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第3話『廃棄品第三号』


 俺は廃棄品第三号。

 女がそう呼んだ。

 俺はそうなのか、と思った。

 俺の中はがらんどうのガラクタが散乱した虚無。そこに『廃棄品第三号』という呼称が燦然と輝いた。


 俺は廃棄品第三号。


 俺が例のカプセルから出されたのは、一号が出されてからかなり後だった様な気がする。

 意識は、時折混濁の中を彷徨い、気付けば両隣のカプセルは空になっていた。


 女は自分を、ミス・オーガスタと名乗った。


「私は世界征服を遂行する偉大な組織の究極の科学者! それが私」


 カプセルの底から見上げた女は、うっとりと陶酔する声色で自己紹介をした。

 もう大分前の事。


 その時、俺はそうなのか、と思った。

 新しく女のデータが更新されただけの事だ。


 俺たち改造人間は、脳を改造されており、組織の命令のままに動くようにされている。

 らしい。

 怒り、憎しみ、悲しみ、苦しみ、愛、あらゆる感情から解放された究極の存在なのだ。

 とか。

 唯一残されたものは、組織に対する忠誠心と、その為に働く喜び。そして総統に対する絶対の服従心。

 確かにそれは感じる。

 早く組織の為に役立ちたい。

 言われてみれば、その衝動は覚える。


 俺は女に問うた。この頃には、通常の会話が出来るまでには回復していた。


「オーガスタ、俺は何をすれば良い?」


「まずはリハビリね。お前は脳を破壊されたから、まだ身体が十分に対応してないだろう? 安心するといいわ。私の生み出した究極にして完璧な偉大なる万能細胞は、お前の失った機能を取り戻す筈。その内にね」


 不敵な笑みで返すオーガスタは、指をパチンと鳴らした。


「お呼びで?」


 すぐさま、複数の白衣の男たちが、姿を表す。

 頭部をすっぽりと覆った、白いマスクの男たち。

 見慣れた連中だ。

 先に出された被験者たちが、こいつらに連れ出されるのを、もう何度も見ていた。


「連れていけ」

「はっ!」


 男たちは、俺をオーガスタの前から引きずり去り、荷物の様に手押し車に乗せられて運ばれた先は、『再生怪人訓練室』と札が掛けられた、ただっぴろいトレーニングルームだった。

 そこには、既に多くの先客が居た。



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