食事が終わり、ジャンを部屋に招いて3人で集まっていた。
「あの……リアンナ様。ここにあるものは何でしょう?」
ジャンはテーブルの上に並べられたアイテムを前に尋ねてくる。
「そうなのよ、ジャン。買い物に付き合った私も、何故これがマジックの材料になるか分からなかったのよ。リアンナ様、そろそろ教えてもらえますよね?」
「勿論よ。一緒にマジックの道具を作る手伝いをしてもらいたし。ところでニーナ、ジャン。二人共手先は器用な方?」
「俺は庭師ですから、手先の器用さには自信があります」
「私もメイドの仕事を続けてかれこれ10年。繕い物はお任せ下さい」
何とも頼もしい台詞を口にしてくれる2人。
「ありがとう、それじゃ早速説明するね。このシルクハットは、中から色々な物を取り出せるマジックアイテムを作ることができるの。そして、コップはコインを消すマジックでしょ……」
買ってきた材料をどのようなマジックに使うのかを説明していく。
2人は最初のうちは、訳が分からないと言わんばかりにぽかんとしていた。けれど、説明が終わる頃には目を見開いていた・
「……どう? 今の説明で分かった?」
「ええ、勿論分かりました!」
「素晴らしいです!! まさか、リアンナ様にそんな素晴らしい特技があったなんて全く知りませんでしたよ!」
ジャンは興奮したのか立ち上がり、ニーナはパチパチと手を叩く。
「それじゃ、早速マジックのアイテム作りを始めましょう? 二人共、よろしく頼むわね?」
「ええ、お任せ下さい」
「それでは何から始めましょうか?」
ニーナとジャンが交互に尋ねてくる。
「それじゃ針仕事が得意なニーナには、シルクハットの仕掛け作りをお願いするわ。ジャンには消えるコインの仕掛け作りをお願いするわね」
「「はい!!」」
こうして2人は私の指導の元で仕掛けづくりを始め、私は側で指導しながらマジックの練習を始めた。
何しろ、この身体は馴染みのない他人のものだ。自然な動きで観客の目をごまかせ動きを見せなければならない。
私達はこの日、日付が変わるまでアイテムづくりとマジックの練習を行った――
****
――翌朝
「う〜ん……」
自分の唸り声で目が覚めてみると、机の上に突っ伏したまま私は眠っていた。
「いつの間に、眠っていたんだろう……?」
部屋の時計を見れば、時刻は6時半をさしていた。
顔を上げてみると、ニーナもジャンも私と同様机に伏したまま眠っている。
2人の前には完成したマジックアイテムがテーブルの上に置かれていた。
「へ〜……出来たんだ」
早速2人が作ってくれたマジックアイテムを試してみることにした――
「……うん。いい感じに仕上がっている。ありがとう、二人共」
眠っているニーナとジャンに御礼を述べ、ベッドから毛布を取ってくると二人にかけてあげた。
窓の外を見れば、青空が広がっている。
「今日も良いお天気になりそうね。絶好のマジック日和になりそうだわ……ん?」
窓の外に見える街路樹の下にマント姿にフードを被った人物が立ってた。しかも何だかこちらを見つめているような気がする。
「誰かな……?」
フード姿の人物は一瞬、こちらを見上げる仕草をし……そのまま立ち去っていった。
何? 今の……こっちを見ていた気がするけど、ひょっとして勘違いだったのかだろうか?
「まぁ、いっか」
再び席に座ると、2人の目が覚めるまでマジックの練習を続けた――