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3章 9 護衛騎士として

「護衛騎士ですか? カインが私たちの護衛騎士をすると言うのですか?」


「はい、そうです」


私の問いかけに頷くカイン。


「ですが、カインは殿下の護衛騎士ですよね? その人が私たちの護衛をするなんて、そんなことして大丈夫なのですか?」


「別にずっとと言う訳ではありません。国境を越えて、次の国に入国するまでの間です。……恐らくこの分だとずっと移動は荷馬車でされるつもりですよね?」


「ええ、そうですよ。リアンナ様は何故か荷馬車の旅にこだわっているんです」


カインの言葉に、リーナは肩をすくめる。


「ここ一帯はまだ治安も良いですが、その先では時々旅人を襲った強奪事件が起きています。なので護衛があった方が安心だと思うのですが」


「え? そうだったのですか?」


う~ん……どうやらこ平和な日本で暮らしていたので、危険意識が低かったようだ。


「あ、それは私も思っていました。何しろ、ジャンでは頼りになりませんから」


「う、うるさい。ニーナ! 確かに、俺は腕っぷしは全然駄目だけど……」


落ち込んだ様子を見せるジャン。


「旅人の中にはお金で護衛を雇う人たちもいますが、僕がついて行けばその必要は無くなります。お願いです、どうか次の国に入るまで同行させて下さい」


そしてカインは頭を下げてきた。


「どうします? リアンナ様。この人は、ああ言ってますけど……殿下の犬なんですよね?」


「私たちの後をこっそりつけていただけじゃなく、伝書鳩も使って報告していたのですよ? 信用していいものでしょうか?」


ジャンもニーナもカインを前に堂々と私に自分たちの意見を述べてくる。

その言葉に、カインは増々申し訳なさそうに俯いてしまった。確かに、彼は殿下に命じられて私たちを監視していた。

どうせ断っても、彼は私たちの後をついていくだろう。


だったら……。


「いいですよ。それでは次の国に入国するまで、護衛をお願い出来ますか? いいよね? ジャン、ニーナ」


二人の顔を交互に見比べた。


「リアンナ様の意見に従いますよ」

「私もジャンと同意見です」


「え? それでは……?」


カインが顔を上げる。


「はい。今日から暫くの間、私達の護衛と助手をお願いします」


「ありがとうございます! あの……ところで助手というのは……?」


「勿論、マジックの助手ですよ」


「ええ!? ぼ、僕に助手を……ですか!?」


私の言葉にカインは驚きの表情を浮かべた。


「はい、そうです」


カインは騎士にしておくのがもったいない程のイケメンだ。彼がマジックの助手をしてくれれば、さらに人が集まるかもしれない。


「分かりました。騎士の名にかけて、助手の仕事も頑張ります!」


「何もそんな大げさに考えなくても良いですから。気楽な気持ちでお願いします」


「いえ。いい加減な気持ちでは助手は務まりませんから。誠心誠意をこめて頑張りますので、どうぞ御指導の程よろしくお願いします」


何処までも生真面目なカイン。まるで体育会系のノリのようだ。

でも、これが彼の気質なのだろう。

何しろ私が城で全員から白い目で見られ、蔑みの言葉を受けてもカインだけは違った。きっと、誠実な人なのだろう。


「はい。こちらこそよろしくお願いします」


私は笑顔で返事をした――




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