あの人の奏でる音、作り出す音楽。とても素晴らしいと思う。
私はそう思う。
あの子が奏でる歌、生み出す音楽。とても素晴らしいと思う。
僕はそう思う。
この人と。
この子と。
「音楽をしたい」
ここは国立壮麗音楽芸術大学附属、
音奏高校は一般的な学校で、普通科が主な学科となる。
だが、普通の高校と違うところがあった。
それは歌手や音楽の道に進む生徒を育成するシステムが存在するのである。
音楽の道に進むか悩んでいる状態で入学する生徒も居れば、逆に音楽に興味がない 生徒も居たりする。
では、システムを利用せずになぜこの学校を選ぶ生徒も居るのだろうか。
様々な理由があると思うが、大きく二つの理由がある。
まず一つ目に音楽が好きで入学する者。
音楽好きの中にも二種類の人達が居る。
一つに音楽の鑑賞を目的とする人。
二つに音楽の道に進みたい人。
前者は説明の必要はないだろう。
後者は今まで音楽の世界に身を投じてきた人とこれから飛び込もうとする人だ。
そして二つ目は国立かつ、大学附属というところだろう。
ここ数年で竣工し開校したばかりの新学校なのだから話題性は抜群だろう。それに奨学金や学費半額免除などの制度は喉から手が出る程魅力的だ。
附属の大学に進学しないにしても、この高校に在学していたという名目は大きい。
「僕は自分の為にしかやりません」
周りの大人はみんな口を揃えて言ってくる。
「そんなのもったいない。あなたはやればできるんだから」
「そうだぞ。お前が頑張るとみんなが喜んでくれるんだ」
周りの大人の期待に応えて、表面上だけ褒められ、大人の私利私欲を満たすための道具にされるのは嫌だ。
傲慢で、強欲で、貪欲で汚い。
きっと人を楽器だと思っているに違いない。
だから、僕は音楽を自分のためにしかしない。自分がやりたい場所。自分がやりたいとき。それ以外はやらない。
そんな窮屈で平凡な毎日を送っていた。
何もない日々を一人の少女との出会いが変えてくれた。
それは音楽室での出会い。
きっとあの出会いは二度と忘れることはない。
そこに居たのは、
これが、彼女との最初の出会いだった。