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ランナウェイ
熊野龍人
現実世界青春学園
2024年08月14日
公開日
7,339文字
連載中
自分のすべてを燃やし尽くせ!

熊切中学校に通う主人公の谷口蓮は、自分のことを特別な人間だと勘違いしている普通の中学生。
部活は中学3年間のみのお遊びだと考えていた彼だったが、長距離走との出会いによって人生を大きく変えられる。
自分より遥か高みにいる先輩たち、切磋琢磨するライバルの存在、そして、自分のことを気にかけてくれるヒロイン…
さまざまな要素が絡み合った物語の結末は!?

駆け抜ける青春スポーツ物語、開幕!

第1話:入学、そして入部

ほとんど新品の学ランに袖を通しボタンを留めれば、自分が去年までと異なる生活を始める自覚が芽生える。

部屋の姿見で自分の姿を確認して、何も問題がないことを確認する。


短髪ショートヘアーに眼鏡。鏡に映っているのはどこにでもいそうな健全な男子中学生ではないだろうか。


鏡の前でぐるぐると回って全身を確認する。やはり黒だ。黒はかっこいい。

入学式の朝、新たな世界に飛び込む準備を整えて、何か壮大なストーリーが始まることに期待を寄せながら、俺はゆっくりと部屋の扉を押し開けた。


今日から俺は、この熊切中学校に通う。

全校生徒は100人を超えない小さめの学校だが、今日は新入生の保護者たちもいるために体育館は窮屈に感じる。


この学校は東側の大熊小学校と西側の大切小学校のこどもが集まる学校だ。


町の中心に近い大切小学校と違い、山の上にある大熊小学校は全校生徒が50人程度。

特に俺たちの学年は人数が少なく、5人しか同級生がいなかった。


今までに感じたことがない人の多さと声の多さにめまいをさせられながら、内心では椅子にしがみつくように、何とか無表情で座っている。


昨日の寝る前には、同級生がどこにいるかを確認できると思ったが、人が多すぎてそんなことを考えている場合ではない。

心なしが吐き気もしてきたような気がする。


隣の人との間隔は開いているはずだけど。

人が集まっていることによる熱気によってか、体育館の中は、外の肌寒さを感じさせない。


人の体温なんて大したものじゃないと考えていたけれど、これほどの人数が集まると意外とわかるものなんだなぁ…

そんなふうなことをぼんやりと考えていたら、入学式は終わった。


入学式が終わり、教室に移動する。

くせっ毛で長身の担任が自己紹介をしてくれる。名前も教えてもらったが一発で覚えられなかった。

まあ何とかなるだろう。


その後、教科書の受け取り、今後のスケジュールの説明を受けて俺は帰宅した。

入学式初日は先生の言う通りに移動して、もらうものをもらっていたらあっさりと終わってしまった。


中学生としての本番は明日以降か。中学生になったからといってすぐに何かあるというわけではなく、少し拍子抜けした。

けれど、それは油断だと思いなおし、気を引き締める。


しかし、今日は授業がなかったため、勉強するべきことが思い浮かばない。

とりあえず、先生が言っていた通り、教科書に名前を書くところから始めよう。


そう考えた俺は、ペン立てからサインペンを取り出し、すべての教科書に自分の名前を書いていく。

地味な作業だ。

でも、小説の主人公だって普段はかっこいい部分しか見せてくれないが、裏ではこういう地味な作業をしているのだろうな。

そんな妄想をしつつ、積みあがった教科書の裏表紙をめくり「谷口蓮」と名前を書いていく。



中学生になって1週間が経ち、授業の形式、学校のスケジュール、人の多さにもだいたい慣れてきた。


そして、ついに来た部活紹介と仮入部期間。

周りはどんな部活に入ろうかという話題になっている。

しかし、俺が入る部活はもう決まっている。陸上競技部だ。


なぜこの部活にしたのか。もちろん理由がある。

まず、この学校には部活の選択肢がそこまで多くない。両手に収まる程度の選択肢しかない。


そして、俺は文武両道を目指しているので、文化部は選択肢に入らない。部活の選択肢はさらに減る。


さらに、部活動はおそらく中学生の間しかしないので、道具にお金を掛けたくはない。


それらすべての条件を考慮した結果、最適な選択肢は陸上競技部だということになった。


放課後になり、部活紹介後にもらった入部届を職員室に提出しに行く。

仮入部期間ではあるけれど、入部届は受理された。これで俺も陸上競技部だ。

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