「…さあ、お次は地上の支援だ。
カノン、『足と武器』を用意してくれ。…あ、それと閣下達をこちらに呼んでくれ」
「畏まりました-」
カノンは、まず転送ルームにアナウンスを流した後操縦席の前にそれらを『用意』した。
「-オリバー君」
それから数分後、閣下と護衛チームはドローンに乗ってやって来た。
「…っ、君は……」
「お久しぶりでございます。ブラウジス閣下」
やはりというか、二人は顔馴染みだったようだ。
「…閣下、こちらの方は?」
「…彼女はカノン。このカノープス号専属のガイノイドだよ。…すまないが、それ以上は言えない」
どうやら、彼女の存在はトップシークレットのようだ。…まあ、どう考えても船と併せて『普通の生まれ』じゃないよな。
「…いえ、とんでもありません」
ディネントさんはすぐに察し首を振った。
「…それでは、これからどう動くか話し合いましょう」
「ああ。…まず、私は地上の領事館に通信し地上警備隊と私達の安否を伝えたいと思う。
あ、勿論この船の事は極秘事項なので誤魔化すつもりだが…構わないかな?」
「…あ、それでしたら通信は偽装通信用の『コネクトパロット』をお使い下さい。それなら、背景は『地上の安全な場所』になりますので」
「…ああ。そういえばそれがあったな」
…まるでスパイノベルみたいな……あ、まさかそれって?
直感的に答えが浮かび、閣下に目線を向ける。
「…本当に鋭いな。まあ、流石に正統派冒険ノベルにはあまり宜しくない表現だからね。でも、『それ』のおかげで幾度となく助けられたのも事実だから『二つに分ける事』にしたのさ」
閣下は衝撃の裏側を語ってくれた。
「…話を戻そう。
次に警備隊員だが……。申し訳ないが彼らには、この船が『極秘裏に開発された特殊医療船』という設定でつき通そう。そうすれば、彼らは決して口外しないだろう。
…なので、安否を伝える時に辻褄が合うよに話すとしよう」
「何から何まですみません」
「なに、それが私の役目だからね。
…そして、最後に同志オリバーだがー」
閣下は、少し申し訳なさそうな表情になった。
「-大丈夫ですよ。…閣下もご存知かも知れませんが、宇宙に出る為の『様々な技能』は『かの小説』や『同志の方々』が用意して下さった教材にて学習済みです」
「…分かった。では、契約に基づき君には警備隊と共に『事態の収拾』に努めて貰おう」
「了解しました」
閣下の言葉に、俺は躊躇なく頷いた。そして、カノンが用意した『アイテム』に目を向けた。
一つは、フロートユニットを搭載し裏面にツバメが描かれたスケートボード型のビーグルマシン、『スプリントスワロー』。
もう一つは、カノープスと同じ色をした二丁の『非殺傷』のビームガンだ。…おお、やっぱり市街地防衛といえばこの二つだよな。
俺はビームガンが納められたホルスターを腰に装着し、ボードに乗った。
「カノン。俺を転送した後は、状況に応じて適宜支援を頼む」
「畏まりました。…それでは、『安全な場所』への転移を行います」
彼女がそう告げた直後、俺の足元にある転送ポートが起動する。
「じゃあ、行って来る」
「お気をつけて行ってらっしゃいませ-」
彼女がお辞儀をした直後、俺は再び中心部に戻って来ていた。…ここは、確か……。
周囲を確認すると、故郷以外では余り見掛けなくなった自然溢れる光景が広がっていた。…なるほど、確かに『安全な場所』だな。
だが、その『安全な場所』…地下に大型避難シェルターがある『ヒーリングパーク』に海賊の魔の手が迫っていた。
「-スプリントスワロー、テイクオフ」
俺は即座にビームガンを抜き、ビーグルを起動させた。
「ゴー!」
直後、小型ブースターによってゆっくりと直進し始めだんだんスピードが上がって行く。…そして、地上警備隊と海賊達が交戦している場所に着く頃にはかなりのスピードが出ていた。
『-っ!?』
『なんだっ!?』
当然、両陣営は第三者の乱入に一瞬攻撃の手が止まった。
「ジャンプ!」
なので、ボードの下のスラスターを稼働し警備隊の頭上を越えて一気に海賊達に迫る。
『-う、撃てぇっ!』
