その後、別室で宿泊していたジャンを部屋に招くと先ほどと同じマジックを彼にも披露した。
勿論、ジャンもニーナと同様驚いたのは言うまでも無かった……。
「リアンナ様。今のは一体どういう仕掛けになっていたのでしょう?」
「はい、私もそれが知りたいです。まるで魔法みたいでした」
ジャンが不思議そうに尋ねてきた。結局2人は今の仕掛けに気付かなかったのだ。
「今、披露したのはマジックと呼ばれる物の一つよ。相手にバレないようなちょっとした仕掛けをつかって、まるで魔法のように見せかけるものなの。例えば、今のマジックの種明かしだけどね……ほら、見て頂戴」
私は右腕の袖をまくって2人に見せた。すると、2人が同時に驚きの声を上げる。
「「あ!!」」
実は私の右腕にはボタンが入ったマッチ箱が紐でくくりつけられていたのだ。
「ほら、右腕を振ると音が鳴るでしょ」
私は先ほど見せたマジックのように右腕を振ってみた。
カチャカチャカチャ!
「音が鳴った……」
「鳴ってるわ……」
「この3つ並んだマッチ箱、実は中身は全部空っぽなの。開けてみて」
すると、ジャンとニーナはすぐにマッチ箱に手を伸ばして蓋を開けた。
「本当だわ……」
「中は空だ」
「そう、つまりこういうことよ。空に見せかけるマッチ箱は左手で持って振る。そして中身が入っているように見せかけるマッチ箱は右手で振る。そうすると、あたかも中身があるように思うでしょう?」
「はい! ものの見事に騙されてしまいました!」
「素晴らしいですね! これがマジックというのですか? もう驚きです!」
ジャンとニーナが興奮気味に騒ぐ。
「良かったわ。2人に受けたみたいで。なら決めたわ。私、町でマジックを披露してお金を稼ごうと考えているの。どうかしら?」
何しろ、今2人に披露したマジックは本当に初歩中の初歩。これでも私はアマチュアマジシャン歴5年になるのだ。そこそこのマジックなら自信はある。
「なるほど、つまり大道芸人のようなことをされるというわけですね?」
ジャンが感心したように頷く。
「うん、そうなの」
大道芸……この世界にもあったのか。
「すごくいい考えだと思います! 私は生まれて初めてマジックというものを目にしましたが、本当に驚きました。仕掛けを知ったときもです」
ニーナの興奮は止まらない。
「よし、それじゃ決まりね。私は今日から、マジシャンとして町に出てお金を稼ぐわ。2人にはこれから客寄せを頑張ってもらう。いいわね?」
「「はい!!」」
ニーナとジャンは力強く頷く。
きっとこれから2人は私の為に客寄せを頑張ってくれるだろう。
何しろ、今後の生活は全て私のマジックにかかっているのだから。
……でもその前に。
「それじゃ、まずは皆で食事をしに町へ行きましょう」
「そうですね」
「賛成です!」
食事と聞いて、ニーナとジャンの顔に笑みが浮かぶ。
ついでに昨日とは違う質屋に行って、今度はアクセサリーを売却しよう。
とにかく今は資金を沢山集めて、マジックアイテムを一から作らなければならないのだから――