ガラガラガラガラ……
教会へ向かう荷馬車の上で御者台のジャンが声をかけてきた。
「リアンナ様、本当に今日のマジックショーは俺の助けがいらないのですか?」
「うん、大丈夫よ。だって今日は教会前でやるんだから」
「ですが、男手があったほうが良いのではないでしょうか? ……心配です」
カインがじっと見つめてくる。
「心配しなくて平気だってば。それに神父さんだって立ち会ってくれるわけだし」
「そうです。何しろ、リアンナ様には私がついているのですから」
「……だから心配なんだよ」
ニーナの言葉にジャンがボソリと呟く。
「ちょっとジャン! 聞こえたわよ!」
「そうだよ! 聞こえるように言ったんだからな!」
「何ですって!?」
「何だよ!!」
ニーナは御者台に移動するとジャンの隣に座り、とうとう二人は口喧嘩を始めてしまった。
けれど、もうすっかり慣れっこになった私は気に留めることもなく町並みを眺めていると、カインが声をかけてきた。
「あの、リアンナ様……二人を止めなくても良いのですか?」
「いいの、いいの。ほら、喧嘩するほど仲が良いって言うでしょう?
「え? 何ですか? 今の話は」
首をかしげるカイン。
あ、そうだった。ここは日本では無かった。この世界ではこんな言葉は存在しないのかもしれない。
「それよりもジャンの剣術の腕はあがりそう?」
ごまかす為に質問をしてみた。
「そうですね。筋はあるかと思います。きっと、彼はリアンナ様をお守りするために必死になって剣術を学ぼうとしているのでしょうね」
笑顔で答えるカインは、とても穏やかな人物に見える。
けれども、殿下の護衛騎士に選ばれるほどなのだから相当の腕前なのだろう。
「カインが剣術の先生になってくれたのだから、この分ならすぐに腕が上がりそうね」
「ご期待に添えられるように頑張りますね」
穏やかに話す私達とは正反対に、ジャンとニーナの口論は教会へ到着するまでの間、続くのだった――
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「それでは、リアンナ様。今日のマジックショー、頑張ってください。俺、陰ながら応援していますからね」
教会に到着すると、ジャンが目をキラキラさせて声をかけてきた。
「そうね、頑張るわ。それに今日はもう人を呼ぶ手間もなさそうだし」
背後を振り返ると教会の前にはベンチが並べられ、人々が大勢集まっている。
マジックショーを行うための青空会場は準備万端だった。
「リアンナ様。僕たちは教会の裏手で剣術の訓練を行います。もし何かあっても、すぐに助けに参りますので心置きなくマジックショーを行って下さい。この剣に誓ってお守りいたしますので」
「アハハハ……ありがとう、カイン」
カインは誓いを立てる相手を絶対に間違えている!
元々は殿下の命令で、私がこの国を出ていくのを見届けさせるために遣わされてたんじゃなかたっけ?
そこへ神父さんのところへ行っていたニーナが戻ってきた。
「リアンナ様、巡業を始めて下さいと神父様が仰っています」
「分かったわ。それじゃ行きましょう。ニーナ」
「はい、リアンナ様」
私の後についてくるニーナ。
「頑張ってください!」
「ご武運を!」
私達にエールを送るジャンとカイン。
当然この日のマジックショーも、勿論大成功で沢山の献金? を貰うことが出来たのだった――