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第79話 悪女のくせに

「そう、それです! ステラさん……あなた、一体彼らに何をしたのですか!? いつもなら私の迎えに来てくれるのに、今朝は誰も来てくれなかったのですよ? だから今朝は自力で大学に来なければならなかったのですからね? エイドリアンだって大学に来なくなったのは、ステラさんのせいでしょう!?」


ビシッと私を指差すカレン。


「なるほど……やはり、思っていたとおり大学に来れなくなってしまったのですね?」


つまり、彼らは鏡の前から離れられなくなってしまったというわけだ。

恐るべし、魔女の作った惚れ薬。


「その言い草……やっぱり何かしたのね!? さっさと言いなさいよ!」


もはやカレンは地で話している。

やっぱりカレンは……。私の中で彼女に対する疑問が膨れつつも、答えた。


「何をしたのかですか? カレンさんがしたことと同じことをしただけですよ?」


「何ですって……ま、まさか……」


「ええ。昨日あなたがエドとデートを楽しんでいる間に、あの3人に惚れ薬を飲ませました。強力な惚れ薬をね」


「それじゃ、あなたに惚れさせるようにしたのね!?」


怒りを露わにするカレン。


「私が自分に惚れさせるように? まさか、そんな面倒なことするはずないでしょう? 四六時中つきまとってくる相手は1人で十分ですよ。それにもし仮にそうだとしたら、今頃3人は私にへばりついているはずでしょう?」


そのつきまとう相手とは……もちろん、エドのことだ。


「でも……確かに言われてみればそうかもしれないわ。それじゃ、一体誰に惚れさせるように仕掛けたのよ?」


「それは自分自身ですよ」


「は?」


ステラが首を傾げる。


「つまり、彼らの前に鏡を置いて惚れ薬入りのお茶を飲ませたのですよ。飲み終わる頃には全員手鏡が無ければ、帰れない状況でした。多分今頃は家に引きこもって、鏡の前から離れられないのでは? 今日カレンさんの迎えに誰一人行かなかったのも、そのためです。もう彼らは自分しか愛せなくなってしまったのでしょう」


「な、なんですって……なんてことをしてくれたのよ!! この世界の悪女のくせに!」


ついに、カレンは私が疑問に思っていた言葉を口にした。

やはり彼女も私と元コンビニ店員同様……『魂の交換』が行われたに違いない。


「ここは、私の理想の世界なのに……ヒロインは私で、ステラは嫌われ者の悪女だったはずでしょう!? それなのにエドワード様を奪うなんて! 彼はこの世界のヒーローで、私の恋人になるはずだったのに!」


エドがこの世界のヒーロー?

う〜ん……確かに顔はものすごいイケメンだし、王族という身分ではあるけれども……。

けれど立場的には第6王子で王位継承権からは外れている。それに私から言わせれば、単に食い意地の張った男性としか思えない。


考え事をしていると、再びカレンは文句を言ってきた。


「悪女なら、悪女らしく私とエドワード様に断罪されなさいよ!」


断罪……? 流石にこの言葉は聞き捨てならない。


「あの、何故私が断罪されなければならないのですか? 私、何かしましたっけ?」


「そ、それは……」


カレンが言葉に詰まったとき……。


「ちょっと、お二人とも。私達もその話に混ぜて貰えないかしら?」


「「え??」」


突然声をかけられて2人で同時に振り向くと、3人の女性が険しい目を向けて立っていた――

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