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撹乱


 -それから数十分後、ようやく心臓が落ち着きを取り戻したので行動を再開した。すなわち、先程の男の行き先を確認する為に足跡を調べ追跡を始めたのだ。…正直行きたく無いが、あの男を雇っている人間の真意を確かめない事にはこの事件は真の意味で解決出来ないと感じたからだ。

 …そして、追跡を始めて僅か1分足らずで再びゴーグルが危険を知らせて来た。どうやら、『雇い主』の屋敷がこの近くにあるようだ。

「-っ、プラトー殿」

 すると、近くの茂みから男性の声が聞こえた。その声はとても安堵したものだった。

「…どうやら、私の勘は当たってしまったようですね……。…それで、この屋敷ですか?」

 ため息を吐きながら彼の隣にしゃがみ、確認する。

「…ええ」

 彼は頷き正面の屋敷を見た。…うわ、他の屋敷も大概だったけどここは更に『品が無い』。

 その屋敷はまさに『御殿』と言うべき外見だった。建材はプラチナウッドと呼ばれる超高価な木材で、至る所に金とクリスタルの装飾があるのだ。そして、僅かに見える屋敷の内装はとにかくド派手だった。


「…で、肝心の主はどちらに?」

「…それが、『発見』した後に屋敷の奥に消えてしまい未だにリビングに戻って来ていないのです」

「…なるほど。あ、そう言えばこちらに『赤反応』の人物が来ませんでしたか?」

「…っ!は、はい来ました。…あの男はもしや……?」

 彼は頷き、確信に近い予想で聞いてきた。

「…間違いなく、『水賊』の人間でしょう。実は、先程『連絡』を取っているのを偶然聞いてたのです」

「……なんて事だ。…『彼』は一体の何の目的で…?」

「…そういえば、ここの持ち主って誰なんですか?」

「…プラトー殿は、『サーシェスカンパニー』と言う企業をご存知でしょうか?」

 すると、彼は唐突に質問してきた。

「…えっと、確か『銀河連盟に-非加盟-』の星系『トオムルヘ』にある『兵器輸送会社』でしたっけ?…まさか?」

「…流石ですね。…ええ、そこの重役がここの主です」

「…なんですかね?『非常に嫌な予感』がして来たんですが?」

「…自分もです。…これは、ひょっとしたら単なる水賊騒動では収まらない『大事件』になるかも知れません」

「…一旦、基地に戻り『上』の指示を仰がなければなりませんね。なので、調査はこれにて終了し一刻も早く帰りましょう」

「了解しました。自分は、島の左を担当します」

「ありがとうございます。では、私は右を-」



 -その後、迅速に連絡が伝わり俺と制圧班の人達は無事リゾートエリアから基地に帰還した。そして、俺はその足で通信室に向かう。

『-おはよう同志プラトー。…おっと、そちらはまだ夜だったね』

「はい。…朝早くに申し訳ありません閣下」

『なに、いつもこの時間には起きていから気にする必要はない。…それで、何があったのかね?』

「…実は-」

 俺は、推測を交えつつ閣下に現状を伝えた。

『-…なんという事だ……。-あの会社-の重役が来ているのか?』

「…もしや、良くない噂がある会社なのですか?」

 愕然とする閣下に余計に不安になったので、聞いて見る。…すると、閣下は頷いた。

『…非加盟星系にある企業故、事実確認は出来ていないが-黒い噂-が絶えないところだ。…その辺りは勉強はしていないのだな?』

「…はい。地理の先生からは、概要を教わっただけです。…そういえばその際『関わるな』と忠告されましたがそんなにも恐ろしい会社なのですね…」

『ああ…。噂の中に-人身売買-があるような会社だ……っ!?…まさか、それも狙いなのか?』

「…さっきは、『余りもおぞましい予想なので』言えませんでしたが、閣下の情報を聞いて可能性が大きくなりました……」


『…同志プラトー。改めて要請を出す。

