店の外に出た途端、我に返った。
「あれ……? 私、こんなところで何してたんだっけ?」
見れば、腕の中にはしっかりウクレレが握りしめられている。
「え!? ウクレレッ!? いつの間に……?」
もしかして無意識の内に楽器屋さんに入って、ウクレレを買ったのだろうか?
振り返り、店を見渡すも楽器屋など何処にもない。
「おかしいな……?」
首を捻っていると突然名前を呼ばれた。
「リアンナ様っ!」
「いた!!」
すると人混みを掻き分けながらニーナとジャンがこちらへ向かって駆けてくる。
「あ! ニーナッ! ジャンッ! こっちこっち!」
手を大きく振ると、二人はハァハァ肩で息をしながら駆けつけた。
「はぁはぁ……リアンナ様っ! 一体今までどちらに行かれていたのですか! 俺とニーナがどれだけ捜していたと思っているんです!?」
髪の毛が乱れたジャンは半分怒っているような顔を向けてくる。
「リアンナ様……心配しましたよ! もう勝手にいなくならないで下さい!」
ニーナは半分泣いていた。私はこんなにも2人を心配させてしまったのだ。
「うん……ごめんね、2人とも。もう、勝手にいなくならないって約束するから」
「ええ。頼みますよ……ところでリアンナ様。腕に抱えているのは何ですか? 見たところ、楽器のようですけど」
ジャンが小脇に抱えている楽器を指さす。
「うん、そう! これよ、私が探していた楽器は。これはね、ウクレレっていう楽器なの。私、この楽器結構得意なのよ」
「始めて見る楽器ですね……ウクレレですか? どちらの店で購入されたのでしょうか?」
ニーナの質問にウッとなる。
「そ、それが……全く覚えていなくて」
「「覚えていない?」」
綺麗にハモル双子たち。
「うん、そうなの。店を出る直前までは覚えていた気がするのだけど……気付いてみれば、ウクレレを抱いて雑踏の中に佇んでいたのよ……って何? 2人のその顔は?」
ニーナもジャンもどこか微妙な表情を浮かべている。
「何ですか? それ……幻覚でもみたのですか?」
「リアンナ様、もしかしてお疲れなのではありませんか? まぁ無理もありませんよね……色々な事が立て続けに襲ってきましたから」
うう……二人に思い切り心配されてしまった。
「ま、まぁいいわ。それよりも広場に行きましょう! そこで私のウクレレの腕前も披露してあげるわよ」
「「分かりました」」
同時に返事をするニーナとジャン。
こうして私は二人を連れて、広場へ向かった。
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私達は町の中心部にある噴水広場にやってきていた。
広場には程よく人が集まっていた。
ベンチに座って話しをしていたり、もしくは商店街で何か食べ物を買ったのか食事をしている人の姿も見られる。
「それじゃ、二人とも。テーブルのセッティングとマジックが始められる準備をしてくれる? 私はウクレレを弾いて人を呼びよせるから」
「はい、リアンナ様」
「分かりました」
ニーナとジャンは返事をすると、折り畳みテーブルを広げてマジックの開催準意をはじめた。
そして私は一度深呼吸すると、ウクレレを演奏し始めた。
明るくテンポの良い曲を弾いていると、ウクレレの音色は風に乗って町中に響きわたり……足を止める人々が現れ始めた。
「あら? 何かしら。素敵な音色ね……」
「聞いたことが無い曲だな‥‥‥」
「変わった楽器だなぁ?」
やがて……。
1曲引き終わる頃には大勢の人だかりが私たちを取り囲んでいたのだった――