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4章 2 レオポルト・クラッセン

 カインの後を追わせるために3人の騎士達を送り込んだ2日後、騎士の1人が早駆けの馬に乗って城に帰還してきた。


早急に俺に伝えたいことがある言うことだったので、騎士を部屋に招くと早速尋ねた。


「どうした、何故お前だけ城に戻ってきたのだ? カインには会えたのか?」


彼の名はガイ。

カインと同じ22歳。ライバル同士であり、一方的にガイはカインを敵視している。


「いえ、カインには会えてはいません。ですが殿下に早急にお伝えしなければならない情報を得ることが出来ましたので、俺だけ城に戻ってまいりました」


「どういうことだ?」


「はい、どうやら『聖女』が現れたようです」


いきなりの話に耳を疑う。


「聖女だと……? それは本当の話か?」


「はい、我々は殿下に命じられた通り、『ユズ』まで向かいました。その際、立ち寄った町や村全てで聖女に関する噂話を耳にしたのです。聖女は男と女の従者を連れて巡礼の旅を続けているそうです。そして様々な奇跡の力を人々の前で披露したそうです」


「聖女か……」


今から何百年も昔、この世界には神々が天から我々人間を見守ってくれていた。

そして神の言葉を伝える代弁者の聖女が存在し、様々な奇跡の力を人々に与えていた……と伝承が残されている。


「それで、その聖女はどんな奇跡の力を披露していたのだ?」


「はい。長い棒を空中で自在に操ってみたり、何も無いところからいきなり花をだしたそうです。中でも驚きなのが、帽子の中から白い鳥を取り出したそうですよ!」


ガイは自分が奇跡の力を見てもいないのに、興奮気味に語る。

この男、腕は立つが少々頭の弱いところがある。だから、いつまで経ってもカインに勝てないのだろう。


だが……。


「なるほど、それは非常に興味深い話しだな」


腕組みして頷くと、さらにガイは勢いづく。


「ええ、そうですよね。しかも聖女は若く、とても美しい女性だったそうですよ!」


「そうか。聖女は若く、美しいのか」


そこでふと、考えついた。


そうだ……若くて美しい女性、しかも『聖女』と呼ばれているなら是非会ってみる価値がある。

その奇跡の力が本物だった場合は……妻に……。

そこで、ふとアンジェリカの顔が浮かぶ。


アンジェリカは俺の妻になれることを、とても喜んでいる。

だが、彼女には悪いが、もし聖女が本物だった場合は彼女を妻に娶ることにしよう。

いずれ、この国を統治する俺にこれほど相応しい相手はいない。


アンジェリカは側妃にすればよいのだ。


「ガイ、今すぐ他の騎士たちの元へ戻れ! そして他の仲間たちと合流し、聖女の後を追え! 追いついたら、すぐに確保するのだ! 俺もすぐに出立の準備を始めたら城を出る! 良いか? 必ず聖女を見つけ出せ!」


「でもカインはどうするのですか?」


ガイが首を傾げる。

やはりカインを敵視しているだけあって、気になるのだろう。

だが、今はそれどころではない。


「カインのことは放っておけ! 今はまず聖女が先だ! 分かったら早く仲間の元へ戻れ!」


「はい! 殿下!」


大きな声でガイは返事をすると、駆け足で部屋から出て行った。


「フフフ……」


部屋に1人残ると、笑いがこみ上げてきた。


待っていろ、聖女。

必ず見つけ出し……お前を俺の后にしてやるからな――



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