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第63話 見つめ合う2人

「まぁ……そうだったの。2人でかくれんぼを……大学生にもなってねぇ……」


母は疑い深い目で私とエドを交互に見る。


「「ええ。そういうことです」」


2人で声を揃えて頷きあう。


「それで、お母様。エイドリアンと父親は応接室にいるのですよね?」


「ええ、勿論。言われた通り、それぞれ鏡の前に座らせているわ」


「ありがとうございます! お母様!」


喜ぶ私にエドが尋ねてきた。


「え? 鏡の前に座らせたのか? 随分とまた奇妙な座らせ方をしたもんだな?」


「ええ、これがポイントです。それに今回は実験も兼ねていますから」


「実験……?」


首を傾げるエドに私はにっこり笑みを浮かべた――



****


「確かにそれぞれ鏡の前に座らせられているけれど……なかなかシュールな光景ね」


まるで美容院に来店しているお客みたいだ。

扉の隙間から覗き見ていると、背後からエドが尋ねてきた。


「シュール? いったいどういう意味なんだい?」


「う〜ん……非・現実的な……って意味合いですかね?」


「非・現実的か……確かにそうかもしれない。あの親子をみてみろよ。二人共気まずそうに座っているじゃないか」


「ええ。そうですね」


「あの……ステラお嬢様。そろそろお茶をお出ししても宜しいでしょうか?」


メイドのエレンが声をかけてきた。彼女は先程から2人分のお茶が乗ってるトレーを手にしている。


「ええ、いいわよ? 必ず正面を向いてお茶を飲むように言って出してね」


「はい、かしこまりました」


そしてエレンは扉を開けると、応接室の中へ入っていった。


「ステラ。必ずお茶を飲むようにって……まさか……?」


エレンが2人にお茶を勧める様子を見つめながら、エドが尋ねてきた。


「はい、そのとおりです」


そのまま見つめていると、エレンがこちらへ向かって歩いてきた。


「ステラ様。言われた通り、必ずお茶を飲むように伝えてきました!」


興奮気味にエレンが伝える。


「そう、ありがとう。もう下がっていいわよ」


「はい、ステラ様」


エレンは仕事に戻り、私とエドは扉の隙間からじっと2人の様子を観察する。


「あ、ステラ。2人がお茶を口にしたぞ」


「ええ。ちゃんと飲んでいますね。しかも鏡を見ながら」


すると、エイドリアンと父親の様子がおかしくなってきた。二人共椅子から立ち上がると、自分が映り込んでいる鏡に触れてじっくりと見つめ始めたのだ。


「ステラ……あの2人、自分の姿に見惚れていないか?」


「ええ、そのようですね。ほら、あのハゲ親父は頭まで赤くなっていますよ」


「これは……」


「間違いないですね」


私とエドは互いを見つめ合い、頷きあった。


「「惚れ薬の効果が現れたようだ(ですね)」」


何しろ、あの魔女は自信たっぷりに惚れ薬をメモと一緒に渡してきたのだ。

そのメモにはこう書かれていた。


「特製惚れ薬。数滴でも効果絶大。持続効果は半永久なので使い方に要注意」


あのメモを見たときには正直言って、驚いた。

こんな恐ろしい惚れ薬を渡してくるとは、なんて素敵な魔女なのだろうと感謝した位だ。


勿論、エドには惚れ薬の注意書きについては伏せてあるけれども。


「……そろそろ頃合いみたいですね。見てくださいよ、あの2人。うっとりした目つきで鏡の前から離れようとしていませんよ?」


「よし、それじゃ……」


「はい、部屋に入ります!」


私は思いきり扉を開け放すと、エドとともに乱入? した――






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