚きでしたよ。

 なので、『網』破った後は必ず『そこ』から仕掛けるようにして下さい。

 さあ、それでは始めましょう」

『アイアイっ!』

 実働の手下達は速やかに洞窟を出て行った。そして、たったの数分で首領と数人だけが居る状態になった。

「-貴女には本当に感謝しかない。ありがとう」

「……」

 男は彼女に頭を下げた。すると、彼女はゆっくりと首を振る。

「…さ、貴女は部屋で休みながら『貴女を受け入れなかった者達の末路を楽しみに』していて下さい

「……」

 彼女はゆっくり頷き、そして踵を返して二人の手下と共に洞窟を出て行った。

「…では、我々も行きましょう」

『アイアイっ!』

 美女と幹部は頷き、首領と共に洞窟を出た-。



 ○



 -それから数分後、水賊達はいつもの狩場にて獲物が来るのを待っていた。

「-っ!カシラ、来ましたっ!」

 通信役の手下が『始まり』を告げた瞬間、モニターに複数の反応が出た。その内の三つは案の定ゆっくりと動いていた。

「…相変わらず、トロい動きやな~」

「まあ、『余計なモノ』を乗せているので当然でしょう。

 -では、『金の成る木』を捕まえましょう」

『アイアイっ!』

 首領の男が合図を出すと、実働チームは次々と出撃して行った。そして、数秒後には警備隊の防衛陣を次々と破って行った。

『-シャークワン、これより侵入するぜっ!』

『シャークツー、同じくっ!』

『シャークスリー、敵の足止めに入るっ!』

『シャークフォー、スリーの応援に入るっ!』

 それからさほど時を置かず、『作戦』と『足止め』が始まった。

「…ククク、さあ『どうしますか?』」

 男は完全に勝利を確信し、まるで相手が目の前に居るような感じで語り掛けた。


 -だが、その邪悪な笑みは直後に困惑に変わる。

『-っ!嘘だろっ!?なんで武装がっ…うわっ!?』

『おいっ!?…て、まさか-』

 足止めをしていた二つの潜水艇から驚愕の声が届き、直後に通信が途絶えた。

「……はい?」

「…ど、どうなっとるん?」

「…っ!?シャークスリー、シャークフォー、敵に捕まりましたっ!」

『…っ!?』

「…バカな。向こうは『網の装備の為半分武装を外している』筈です。なのに-」

『-うわっ!?どうなってんだっ!-こっちの姿は見えないハズ-なのに、なんでっ!?』

『くそっ!?このや-』

 混乱する男の耳に、まるで追い討ちを掛けるように『あり得ない』情報が入って来た。

「……なんです…って…?」

「…嘘やろ、敵は見えへんから『網』を使ったんとちゃうん?」


「-っ!シャークシックス、シャークセブン、捕獲されましたっ!」

「…っ!直ぐに、乗り込んだメンバーを回収して撤退しますっ!」

「…っ!アイアイっ!

 シャークワン、シャークツー、応答-」

『-お、繋がった繋がった』

『はーい、こんばんは~っ!』

 通信が繋がった直後、聞き覚えのない声がブリッジに流れた。

「……誰だ、お前ら?」

『おやー?ヒドイな~。

 -私達、-同じの屋根の下-で過ごした仲でしょう?』

『交戦した時声も流れたと思ったけど、まさか忘れられているなんて、悲しいな~?』

 すると、突然モニターに『あり得ない人物達』が映し出された。

「…な……コイツら…」

「…バカな、なぜ『捕まえたボディーガード』達が船に……」

 そう。モニターに映し出された人物達こそ、救援を呼びに行った際に水賊の罠に嵌まった『正規のボディーガード達』なのだ。

『あ、やっと思い出してくれたね。

 -嬉しいぜ』

『良くもハメてくれたな~?』

 すると、ニコニコしていたボディーガード達は一斉に獣のような笑みを浮かべた。


「-っ!?」

 同時に彼らは左右に別れ『あるモノ』を見せた。

「…遅かったか……」

 首領の男は苦虫を噛み潰したような表情になる。何故なら、そこには気絶した手下達が乱雑に積み上げられていたのだ。

「…撤退開始っ!」

「…っ。アイアイっ!

 全チームに連絡っ!直ちに撤退を-」

『-無駄だよ』

「-っ!?多数の高速潜水艇の反応ありっ!」

「……、まさか……」

 すると、今度は別の声が流れ直後モニターに大量の反応が表示された。

「…『ブルタウオウ地上警備隊』の首都本隊か……」

「…嘘やろ。なんでそないな連中が気付かれず……って、まさか『本土の拠点』は……」

「…確実に陥落しているでしょうね。そして、恐らくは-」

「-っ!カシラ、拠点より通信ですっ!」

「…やはりですか。

 繋げて下さい」


『-カシラ、済まねぇっ!下手打ったっ!』

 通信が繋がると、リゾートエリアに居る筈の右腕の男が開口一番土下座して来た。

「…でしょうね。どうやら我々は、まんまと『彼の仕掛けた網』に引っ掛かかってしまったようです」

『-っ!やっぱり、アイツが本物のエージェントだったのかっ!?くそがっ!』

 右腕の男は、部屋の壁をおもいっきり殴った。

「…どうやら、『潮時』のようですね」

『っ!まさか、地上部隊に囲まれてるのかっ!?直ぐに-』

「…止めておきなさい。相手は、『地上部隊の主力』です。それに-」

『-アニキ、大変だっ!警備隊に嗅ぎ付けられたっ!』

『……バカな、此処は-彼ら-が作ったセーフハウスだぞ?なんで……っ、まさか-上-もなのか?』

「ええ。恐らく、『宇宙船』にも仕込みがあったのでしょう。そして、『彼ら』はあえなく捕まったのです」


『…俺達は一体、-何-を相手にしていたんだ?』

「…言うなれば『宇宙レベルの規格外』を体現したような、『恐るべき存在』でしょう。

 これは、小さな星の水上で天狗になっていた我々では到底敵わない相手ですね…」

『……』

「…総員に通達。『白旗』の宣言を」

『…っ!アイアイっ!』

『…了解……』

 首領の男の宣言に、手下達は頷き右腕の男も悔しげに了承した。

 -それから数十分後、水賊は全員地上警備隊に拘束されるのだった。


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