荷馬車の上で、私のウクレレショーが開催された。
「そうね、こんなに良い天気の荷馬車の旅なんだからノリが良い音楽にしましょう」
「ノリ……?」
「ノリって何ですか?」
どうやらこの世界には「ノリ」という単語が存在しないらしい。首をかしげるジャンとニーナに、果たして何と説明をすればよいのだろう?
「え〜とねぇ、ノリというのは……そう! 盛り上がるっていうことよ。盛り上がる曲を演奏するわね!」
早速私は荷馬車の上で、次のマジックショーのことを考えながらウクレレを弾き始めた。
そして私の演奏に耳を傾けるジャンとニーナ。
う〜ん……もっともっとインパクトのあるマジックを披露して、皆をアッと言わせたい。果たして、どんなマジックならもっともっと驚かすことができるのだろう?
あまりにも、私がマジックのことばかり考えていたためだろう。
マジックの神様? がついに、私の味方になってくれたのだった。
それはちょうど、森に差し掛かった時の出来事だった。
「森の中を馬車で走るって、神秘的ね〜」
ウクレレを弾きながら、見上げると木々の隙間から太陽が差し込んで光の道を作っている。
「そうですね。確かに神秘的で……うわああああっ!!」
突然頭上からバサバサッと羽ばたき音が聞こえて、御者台に座っていたジャンが悲鳴をあげる。
「ジャンッ! どうしたの!?」
慌てて私とニーナも荷馬車から顔を出し……。
「ええええっ!?」
「そ、そんなっ!!」
2人同時に叫んでしまった。
何故なら幌の上に10羽以上のギンバトが止まり、クルックルッと喉を鳴らしているのだ。
「う、嘘……ギンバトがこんなに沢山……」
思わず鳩に向かって手を伸ばすと、1羽のギンバトが羽ばたいて私の指にチョンと乗っかってきたのだ。
「キャアアアッ!! か、可愛いっ!!」
その姿に悲鳴をあげるニーナ。
喜ぶか、叫ぶかどちらかにしてもらいたいものだ。
「リアンナ様……こ、この鳩って……」
ジャンが震えながら尋ねてくる。
「ええ、これは……ギンバトよ!」
「それで、これからどうするんですか? このハト……どこかへ飛んでいく気配がありませんよ?」
幌の上に止まっているギンバトを見上げながらニーナが尋ねてきた。
「そうね。とりあえず……」
「「とりあえず?」」
ニーナとジャンが首を傾げる。
「鳥かごと餌が必要ね?」
私は指先に止まったギンバトを見つめながら、ニッコリ笑った。
こうして新たにギンバトが仲間に加わり、私達の旅は続いた。
けれど、増えた仲間はギンバトだけではなかったのだ。
ウクレレのメロディーに引き寄せられたのか真っ白なウサギも3匹集まり、荷馬車は一気に賑やかになった。
「いや〜ん! なんって可愛いのぉ〜!」
ウサギに頬ずりしてメロメロになっているニーナを見つめながら思った。
これからはギンバトとウサギの飼育の為にも、もっともっと稼がなかねれば――