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第一工程

「-…ふう~」

『取引場所』から水上船に乗り込んだ俺はひとまず深いため息を吐いた。…いやはや、緊張した。

 -そう、先程水賊達とやり取りしていた大男は俺だったのだ。…って、俺は何当たり前の事をわざわざ言っているのだろうか。まあ、それだけテンションがおかしくなっているのだろう。

 そんな事を考えながら、俺は船で中心の島近くの『訓練用の島』に戻ってから『変装』を解除した。…さて、『あれ』が届くのはそろそろだったかな?

 そんな事を考えていると、ちょうど通信ツールが鳴った。

『-マスター、カノンです。たった今、到着したようです』

「ありがとう。こっちもちょうど着いたから直ぐに『降ろして』貰らうとしよう」

『畏まりました。先方にお伝えします-』

 通信が切れたので、俺は船を降り島に上陸した。…直後、『ゴーグル』越しに数種類の『トリ達』と共に二隻の船が降下してくるのが見えた。つまり、『インビジブルメイル』のおかげで俺以外誰にも見えないようになっているのだ。


 -これこそ、最強の『連携システム』。その名も『リンクギフト』。…いやはや、まさか本体とだけでなく『獣同士』も連携できるとはな~。

 ワクワクしながら降下を見届けていると、ダイビングカノーブスが水中から出て来た。そして、『頭』からカノープス本体が出てきて二隻の船とドッキングを開始する。

 -そして、俺は『トリ』に運ばれインフィニットカノーブスに乗り込んだ。

「-それじゃあ『避難経路』を『作ろう』か」

「畏まりました。

 -『ノイズキャンセルフィールド』、『バイブレーションキャンセルフィールド』展開します」

 すると、二機の『アウル(フクロウ)』…『サイレントアウル』が二重のバリアフィールドを展開した。これで、自然は勿論『敵』にも勘づかれないで作業が出来るのだ。…さあ、頑張ろう。

 俺は決意を新たにし、『トンネル掘り』を始めるのだった-。



 -それから、およそ3時間後。

「-…っ!しゃあっ!」

『目的の場所』まで掘り進めたので、俺は思わず歓喜した。

「お疲れ様です、マスター」

「ありがとう。…とりあえず、無事第一工程は終了だ。しかし-」

 俺はモニターに映る光景を見た。…そこは一面サファイアのごとき輝きを放つ海水が溜まった巨大な『湖』だった。

「-これが、かつて『ヘビ』の眠っていた『海底洞窟』か」

 俺はおもむろに『フォト機能』を起動し、撮影を始めた。…はあ、満足。

 ある程度撮影した事で満たされたので、俺は気持ちを切り替えた。

「-ダイビングスケイル、間もなく到着します」

「…さて、それじゃ一旦俺は戻るから『準備』は頼んだ」

「畏まりました。行ってらっしゃいませ、マスター」

 カノンに見送られ、俺は『トリ』に乗って出来たてほやほやの『避難経路』を通って基地に返った-。




 ○



 -それから、基地でしっかりと食事と休憩を取った後再度『変装』して市街地の外れに向かう。…『宙灯台の元暗し』か。まさか、市街地に堂々と地上拠点があったとは…。

 目の前にある寂れた民家の敷地に唖然としながら入る。すると、玄関から厳つい男が出てきた。恐らく、何らかのセンサーが入り口にセットされているのだろう。

「-……。ようこそ、『新入り』さん」

 男は、持っていたツールと俺を交互に見た後ニヤリと笑い手招きをした。そして、男は家の奥に向かって歩き出したので俺は黙ってついて行った。

 やがて、一番奥の部屋の前にたどり着いた時男はドアをノックする。

「-アニキ、来ましたよ」

『…んあ?もう来たのか…?分かった、通せ』

「はい。…入りな」

「…どうも」

 意外な事に男はドアを開けてくれたので、少し驚きつつ頭を下げ中に入る。…っ、良く会うな。

 そこには、昨日見掛けたヤバい雰囲気を纏う大男が無造作に置かれたソファーにドカッと腰を下ろしていた。


「…こんにちは」

「…ああ。…?早く座りな」

 とりあえず挨拶すると、男は背もたれに寄りかかったまま返し少し間を置いたのち着席を促して来た。…いかん、つい『許可を待って』しまった。

「…しかし、時間前とは-」

 …やべ。案の定不振に思われたか?

