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episode12 邂逅Ⅱ

 君に過酷な宿命を背負わせてしまったことを謝罪しよう。


 目の前の男はそう言った。

 何の話かと口にしたが、何の反応も見せないところを見るに、あちらは私の言葉が分からないらしい。

 肩鎧に手甲。

 長い前髪を持つ、豊かな白純の髪。

 その装いや武装の雰囲気は、どこか自分に似ている。

 北方の武人だろうか。少なくとも、こうして無意識の中に現れる存在だ。どこかで私と関与している可能性がある者なのだろう。

 やけに自我がしっかりとした夢だ。

 ただ、その一言を口にしたのち、男の声は聞こえなくなってしまった。訴えるかのように唇は何度も開閉を連続させるが、何も分からない。

 何かを伝えたいということだけが伝わってくる。

 私に課した過酷な運命とはなんだろう。

 この白髪という宿命か、いいや違う。

 彼自身が白髪なのだ。

 ならば、あぁ、そうか。

 声がまた聞こえる。


 心から。

 これからの幸せを願おう。

 だからどうか。


 どうか、待って。

 貴方は何者なのですか。

 手を伸ばす。

 彼を、その声を、希うように。

 私は、一体誰なのですか。

 するとそれまでしかめっ面とも泣きっ面とも言えない、微妙な表情だった男の顔が、わずかに緩む。

 また聞こえなくなる。

 唇から紡がれる、その言葉。

 待って、ください。

 その言の葉を口外に投げる、その前に。

 目の前は真っ白に包まれた。

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