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4章 12 見るだけですよ?

 私達はテーブルを囲んで着席していた。ようやく精神が落ち着いた? ジャンとカインも同席している。


「それではお話を聞かせて下さい」


私の言葉に恋人たちは頷き、リュックが手を上げた。


「あの〜……それでは俺から話をさせて下さい」


するとジャンが頷く。


「ああ、頼む。まずは2人の馴れ初めから……」


「ちょっとジャン! そんな話はどうだっていいでしょう? 愛に性別は関係ないのよ!」


ピシャリとニーナが言い切った。


「だけど、気になるじゃないか。男同士のカップルなんて。カイン様だって、きになるだろう?」


「え? ぼ、僕が?」


ジャンはカインを巻き込もうとする。

そんなに2人の馴れ初めに興味があるのだろうか?


「ジャン、そんなに2人の馴れ初めが気になるなら後で個人的に尋ねたら? それよりもまずはリュックさんの病状を教えて下さい」


病状が気になった私は続きを促した。


「はい。俺もサムも『イナク』の村で木こりの仕事をしていました。2ヶ月ほど前に森に入って斧で木を切っていたときに、運悪く右肩に木が倒れてきたのです」


「なるほど」


相槌を打つニーナ。


「そのせいで右肩が赤く腫れてしまいました。そこで腫れが引くまで、湿布に包帯を巻いて安静にしていました。いずれ、怪我も治るだろうと思っていたのに……」


そこでリュックの顔が曇る。


「リュック……大丈夫だ、俺がついているから」


するとサムがリュックの肩を抱き寄せ、頭を撫でた。


「サム……」


リュックがサムの胸に顔を埋める。


おおぅ! や、やはり本物だ……この2人は間違いなく愛し合っているカップルだ!

その光景にジャンとカインは驚愕の表情を浮かべているし、ニーナは何故か微笑ましい顔で頷いている。


サムに慰められ、気持ちが落ち着いたのかリュックが再び私達に向き直った。


「話が中断してすみません」


「いえ。お気になさらずに。それでは続きをお願いできますか?」


心の動揺を押し隠し、私は先を促した。


「数日で打撲の腫れは引いたのですが、痺れが残っていました。でも、いずれ治るだろうと思ってそのまま様子を見ていました。そうしたら……腕が動かなくなってしまったんです!!」


「!!」


あまりに大きな声で、思わず驚いて肩が跳ねてしまった。


「ちょっと! そんな大きな声出さないで下さい! し、心臓に悪いです!!」


ニーナが抗議する。


「す、すみません……興奮してつい……」


「え? それじゃ、もしかして病気ではなく……?」


カインが尋ねた。


「病気と言うよりは、動かなくなってしまった腕を聖女様の奇跡の力で元通りに治して欲しいのです。俺達は『イナク』の村で生まれ、一緒に育ってきました。これからもあの村で生きていくつもりです。そのためには斧が持てなければ……俺は、俺はもう……終わりです!」


再び叫ぶリュック。


「いいや!! お前は終わっちゃいない! 俺がついているだろう!?」


サムがリュックの肩に手を置いた。


「サム……」


「リュック、お前の抱えている重荷なら俺が半分……いや、全て受け止めてやる。だから終わりだなんて言うな!!」


そして見つめ合う2人、そんな2人をポカンと見届ける私達。


「リアンナ様、何だか良い感じでまとまっていませんか? もう2人はこのままでも良いのでは?」


ジャンがコソコソと耳もとで囁いていくる。

うん、私もそうしたいのは山々だけど……。


「素敵! 私感動しました! やっぱり愛の深さは性別をも超えるのですね?」


突然ニーナがパチパチと手を叩き出し、次にとんでもないことを言ってきた。


「大丈夫です! うちの聖女様はすごい力を持っているのですから! リアンナ様、どうかリュックさんの動かなくなった腕を見てあげてください!!」


「ええぇえっ!?」


ちょっと、ニーナッ!! な、なんてことを言ってくれるのよ!!


「ありがとうございます、聖女様! サムの腕を治してくれるのですね!?」


「聖女様……お願いします!」


リュックとサムが期待の込められた目で見つめてくる。


医学の知識なんか全く無い私に治せるわけ無いのに……!! 

こうなったら、もうヤケだ。


「み、見るだけですからね……? 本当に、期待はしないでくださいよ?」


逃げたい気持ちを押し殺し、私は恐る恐るリュックの右腕に触れた――







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