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第61話 大騒ぎ

エドに背を向けてベッドに横たわっていると、彼のボヤキが聞こえてきた。


「一体ステラは何がしたいんだ……? さっぱり理解できない。と言うか、これってどうやって開封すればいいのだろう……? あ、こんなところにペーパーナイフがある。これで切ってみるか。……よし! 切れた。では早速……」


青海苔の香りと共に、パリンパリンとポテチを噛み砕く音が聞こえてくる。


「何だ! これは……今までステラから貰った食べ物でも1、2位を競う旨さだ!」


「あの!」


ガバッとベッドから身を起こすと、相手が王子であることを承知で睨みつけた。


「エド、うるさくて眠れないのでお願いですから静かにして頂けますか!?」


「あ、悪かった。だが、あまりにも美味しすぎて感動が止まらないんだよ。ステラ、このポテチ……」


「ええ、全部差し上げますのでお静かにしていただけますか? さもないと……」


「分かった、おとなしく食べる」


コクコクとエドは首を縦に振る。


「お願いしますよ。では」


今度こそ、眠る覚悟で私は再びベッドに横たわり……青海苔の香りが漂う部屋でいつしか深い眠りに就いていた――




「……ハッ」


気付けば、また私は元の自分の部屋の床に寝そべっていた。着ている服を確認してみると、眠りに就いたときと同じのを着用している。


「うん……やっぱり、コレはアレかな?」


ムクリと起き上がると、食料が保管してある段ボール箱へ向かった。


「う〜ん……やっぱりリセットされていないかぁ……大分食べ物が減ってきちゃったなぁ」


でも減ったと言っても、まだ在庫はある。

これも製菓会社に勤めている兄のおかげだ。毎月段ボール一杯のせんべいやスナックを送ってくれていたから大助かりだ。


「……兄さん、元気にしているかな……」


少しだけ、ホームシック? 的な感情がこみ上げてしんみりし……ハッと気付いた。


ちょっと待って……?

ステラは死んだものだとばかり思っていたけど、魂の交換とやらが行われているなら、ステラは私の身体の中で生きているってことじゃない!?


「いやあああ!! ステラ〜ッ!! 万一、私の身体でおかしなことをしていたら承知しないんだからね! うう〜……ステラと連絡が取れる方法があればいいのに……!」


けれど苛ついてみても仕方ない。

先ずはいつものように食べ物を持ち込まなければ。


「う〜ん……もう詰め込む袋が無いな……もう、レジ袋でいいか」


食器棚の奥から保管していたレジ袋を探し出すと、詰め込めるだけ詰め込んだ。

ポテチやコーンスナック、せんべい。ナッツ……。


「よし、こんなものかな?」


レジ袋を腕に引っ掛けると、私はベッドに横たわると目を閉じた。

頭の中で羊の数を数えながら……。




****



ガタッ!

ガタガタッ!!


う〜ん……何やら騒がしいなぁ……。


ゆっくり目を開けて辺りを見渡し、驚いた。何と部屋の中が荒れ放題なのだ。

全てのクローゼットは開け放たれているし、バルコニーへ続く窓も全開になっている。


「な、な、何……この状況は……!」


辺りをきょろきょろ見渡していると、ウォークインクローゼットの扉が大きく開かれてガサガサ音が聞こえている。


「まさか……ほ、本当に泥棒が……?」


その時、突如扉の奥から人影が現れた。


「キャアアアアッ! ど、泥棒!」

「ステラッ!」


思わず目をつぶって叫ぶ声がエドの声と重なった。


「え?」


驚いて目を開けると、髪が乱れたエドが呆然とした顔で私を見ている。


「ま、まさか……!」


「ステラ……!」


「この部屋を散らかしたのはエドですかっ!!」


駆け寄ってこようとするエドに言い放った――

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