ブリジットとアメリアが揃って店に入ると、2人の女性店員がすぐに駆けつけてきた。
「まぁ、これはようこそお越しいただきました」
「本日もドレスを御覧になられるのですね?」
女性店員達は交互にブリジットとアメリアに話しかける。
「ええ。そうだけど……でも、ドレスを選びに来たのは私たちではないわ。彼女よ」
ブリジットは背後にいるイレーネを振り返る。
「は……? こちらの……女性ですか……?」
「冗談ではありませんよね……?」
メガネをかけた女性店員はクイッとフレームをあげてイレーネを見つめる。
「はい、冗談ではありません。本気で、こちらのブティックでドレスを買いたいと思います。何しろ、こちらはマダム・ヴィクトリアという一流デザイナーの方がデザインしたドレスなのですよね? 一流のドレスは着る人を選ぶことは無い、一流だからこそ、誰にでもぴったり似合うドレスを作れるのですよね? 是非、私のような者でも着こなせるドレスを選んで頂きたいのです。是非、このお店で!」
イレーネはキラキラ目を輝かせながら、熱く語る。そんな彼女に圧される4人の女性。
「ま、まぁ……確かに、マダム・ヴィクトリアはこの町一番のデザイナーではありますが……」
「そうですね。一流の店は、誰にでも似合おうドレスを提案できるからこそ、一流なのかもしれませんし……」
自分たちの店を一流と褒められ、女性店員たちは気を良くしている。
「折角来店されたのですから、選んでみましょうか?」
「そうですね、試着だけでもいいかもしれませんね」
そこで女性店員たちはイレーネに提案してきた。
「本当ですか? ありがとうございます!」
笑顔でお礼を述べるイレーネ。
「ええ。ではどうぞ奥の試着室でまずは採寸いたしましょう」
「ご案内いたしますね」
「はい」
イレーネは女性店員に連れられ、試着室へ向かう。
そしてそんな様子を唖然とした目で見つめるブリジットとアメリア。
「ちょ、ちょっとどういうこと……てっきり断られるかと思ったのに」
「単なる貧しい女だと思っていたけど……中々口が上手いわね……」
ブリジットとアメリアはコソコソ話しだした。
「ブリジット、私たちはどうすればいいのよ? 何だかおかしなことになっちゃったわね。もう帰る?」
「何言ってるのよ、アメリア。これからが面白いんじゃない。どうせこの店のドレスは高くて手が出せない。買えずに恥ずかしい思いをさせればいいわ」
「ああ、なるほどね……確かに面白そうだわ」
すると、そこへ女性店員が立ち止まっているブリジットとアメリアに声をかけてきた。
「あの、お2人はどうなさいますか?」
「ええ、勿論付合わせてもらうわ」
「どんなドレスを選ぶか楽しみだもの」
ブリジットとアメリアは交互に返事をし、4人は試着室へ向かった。
そして……試着室でブリジットとアメリアは悔しい思いをすることになる――