「うっ! 痛っ!」
手を取られて、駆け出した途端に両足に激痛が走る。
「え? リアンナ様?」
カインは驚き、直ぐに足を止めた。
「どうしたのですか? 何処か痛むのですか?」
「う、うん……ちょっと足の裏が……」
「足の裏? ……失礼します」
「え? キャアッ!」
突然カインは私を抱き上げると、歩き始めた。
「え? カ、カイン? 何するの!?」
「足の怪我を見せて下さい」
私を抱き上げたままカインはスタスタ歩き、建物の脇に置かれていた空き箱の上に私を降ろした。
「う、うん」
カインに足をそっと出すと、カインは「失礼します」と言って私の足を手に取った。
「……これは酷い……」
眉を顰め、カインは顔を上げた。
「リアンナ様、この足の怪我はどうされたのですか?」
「目が覚めたら、この姿のまま小屋の様な場所で転がっていたの。それで殿下が入ってきて……」
「え? 殿下が来たのですか!? 何もされませんでしたか!?」
顔色を変えて突然私の両肩を掴んできた。
「何もされなかったけど、聖女の力を見せてみろと言われたの。もし嘘だったら私を牢屋に入れると言ってたし、本物だったら妻に娶るって……」
「何ですって!? 殿下がそんなことを!?」
「う、うん。そうだけど……?」
何をそんなに驚いているのだろう? 元々私は殿下の后候補者だったはずなのに。
「……それで、その後はどうしたのですか?」
「とにかく牢屋にも入れられたくないし殿下と結婚なんて、もっと嫌だったから……って。え? 何で今度は笑ってるの?」
先程までの顔とは、打って変わって笑顔のカイン。
「いえ、笑っていません」
「そうかなぁ……? まぁ、いいわ。でも、聖女の力なんて見せようにもマジックの道具がないから出来ないでしょう? そこで、殿下の心を落ち着かせるためにウクレレで演奏したのよ。そうしたら、深い眠りに就いたというわけ。いくら声をかけてもつついてみても起きないから逃げ出してきのよ。でも外に出たら驚いたわ。見張りの騎士まで眠っていたのだから」
「そうだったのですか。でもよく僕の居場所が分かりましたね」
「それはオスカーのおかげよ」
「え? オスカーの?」
いつの間にか、オスカーはカインの肩に止まっている。
「オスカーが飛んできて、カインの元まで導いてくれたのよ。それでここまで来ることができたの。だけど、裸足だったから……」
「それで、こんな怪我をしてしまったのですね……?」
私の足裏は酷いことになっていたのだろう。カインが眉をひそめる。
「すぐに手当をしましょう。一旦ホテルに戻れば……」
「ちょっと待って、カイン」
立ち上がったカインを止めた。
「どうしたのですか?」
「私、試してみたいことがあるのよ」
ウクレレを小脇に抱えた。
鳥たちに助けを求めたあのとき、私は自分の知らない曲を勝手に引き出していた。今もそれが出来そうな気がする。
一度深呼吸すると、ウクレレを奏で始めた。
その曲は、やはり自分の知らない曲だった。
どうか、足の裏の怪我が治るようにと心の中で祈りながら――