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第89話 爆弾発言

「まぁ、ようこそお越しいただきましたわ。エド様」


「……逃げずに我が家に来てくれたようですな。中々度胸のある方だ」


屋敷に到着するとすぐに、エントランスまで父と母が出迎えに現れた。

父の言葉に不自然さを感じながら私は両親に告げた。


「エドがお父様とお母様にお話があるそうなので、お連れしたのですが……よろしいでしょうか?」


「ええ。勿論よ」

「それでは食事をしながら話をしようではありませんか」


「はい、是非お願いします」


両親の提案に笑顔で頷くエド。

何やら3人の間に思惑があるような雰囲気だ。私はついていけず、1人首をひねっていると母に声をかけられた。


「何をやっているの? ステラ。食事の用意が終わるまで、お客様を応接間にお通ししないと」


「あ、そうですね。では……」


するとエドはとんでもないことを言ってきた。


「いえ、応接間よりもステラの部屋に行きたいのですが」


「「「は?」」」


父と母は豆鉄砲を食らったかのような顔つきになるし、私はエドの魂胆にピンときた。


まさか……またしても、私のとっておきの食べ物を貰うつもりでいるのでは!?

流石にそれだけは阻止しなければ!


「えっと、エド。私の部屋には……」


「そうだな! それがいい!」

「ステラ、自室に案内なさい」


「えっ!?」


あろうことか、両親がエドの言葉に賛同した。

絶対に認めないと思っていたのに!?


「あ、あの……」


嘘だよね? 両人に目で訴えるも無情な言葉を浴びせられる。


「ほら、何をしているの?」

「早くお連れしなさい!」


「はぁ……分かりました……では、行きましょうか? エド」


「そうだな、早く行こう」


ニコニコするエドを連れて、私は渋々自室へ連れて行くことにした――



****



「ステラ。もうスナックは無いのか?」


部屋に入るなり、エドは予想通りの質問を投げつけてきた。


「……ありませんよ。エドがぜーんぶ持っていってしまったじゃないですか」


いや、正直に言えば……まだある。

しかし在庫は僅か。

それに、もうあの部屋に残された宝箱? も半分以下になってしまった。

これ以上自分の取り分を……奪われるわけにはいかない!


「そうか、残念だな。……でも、まぁいいか。これからは……」


エドが何やら呟いているが、最後の方は言葉が小さすぎて聞こえない。


「エド? 今、何か言いましたか?」


「いや? 別に何も。今夜の食事は何が出るんだろうな〜ステラの屋敷の食事は美味しいから今から楽しみだ」


「は? もしかして、食事を食べるために我が家に来たのですか?」


「まさか、そんな筈無いだろう?」


ブンブン首を振るエド。


「ふ〜ん……なら、一体……」


そこまで話した時、開けていた扉から母が顔を覗かせた。


「食事の用意が出来たわ。ダイニングルームへ来てくださいな」


「はい! 直ちに。さぁ、行こうか? ステラ」


エドが手を差し伸べてきたので、つい無意識にその手を掴んでしまう。


「ま、やっぱり」


その様子に母が嬉しそうにポツリと言う。

やっぱり? やっぱりとはどういう意味だろう?


何のことやら分からず、私達はダイニングルームへ移動した――



****


「さぁ、どうぞ。エド様、今夜はいつも以上に豪華な料理を振る舞わせていただきます」


得意げに話す父。

確かに今夜の料理はいつも以上にすごかった。テーブルの上は肉料理からオードブル、焼き立てパイや魚介料理がぎっしり乗っている。


あまりの量の多さに見ているだけで胸焼けが起こりそうだ。


「素晴らしい料理ですね。とても美味しそうです」


大食漢? のエドはもとより、両親も異常な程ニコニコしている。

一体、何がそんなに嬉しいのだろう。


「どうぞ、召し上がって下さい」


母がエドに料理を勧めた。


「ありがとうございます、でもその前に……アボット伯爵! どうかステラと結婚させて下さい!」


「ええええっ!?」


いきなりの爆弾発言に声を上げたのは、勿論私だ。


「ちょ、ちょっとエド! いきなり何を……!」


「「ええ、勿論です!!」」


「はぁっ!?」


すると、あろうことか両親が声を揃えて返事をした――




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