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3章 14 喧嘩?

――翌朝


カーン!

カーン!


何か外で打ち合うような音が聞こえている。


「う〜ん……何……?」


ゴロリとベッドの上で寝返りをうち、瞼をゴシゴシと擦って目を開けた。

見ると部屋の中は明るく、カーテンの隙間から太陽の光が差し込んでいる。


「いつの間にか寝ちゃってたんだ」


身体を起こし、窓の外に目を向けると再び音が聞こえてきた。


カンッ!

カンッ!


「一体何の音なんだろう?」


ベッドから降りるとカーテンを開けて窓の外を見下ろした。


「え!? 一体何やってるの!?」


驚いたことに、カインとジャンが互いに木の棒を持って打ち合いをしているのだ。

しかもジャンが一方的に振り下ろし、カインは受け止めているだけのようだ。


「まさか、喧嘩!?」


どうもジャンはカインを敵視しているように見える。これは何としても止めなければ!


「ちょっと! 2人とも、そんなところで何やってるの!?」


窓を大きく開け放し、上から声をかけると2人は驚いたように顔を上げた。


「え!? リアンナ様?」

「な、何て格好してるんですか!」


2人は私の姿を見ると、顔を何故か真っ赤に染めた。


「え? 格好?」


改めて自分の姿を見ると、スリップドレス姿だ。う〜ん……別にこんな服装、日本の真夏では当然なんだけどな……。


「は、早く何か着てくださいよ!」


ジャンが顔を赤らめ、カインは背中を向けている。


「分かったわ、着替えてくるから2人とも何処にも行かないでよ!」


窓を閉めると、急いで私は着替えを始めた。


「……よし、これでいいわね」


ブラウスにジャンバースカートを着込んだところへ、ノックの音が聞こえた。


――コンコン


『リアンナ様、どうかなさったのですか?』


ニーナの声だ。


急いで扉に向かって扉を開けると、既に着替えを終えたニーナの姿があった。


「おはよう、ニーナ」


「はい、おはようございます。リアンナ様、一体どうされたのですか?」


「あ! そうだったわ。大変よ、ジャンとカインが棒を振り回して喧嘩してるのよ!」


「何ですって!? 騎士であるカイン様にですか!?」


ニーナが目を見開く。


「そうよ、だから急いで止めに行かなくちゃ」

「はい、そうですね!」


私達は急いで2人の元へ向かった。



カンッ!

カンッ!!


外へ出ると、相変わらず2人は木の棒で打ち合いしている。


「ちょっと、待ちなさい! 喧嘩はダメよ!」


大きな声で駆け寄ると、2人は動きを止めて驚いた様子でこちらを見た。


「木の棒で殴り合いの喧嘩なんかやめて頂戴!」


「そうよ、ジャン! 相手は騎士なのよ? 敵うはずないでしょう!」


私に続き、ニーナが目を釣り上げてジャンを睨みつけた。


「ええっ!? 喧嘩だって! 違うよ!」


ジャンが慌てて首を振る。


「それじゃ、喧嘩じゃなければ何だって言うの?」


私が問い詰めると、カインが代わりに答えた。


「ジャンから、剣術の訓練を付けて欲しいと頼まれたんですよ。少しでも強くなって、2人を守りたいそうなので」


「え? ジャン……」


「そうだったの?」


私とニーナはジャンの顔を見つめる。すると、ジャンは恥ずかしそうに視線をそらせた。


「お、俺だって……少しでも強くなれば、リアンナ様とニーナを守れるんじゃないかと思って……力をつけたかったんですよ。それで、カイン様に剣術の訓練を……」


バツが悪そうに顔を伏せているジャン。


「ジャン、ありがとう。その気持、とっても嬉しいわ」


ポンポンと軽くジャンの肩を叩いた。


「リ、リアンナ様……」


「見直したわ、ジャン。さすがは私の弟ね」


「……俺が兄なんだけど」


ニーナの言葉に、ジャンは唇を尖らせる。


「リアンナ様。確かに彼の言う通り、剣術の訓練は必要だと思います。この先も旅を続けるなら尚更です。……この先も旅の間、彼に剣術の訓練を受けさせること、了承して頂けますか?」


カインが私に尋ねてきた。


「勿論、本人が訓練を受けたいって言うのなら尚更よ」


「ありがとうございます、リアンナ様。俺、頑張ります!」


ジャンが嬉しそうに笑った。


「それじゃ、2人とも剣術の訓練頑張ってね。今日のマジックは、私とニーナの2人で行うから大丈夫よ」


「え!? 本気ですか!?」


「俺の助けはいらないんですか!?」


驚く2人。


「うん。お金を稼ぐことも大切だけど、ジャンを鍛えてもらうのも必要だから。それじゃニーナ。私達は朝食を食べに行きましょう」


「はい、リアンナ様」


するとジャンとカインが戸惑いの表情を浮かべる。


「え? 僕たちは……」


「俺達もまだなんですけど?」


「2人はまだ訓練を続けるんでしょう? 頑張ってね」


笑顔で答えると、私はニーナを連れて宿屋へ戻った――





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