海賊達は慌てて迎撃するが、ボードはオートシールドを展開し俺を守った。そして、海賊達が射程圏内に入った瞬間。俺は、右手に持つビームガンのトリガーを引いた。
『-……?……っ!?』
しかし、向こうにもオートシールドがありそれによって攻撃は防がれた…かに見えた。だが、直後そのシールドに異変が起きる。なんと、そのシールドは高速で宙に飛んで行ったのだ。
『-……へ?』
ついさっきまでそこにいた仲間が、瞬きした直後には消えている状況に海賊達はまたしても攻撃の手を一瞬止めた。
その隙に、移動しながら次々とビームガンを『照射』していく。そして、空中にステルスで待機している『無人機』の1つ『フロートファルコン』達によって海賊達は次々と、『強制命綱無しの空中散歩』に参加していった。
『クソッ!逃げ-』
「-逃がすわけないだろ」
俺は、左手のビームガンを撤退しようとする海賊達に向けトリガーを引いた。
『-ガハッ!?』
直後、海賊達は突如出現した『黄色く光る巨体なカーテン』に激突し半数が一気に気絶した。
『…ショックカーテン……』
それを見た警備隊の誰がポツリと呟いた。…あ、『ファン』がいるな。
俺は少し嬉しくなりながら、残った海賊達を次々と無力化していった。
「-…貴方は、一体?」
「申し遅れました。私は特務捜査官の『プラトー三世』です。…では、後は無人機が降りて来たら海賊の拘束をお願いします」
『ーっ!?』
俺はそれだけ伝えて、驚愕する隊員達をスルーし公園を後にした。…さて、次は-。
『-マスター、先程閣下が領事館に通信を開始しました。そして、まずマスターが支援に入った事を防衛隊全員に通知するよう要請したようです』
何処に行こうか考えていると、カノンから通信が入った。…よし、これで俺は正式に味方認定されたな。
『その際、領事館サイドから要救援地点の情報が開示されました』
同時に、ゴーグルに中心部のマップが表示された。…その中に、赤色でマーキングされた建物が幾つかあった。
『現在、マスターの居るポイントより最も遠い箇所に-スプラッシュペリカン-と-ガードスワン-を、数機派遣しました』
「ナイスアシスト。…っと」
通信をしていると、ふとアラートが流れた。
『マスター、ご注意下さい』
「ああ、どうやら『向こう』から歓迎してくれるようだ。…じゃ、一旦通信を切る」
断りを入れて通信を切り、俺はビームガンを構えた。
『-オラァー、死にたくなきゃ退けぇーっ!』
直後、左方向から頭の悪そうな脅し文句が聞こえて来た。
「ジャンプ!」
そして、十字路に差し掛かかる直前で俺は数秒間高度を上げた。
『…っ!?な、なんだっ!』
『ヒューッ!イカスのに乗ってるなぁ~っ!』
『おい、あのヤロウを追っかけろっ!』
すると、案の定改造エアバイクと調子に乗っている海賊達は俺を標的にした。…チョロい。
俺はニヤリと笑い、右手のビームガンを地面に向けて数回発射する。
『-っ!?』
直後、俺を追いかけていた海賊の数名が『コースアウト』した。
『なんだありゃーっ!』
『だったら回り込めっ!』
すると、後ろから数台のバイクが消えた。…ほう、多少の知恵はあるようだな。
俺は冷静に分析し、一番近くの要請ポイントに向かうルートを検索する。
『喰らえっ!』
すると、後方からビームが飛んで来るが全てシールドが防いでくれた。
『なっ!?』
『だったら、-コイツ-はー』
「『ピンポイントショック』」
…なんか嫌な予感がしたので、左手のビームガンの設定を変更し後方に向けて発射した。
『-ドワッ!?』
直後、ピンポイントで『それ』は壊れ重量を感じさせる落下音が聞こえた。
『上になんかいるぞっ!?』
流石に海賊達も気付くが、既に遅かった。
「『ワイドリフトアップ』」
俺がそう呟くと、スピードを維持したままどんどん高度が上がって行った。
『…なっ-』
『-おい、前を…っ!』
直後、俺の後ろにいた奴らは回り込んでいた仲間と正面衝突…する直前で仲良く『コースアウト』した。
「じゃあなーっ!」
俺は連中に清々しい笑顔で手を振り、地上に降りて最初の目的地に向かった-。