 早速、『二つ』もやらかしてしまったと思ったがそれは杞憂だった。

「-随分と、『溜まってる』らしいな?」

 男は、下卑た笑みを浮かべた。…あ、『そういう勘』は鈍いな。

 俺はこれ以上ボロを出さない意味でも、無言で深く頷いた。

「…ククク、良いねぇ~。そして、なかなか『良いタイミング』で来たもんだ」

「…と、言うと?」

 俺は知らないフリをしつつ、改めて聞いてみる。

「…実はな-」

 男は、欲望丸出し…とは真逆な『ざあま』な顔で『最低最悪な計画』を口にした。…ふむ、『あの報告』と言い単なる下衆とは何か違うな。これは『調べる価値』があるな…。


「-…だから、もうちょっとでアンタのストレスも『発散』出来るぜ?」

 俺がそんな事を考えているとは微塵も予想していない男は、最後にまたゲスい笑みを浮かべた。

「…それは、(作戦的に)良い事を聞いた」

「…そうだろそうだろ。

 …うん、お前『なかなか良い』な。じゃあ、次は『腕』を見せて貰おうかな?」

 男はそう言ってポケットから小さなツールを取り出し、ボタンを押した。直後、部屋全体が『降下』を始めた。…仕掛け部屋。いかにもなシステムだが、なんで水賊がこんなモノを?…これも『例の会社』が?

「…ああ、驚かせて悪かったな。実は、この下に『射撃場』があってな。この部屋はそこに行く為の『エレベータールーム』ってのになっているんだ」

 俺が黙りこくっているのを良いように勘違いした男は、自慢気に語り出した。

「…そりゃ凄い。つまりは、いつでも好きな時に『ぶっぱなせる』訳だ」

「その通り。…ちなみに、使いたい時は俺に言ってくれ。ただ、『今日みたいに混んでる時』もあるからそん時は利用時間を守ってくれると助かる」

「分かった(…へぇ、そういう事も考えているんだ。つまりは、こいつは『そういう所』…例えば軍とか傭兵ギルドに在籍していた可能性があるって事だ。)」


 そんな事を話している内に、降下は止まり男の後ろのドアが開いた。

「…んじゃ、ついてきな」

 男は立ち上がり、ゆっくりと歩き出したのでその後に続き部屋を出た。すると、目と鼻の先に鋼鉄のドアがあった。

 -っ!?

 そのドアが開くと、中から激しい銃撃音が聞こえた。…いやはや、警備隊の基地でもこんなに激しくはなかったぞ?

 ドン引きしながら男について行き、やがて奥の個室スペースに到着した。…どうやら、『テスト用』の部屋のようだ。

「…さて、それじゃ『エモノ』を出しな」

「ああ」

 俺は上着の下の『普通』のホルスターから、『昨日見掛けたレーザーガン』に偽装した愛用のショックガンを取り出した。

「…ほう、なかなか良いのを持っているじゃないか。こりゃ、『貸す』手間が省けるぜ」

「(…なるほど。かなりの『ズブズブ』具合だな。)そりゃなによりだ」

「…んじゃ、耳に『それ』着けてそこのボタンを押しな。後は、『こいつ』が勝手にやってくれる」

 男は、壁に掛けられた射撃場ではお馴染みのイヤーマフを指差しそれからテストマシンの手前に設置されたボタンスタンドを指差した。

「…んで、終わったら直ぐに『判断』するからちょっとだけ待っててくれ」

「分かった」


「…じゃ、頑張りな」

 男は説明を終えると、素早く部屋を出て行った。…さて、やりますか。

 俺はイヤーマフを装置し、スタートボタンを押した。すると、テストマシンが起動し『説明』が始まる。…これ、『軍用』じゃないか?

『-スタート!』

 そうこうしている内にテストは開始したが、俺は慌てずに『右から流れてくる的の中心』に向かってトリガーを引いた。直後、黄色い光線が放たれ的を『破壊』した。…やっぱり『ブレイクモード』は凄いな……。

 -実は、『これ』きは『破壊可能対象』…さっきの的のように『壊しても問題ないモノ』限定で破壊出来る『ブレイクモード』があるのだ。

 唖然としていると、少し奥に的が出現したので素早くそれを撃ち抜いた。…まあ、『ちょっと抑えて』やるか。

 あんまり目立つのも『良くない』気がしたので、その後は手を抜きながらやるのだった-


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