勢いって怖いな~と思いながら、アーリアは見知らぬ小人達に囲まれて、死のダンスを踊る手前まで来ていた、かもしれない。
(まあ待て、時間はたっぷりある……)
どう見ても、まともな思考能力を残している奴は少ない。
きら~ん。
アーリアの青い眼が怪しく光る。
飲んだら飲まれるな。
飲まれるなら、飲め!
すっと一呼吸。
うろんな目で、上から目線。確かに頭一つはこっちの身長が高い。
「あたしが誰だって~? 誰だか、知りたいのか~い?」
ふっと薄ら笑いを浮かべ、言葉に間を置く。
この無音の一拍に、スッと気の流れが自分に集まるのを感じた。注目されている……
やおら、それに応える様に右手を高く掲げ、うやうやしく一礼。面を上げると同時に、マントの下からリュートを引き出し、ばらら~んと一撫で。
その無造作な余韻が消え入る前に、これから始まる大馬鹿な歌が引き立つ様、情感たっぷりに掻き鳴らした。
そして……
変な小人がいるよ♪ 変な小人がいるよ♪
草むらで太鼓叩く♪ 変な小人がいるよ♪
あ~っはっははははぁ~っ♪
変な小人がいるよ♪ 変な小人がいるよ♪
輪になって太鼓叩く♪ 変な小人がいるよ♪
あ~っはっははははぁ~♪
思いっきり脚を上げて足踏み。単純陽気なリズムで高笑い。笑う時は、目の前の小人を思いっきり指差して笑った。
いきなり指差された方はびっくり。慌てて太鼓を後ろに隠して照れ笑い。
「な、なんだよ~」
そんな仲間が何ともおかしくて。
すると、一人、また一人と、同じ節で音頭をとったり足踏みしたり、次第にアーリアと一緒になって歌いだした。
変な小人がいるよ♪ 変な小人がいるよ♪
当たらない弓引く♪ 変な小人がいるよ♪
あ~っはっははははぁ~♪
「お、俺じゃねぇよっ!!」
指差されて真っ赤になって、逃げ出す小人。どうやら、本当に当たらなかったらしい。
その様に、どっとみんなで大笑い。
歌はまだまだ続く!
変な小人がいるよ♪ 変な小人がいるよ♪
そこで、アーリアはまた別の小人の前に立ち、口をぱくぱく。歌詞の続きを求めた。
「い~っ!?」
目を白黒させる小人は、周りをきょろきょろ見渡し、観念したか両手を高々と上げて手拍子しながら歌い出した。
「すっころんで腰を打った変な小人がいっるよ!」
すると、少し離れたところで怪我の手当てを受けている、壮年の小人を指差して叫んだ。
「ジュペット! お前の事だよ!」
みんなで一斉に、ドッと大笑い。
すっころんで腰を打った変な小人がいっるよ♪
あ~っはっははははぁ~♪
「次はお前さんだぁ~っ!」
「おおうっ!」
とうとう歌詞のバトンリレーが始まった。
こうなったら、もうアーリアは演奏しているだけで場が持つ。みんなで勝手に盛り上がってくれるのだ。
変な小人がいるよ♪ 変な小人がいるよ♪
変な小人さんの歌は、ず~っと続くかに思えた。
「こらっ!! いつまで油売ってりゃ気が済むんだ!! 肉が腐っちまうだろ!!」
わっと逃げ出す小人達。
慌てた連中は、わたわたと転がりながらある方向へ走って行った。
ぽつんとアーリアを残し。