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第68話 奪い合い?

「……なるほど、つまりステラがこの部屋で眠れば、また同じ場所に戻れるというわけだな?」


「ええ。そのとおりです」


「よし、分かった。なら早速寝てくれ。一刻も早くこの不快な場所から脱出しよう」


不快な場所……? その言葉にイラッとくる。


「エド、先程から随分失礼なことを言っているとは思いませんか? 仮にもこの部屋に私は2年住んでいたのですよ?」


「え!? 2年もこんな狭い場所で暮らしていたのか……ありえない。俺だったらきっと発狂していたに違いない」


「発狂? これはまた随分なことを言ってくれますね? でも……まぁ、仕方ないですね。仮にもエドは王子様なのですから、さぞかし広い部屋に住んでいるのでしょうね」


「まぁ、王子と言っても、6番目だけどな」


「とにかく、もう少しだけ我慢して下さい。これから食料調達をしなければいけないのですから」


私は早速食べ物が保管してあるキッチンへ向かった。


「食糧調達……? あ! まさか……」


エドがあとからついてきた。


「ええ。そうです。エドが今まで食べていた食糧は全て、この部屋から調達していました」


「そうだったのか! よし、俺も手伝う。根こそぎ食糧を持っていこう!」


ドサクサに紛れて、とんでもない台詞を口にするエド。


「根こそぎ!? 何言ってくれちゃってるんですか! 根こそぎなんて持っていかせまんせからね!」


「まぁまぁ、固いこと言うなって……あ! 何だこれ……美味しそうだなぁ」


エドが私の後ろから手を伸ばし、塩せんべいの袋を手に取った。


「あぁ! そ、それは私の一推しの塩せんべい……! 駄目です! これは私のです! 絶対に誰にもあげませんから!」


「いいじゃないか。今の口ぶりならステラは過去に食べたことがあるってことだろう? 俺は一度も食べたことが無いんだからさ。それに、今日元婚約者に復讐出来たのは……俺のおかげでもあるわけだろう?」


「うっ! そ、それは……」


確かにエドの助けが無ければ、私は魔女に会えなかったし、復讐も成し遂げられなかっただろう。


「分かりましたよ……いいですよ、どうぞ召し上がって下さい」


「そうか、ありがとう。それじゃ、とりあえずこの箱の中の物は全て持ち帰ろう。俺も手伝うよ」


「ええ、そうですね……荷造りしたら、とっとと元の世界に戻りましょう。こんな狭い部屋、いつまでもいたくないですよね?」


早く、元の世界に戻らなければ……隠していた他の菓子類まで見つけられてしまうかもしれない!


「まぁ、それはそうなんだが……しかし、見れば見るほど不思議な物がたくさんあるなぁ……」


エドは台所に置かれた冷蔵庫や、炊飯器を興味津々で眺めている。まぁ、確かにこれらの文明機器は、あの世界には無いものばかりなので無理もない話だろう。


エコバックに段ボールの中身を全て詰め込むと、エドに声をかけた。


「さ、では元の世界に戻りましょう。エド」


「そうだな。それで戻る方法は……?」


「勿論、また寝ることです!」


「そうか……やっぱりそうなるのか……」


こうして私達は狭いベッドの上に無理やり二人並んで寝ると、手をしっかり繋いだ。


「……結局、この方法しか戻る方法が無いのか……」


隣で横たわるエドが溜め息をつく。


「仕方ないじゃないですか。とにかく話しかけないでくださいね。眠れませんから」


「……こんな状況でよく眠れるよ……」


「……」


私は寝たフリをして返事をしなかった。


結局、今回もエドのほうが先に眠りについたのは……言うまでもない――

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