「博士!」
「オーガスタ博士!」
「俺たちはどうすれば良い!?」
口々に怪人たちが救いを求める。その光景をたっぷり楽しむ様、うっとりとした視線を泳がせた博士は、喜悦に歪めた口を薄く開いた。
「一応、お前たちの行動隊長は私という事になっている。このオーガスタ博士が、だ」
その一言に、安堵の息が一斉に漏れた。
全員が全員、一度失敗している。今回、組織から突き付けられた評価は、最悪のもの。再び失敗すれば、処分は免れないだろう。それは容易に想像出来た。
「良いだろう。お前たちは私が生み出した、偉大なる総統に捧げられし究極にして完璧なる再生万能細胞『グルグルパー細胞』によって蘇った再生怪人。いわば我が子の様なもの。良い? この私の為に、日本をメチャメチャにするの。どんな手段を取ろうと構わない。なあ~に、本作戦が成功すれば自ずと日本は破滅する。その葬列に華を添えましょう!」
不敵に笑う博士は、幾つものクリアファイルを背後から取り出した。
「こ、これは!?」
それを手にした怪人の一人は、まるで吐き捨てる様に叫ぶ。
その程度の反応に動揺しないが、俺は恐る恐る配られるそれに手を伸ばした。
博士は眼光をその狂気に爛々と輝かせ、その怪人の問いに、まるで己の考えに陶酔するかの如く、優しく答えてあげる。
「そう! これは、これまでにお前たちが失敗して来た作戦の概要が幾つか記されている。お前たちと同様に廃棄処分されていたが、幾つかはサルベージ出来たという訳。囮目的ならば、相手に分かり易いパターンをなぞらえるのも悪くないわ」
「なるほど! 今更、別に成功しなくても良い訳か!」
四号と五号が手を取り合って喜んでいる。まるで出来の悪いコントだ。
どれだけ不安なのだ、お前たち?
指令のままに動く。ただそれだけのシンプルな考え。それで良いではないか?
そう思いながらも、俺はファイルに目を通して行った。
俺は……無い? 俺の作戦は、そこには無かった。俺は何をどうして敗れたのだろう。闘いの記憶は断片的で、はっきりと思い出せない。まぁ良いだろう。他のをパクれば良いだけの事だ。
単純に、そう考えた俺の思考を、博士は鮮やかに斬って捨てた。
「だが一つだけ付け加えておくわ! 戦果次第で、お前たちには『再改造』の道も残されている! その事を良く覚えて置くがいい! 行け! 再生怪人軍団! 行って、日本をメチャメチャにしてしまえ!! この『私』の為に!! あーっはっはっはっはっはっは!!!」
天を衝く様な博士の高笑いと共に、背後の扉が静かに開かれた。