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第36話〈番外編〉ユーキとフリージア


「ユーキ様って、本当になんでも作れるんですね!馬がいないのに走る馬車なんて初めて見ました!しかも広いし、キッチンまでついているなんてすごいです!」


 キャンピングカーの中をキョロキョロと見渡しながらフリージアがはしゃいだ声をあげた。最初の頃のツンデレキャラはもはや見る影もないが、そんなフリージアの姿をユーキは微笑ましく感じていた。


 ほらまぁ、ボクって拾った子猫は最後まで面倒を見るタイプだからさ。それに、ボクの無茶振りにも付き合ってくれるし、食べ慣れないだろう物を作って出してもなんの警戒心もなく食べる姿を見てたら多少は情が湧くってもんだろう?


 なんだろう、ずっとツンツンしてた野良猫がボクの手から餌を食べた時の喜びのような……。まぁ、そんな感じさ。


「こら、フリージア。まだケガが治りきってないんだからおとなしくしてなよ」


「もう大丈夫ですよぉ。ユーキ様って意外と心配性ですよね」


 セレーネお嬢の元から旅立ってからまだ半日程だったが、キャンピングカーは順調に進んでいた。この速さならオスカーからも逃げ切れるだろうと少しは安堵する。頑張って作ったかいがあったってものさ!


「それにしてもこんな乗り物まで作ってしまうなんて、ユーキ様に作れない物なんかないって感じですね!」


 こらこら、運転中なんだから後ろで跳び跳ねるんじゃないよ。危ないだろ。ってことで自動操縦にしたよ。どのみちボク運転免許持ってないんだよね。いや、ちょっとハンドルを握ってみたかっただけなんだけどさ。


「あー、運転って肩が凝るなぁ。もう二度としないよ」


 ボクが肩を回しながらキッチンスペースに行くとフリージアがすでにコーヒーを準備してくれていた。


「ユーキ様はぶらっくこーひーで、わたしはかふぇおれです」


 ちなみにこの世界にコーヒーが無いってわかった時には衝撃を受けたよ。紅茶も飲むけどボクは断然コーヒー派なんだ。まぁ偶然森の中にコーヒー豆の代わりになる植物を見つけてそれを材料に生成できたからいいんだけどね。でもこの世界の人はコーヒー飲まないだろうからとセレーネお嬢にも教えてなかったんだけど、フリージアは特別に飲ませてみたよ。だって一緒に生活するのに隠れて飲むのなんて無理だろう?そしたらブラックコーヒーは苦くて飲めないけどカフェオレにしてみたら気に入ったみたいだね。もちろん他言無用さ。ふたりだけの内緒だよって言ったらなぜか赤くなったり飛び上がったりしていたけど……フリージアは見ていて飽きないよね。


「うん、ありがとう。いい香りだ」


 フリージアもコーヒーを淹れるの上手くなったなぁ。今ではフリージアの淹れたコーヒーがないと物足らないんだよね。ついでにお茶請けにプリンがあれば言うこと無しさ。苦いコーヒーと甘いプリン。最高だろう?


「……一応言っておくけど、ボクにだって作れない物もあるからね?」


「そうなんですか?ユーキ様なら不可能はないって断言するかと思ってました」


 熱いカフェオレをフーフーと冷ましながらフリージアが驚いたように目を丸くして言うが、ボクはそんな自信過剰じゃないよ?失礼な。


「ボクをなんだと思っているんだい?」


「えー、なんとなくユーキ様ならなんでも有りかと思いまして……。逆に作れない物ってなんなんですか?」


「ん?そうだなぁ……。未来や過去に行ったりする引き出しとか、物体を大きくしたり小さくしたりするライトとか、あっという間に違う場所に行けるドアとか?」


 さすがに未来製の青い猫型ロボットみたいなのは無理だったよ。作ってみたかったけどこの世界にその材料は存在しなかったんだよね。


「……なんですかそれ?」


「……説明するとなると難しいかなぁ」


 ボクが「うーん」と首を傾げるとフリージアは「ユーキ様も冗談を言うんですね」と、目を細めて楽しそうに笑った。


「まぁ、いいや。それよりもこれからどこに行こうか。フリージアはどこか行きたい場所はあるのかい?」


「わたしが決めていいんですか?」


「もちろんだよ。それにボクはセレーネお嬢がいた国以外はほぼ知らないからね、頼りにしてるよ」


 するとフリージアは一気にカフェオレを飲み干すと目を輝かせて身を乗り出してきた。


「実は、昔から行ってみたかった所があるんです……!」


 興奮気味にその場所の事を語るフリージアは、なんだか子供みたいで面白かった。


「よし、じゃあそこに行こう。途中に町があれば食料も買えるしね」


 セレーネお嬢がくれた軍資金が尽きる前にどっかで商売もして稼がないといけないし、材料も調達しなきゃいけないなぁ。


「しばらくは退屈しないですみそうだ」


 こうしてボクとフリージアを乗せたキャンピングカーは勢いよく走り出したのだった。




「さぁ、ユーキ様!お仕事もビシバシやりますよ~!」


「はいはい。フリージアは仕事熱心だね。在庫はいっぱいあるから頑張って売りさばいてよ」


「任せてください!ユーキ様の顔面さえあれば、24時間働けますからぁ!」


 ……ボクの顔面がなんだって?フリージアは時々よくわからないことを叫ぶんだよなぁ。まぁいいか。


「そんなに働かなくてもいいんだけど……まぁ程々にね」








 その後、不思議な乗り物に乗った白衣の変人と看板娘が売りに来る便利グッズは瞬く間に評判となった。だが、なぜかひとつの街に長居することは無くあっという間に立ち去ってしまうのだとか。そして必ずその後を追ってくるようにひとつの人影が疾風の如く現れるそうなのだが……。



 常人離れしたその人物は、一悶着起こしたりしながらひたすら走っているので誰にも捕まえることが出来ずその正体はわからずじまいだった。




ー完ー




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