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第66話 ニンジャの戦い

「それで、実際活路を拓くっていってもどうするんだ?」


 突然現れた四人の忍者。

 作戦開始前までの忍び装束ではなく、最先端の装備品で身を包んだその姿はサイバーニンジャっぽい雰囲気がある。多分、彼らにとっての勝負服なのだろう。


 俺はゴエモンの側面に立って、俺は質問を投げかけた。「もちろん決まっているでござる。溶岩を攻略するための――水遁の術を放つだけでござるよ!」「ん?」俺は思わず固まった。


「どうにも、状況は変化していたでござるが――溶岩を纏うとは、悪手でござったな! 各員! 水遁の術……解放っ!」


 全員が指で同じ印を見せたかと思えば、彼らの前方に魔法陣が起動。

 驚くほどの勢いで水が溶岩龍にぶつけられていく。

 じゅー!

 という音と、水蒸気が視界を白に塗り替えていった。「総員、回避!」ゴエモンの指示が聞こえたかと思えば、悪寒が俺の背筋を走って行く。「俺たちも回避だ!」少し遅れて、俺はゴエモンたちがそうしたように、飛び上がった。

 真っ白な視界を切り裂いて、俺の下を黒に染まった何かが薙いでいった。


 水蒸気が急速に晴れて、視界が明瞭になる。


「全員無事らしいな」

「先生、そんなことより――溶岩龍を見てください!」


 ユウリに促されて俺は視線を前へと移す。「これは……」

 溶岩はゴエモンたちの水遁の術で、冷やされて岩へと姿を変えて――真っ黒な天然の鎧となっている。

 なるほど、これなら斬ることができそうだ。

 下半身を溶岩で補っていた都合上、それらが冷えて岩になったことでバランスが崩れてしまったらしい。溶岩龍は地面にたたき落とされ、地面を這いずる姿はまさしく蛇行という他ない。


「拙者たちは溶岩纏いとギミックの攻略に専心するでござる。溶岩龍を倒す、一番美味しい役目は任してもよいか?」

「ああ、そうだな。任せてくれ」


 大槌を肩で背負って、俺はゴエモンに返事。

 溶岩ビームも水遁の術で相殺してくれるはず。もしそうだとするのならば――俺たちは直接戦闘にのみ集中できるということだ。


「よし、これでマトモに戦えるな」

「僕一人でもいいかもしれませんけど……」

「私だってまだ活躍できてないんだから!」


 ソウジとチヒロが、やや勇み足気味に俺の前に出た。「え、あ、わ……私がタンクなんですけど」困惑気味にユウリが二人を見遣る。「分かってるわよ、だったらちゃんと――ヘイト買ってなさいっ!」その言葉を言うが早いか、チヒロが疾駆。


「も、もうチーちゃん……待ってよ~!」


 それに続いてユウリも駆け出した。「あはは、二人は仲がいいなぁ。僕も行きましょうかね」ゆらりと重心を動かして、ソウジも疾走。

 俺だけが置いていかれてしまうが、まぁ後方で合わせるために俯瞰して見ておこう。


 ユウリが、がん、がんと盾を打ち鳴らして溶岩龍の視線を集めた。その間に、先行していたチヒロが一気に溶岩龍との間合いを詰めた。「喰らいなさいッ!」そのまま、溶岩龍の首目掛けて槍を突き立てる。

 再び響くのは甲高い金属音。

 槍が弾かれて、チヒロの姿勢が大きく崩れた。「こいつぅ! 堅すぎでしょ!」と、怒り心頭の様子だった。ぎろりと、溶岩龍の視線がチヒロへと向けられる。「チーちゃん!」流れる尾に対して、ユウリが差し込み盾で受け止め弾かれていく。


「ユウちゃん!」

「私は、大丈夫!」


 地面に着地するユウリ。お返しと言わんばかりに、チヒロは飛び上がる。「鱗がダメなら――!」その言葉通り、彼女の狙いは理解できた。彼女の槍が差し向けられた先は――溶岩龍の眼だ。

 いくら堅いといえども、目まで硬い生物というのは珍しい。


「はぁっ!」


 溶岩龍は溶岩を纏っているが故に、その動きは鈍重。

 防御力は上がったが、速度は大きく低下していることだろう。故に、小回りの利くチヒロの攻撃は回避できなかった。


 チヒロ渾身の一撃が、溶岩龍の眼に差し込まれた。


「よし、入ったっ!」


 絶叫と共にのたうち回る溶岩龍。

 最早ヘイトなんて関係がない、その巨大な図体を右へ左へ上へ下へと揺らしまくっての攻撃とも取れるような行動。「思い知ったか!」と、チヒロは意気揚々としている様子だった。


 悶え苦しんだ溶岩龍は、逃げるように溶岩の中へと潜っていく。「あ、また……」ユウリがその姿を追いかけるが、今までのものとは違って溶岩龍が帰って来る気配はない。


 デジタルの世界だが、エネミーの挙動はかなり本格的に作り込まれている。

 実際に生きているとさえ思わせてくれるほどだ。

 それは、その生態もそうである。基本的に、生物にとっての勝利とは生存であり、敗北とは死である。溶岩龍は、それを計算か本能かは分からないが……俺たちとこれ以上戦うことは割に合わないと思ったのだろう。

 溶岩に潜航した龍が帰って来ることは、もうないだろう。


「これにて落着でござるな」


 ゴエモンが俺の隣に駆けよって、ニンニンと手を動かした。帰って来る気配もないので、このまま進むことができそうだ。

 とはいえ、ここで溜まって溶岩龍が帰ってきても面倒だ。俺たちは次の階層へと足早に移っていく。


「さて、これにて共同戦線は終了でござる」

「ああ、ありがとう。助かったよ」

「それはお互い様でござるな。お互い、試験を合格できるように頑張るでござるよ!」


 和やかなやり取りを行い、俺はゴエモンを見送った。

 木陰集会のメンバーたちは、忍びらしい身のこなしでどこかへと行ってしまった。


「騒がしい奴らだったわね……」


 腰に手を当てて、はぁ……とため息を吐くチヒロ。「面白い人たちだったじゃないですか、実力も高そうでしたし」とソウジが続ける。


「それで、仕事の方はどうだったんですか? 先生……?」


 ユウリが俺の顔を覗き込んで、確認を取る。「ああ、それに関しては……」進展があった。木陰集会のメンバーが装備していた装備の解析をレナに頼んでいたのだ。


「はい。どれもハイテクノロジーズのフラグシップモデルですね。最高級品です!」

「……なるほど、そういうことね」

「つまり、ハイテクノロジーズから支援を受けている可能性が高いっていうことですね? 先生!」


 俺は首を縦に振って、ユウリの言葉を肯定した。「じゃあ、六英重工業の支援を受けているのは、魔労社ってことになるんですね」ソウジの言葉にも首を縦に振る。これで、今回の依頼は全て解決したというところだ。


「レナ、タロウさんに連絡を入れておいてくれ」

「はい、分かりました!」


 これで、正直試験を継続する必要はないな……。

 帰ろうかとさえ、思ったところで「お、おい! た、助けてくれ!」妙に聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「あれ、ゴリラのおじさんだ」

「ゴリアテ!」


 ソウジのボケに、ツッコミを入れるゴリアテ。彼の来訪が、また新しい面倒事の訪れを俺たちに知らせてくれる。


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