 速やかに、リゾートエリアの観光客達を避難させてくれ』

「了解しました。…では、二つ『お願いしたい事』があります」

『なんだね?』

「一つ目は『ホワイトメル』『イエロトルボ』に置いてきた『トリとトラ』を、こちらに送って下さい。…それがあれば観光客の方々を『安全』に避難させられます」

『…分かった。直ぐに両政府に要請しよう』

「ありがとうございます。…それで、二つ目ですが-」

『-…それは構わないが。…分かった、直ぐに手配しよう』

「ありがとうございます。…『それ』があれば、より安全に避難が出来ると思いますので」

 二つの頼み事に閣下は首を傾げるが、直ぐに了承してくれた。

『…では、頼んだぞ。同志プラトー』

「お任せ下さい」

『-エージェント・プラトー殿、お手数ですが留置場までお越し下さい』

 通信を終えた直後、アナウンスが流れた。…多分『あれ』だろう。

 確信に近い予感を抱きながら、おれは早足でそちらに向かった-。



 ○



 -Side『バンデット』



 -薄暗い部屋の中、男は思わずニヤリとした。…つい先程、手下が『標的』を捕らえたと連絡してきたからだ。これが、喜ばずにいられようか。

「-……っ、……?」

 そんな時、ベッドに横たわる美女…男の愛人がふと目を覚ました。

「…ああ、すみません。起こしてしまいましたか」

「…なに、見とるん?」

 その身体に薄く大きなベッドカバーだけしか掛けていない美女は、カバーの中を通り男に寄り添った。

「…早速『捕まえた』ようです。どうやら、不幸にも車がエンストしそこを襲撃したようです」

「…っ!あっはっはっはっ!基地では邪険にされ帰り道でエンストして、挙げ句『拉致』かいっ!踏んだり蹴ったりやな~っ!」

 男の言葉を聞いた美女は一瞬で目が覚め、『その人物』の不幸を爆笑した。

「…これで、後は『あれ』さえ届けばまた『荒稼ぎ』出来るでしょう。

 ただ、それには一つ問題があります」


「…せや、『今までの受け取り方法』が使えないんやったな。どないするん?」

「…そうですね……?」

 男が考え込んでいると、手に持った一昔前の通信ツールが再度震える。…どうやら手下達からの追加報告のようだ。

「……っ。これは…」

 内容を読んだ男は添付された文章データを見た。そして、その内容に驚愕した。

「…どないしたん?

 -めっちゃステキな笑顔になっとるよ?」

「…『これ』を見て下さい。どうやら、『彼女』はとても『素晴らしい』プランを立てていたようです」

 男は美女にツールを渡した。…そう、届いた内容は『その女性』のツールから抜き取った『救出作戦の計画書』だったのだ。

「-…おわ、良く調べてるやん。…なるほど、確かにこれなら『ルール』には違反せんな~」

「…ええ。やはり早めに抑えて正解でした。

 しかもなんと、警備隊の方々は『これ』を突っぱねています。…よほど、『環境』を気にする方々のようだ」

「…ああ、夜は『デリケート』なのが活発になるやったね」

「…まあ、一応『彼』にも-」


 -すると、三度ツールが震えた。

「…なんやろ?」

「…ふむ-」

 美女からツールを受け取った俺はその内容を読んだ。そしてまたもや凶悪な笑みを浮かべた。

「-…どうやら完全に、『潮の流れ』を掴んだようですね。

 …これを見て下さい」

「…っ!これは…-」

 その内容を見た美女は、男と同様凶悪な笑顔になった。

「-…最高やん」

「…ええ。

 直ぐに、『お話しに』行きましょう。…と、その前に…」

「…っ!……」

 男は美女に熱いベェーゼをし、それからベッドから立った。

「…気ぃつけてや、ダーリン」

「行ってきます」

 そして、男は衣服を身に付け部屋を出て行き手下達の元へ向かった-。


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