この大学にはオカルト研究サークルなんてものがあったりする。
正式名称、超常現象研究会。都市伝説や呪術なんかを本気で信じて研究しているんだとか。
……校内でたびたび焚火をしていたり、木に怪しい印を刻んでいたりするのもその活動の一環なのだそうで。
俺はそんな傍迷惑極まりない小規模な集団から距離を置いて過ごしていた。
なんで過去形なのかって?
……関わっちまったのさ。その危険集団に。
その結果、どうなったか。
「なんで……」
目を覚ました俺は、男子大学生には見合わぬ甲高い声で、まるで紅葉のように小さな手をまじまじと凝視しながら、わなわなと震えて叫んだ。
「なんで、ちっちゃい女の子になってんだ――――――!?」
*
とりあえず、一からこの状況について思い出そう。
事の発端は、確か昨日。大学構内の一角。公園のようになっているスペースの隅。秋の風に枯葉が舞う、絶好の焚火日和。
「おお、ユズくん。燃えたぞ!」
「そうですね! これで水とタービンをつければ……」
「電球が付いた! 呪力発電成功だ! これでエネルギー革命待ったなしだな!」
枯葉を燃やして発電している女の子たちがいた。
ゴスロリの小学生くらいの子と、中学生くらいのポニーテールの子。両方ともめちゃくちゃな美少女。
……すっげーシュールだ。ってか呪力発電ってなに?
大量の疑問点に固まっていたところ、ゴスロリの女の子がこちらに気づいたようで、たたたっと近づいてくる。
「お? おお! さっそく我が超常現象研究会の『部員』候補一号が現れたぞ!」
……俺は瞬時に理解する。これは関わってはいけないやつだと。
視線の先の焚火のそばの、中学生くらいのポニテ少女も、いかにも逃げてくださいみたいなハンドサインを送っている。必死に。かわいい。
「にひっ。幸先がいいな。『我々から逃げない』あたり、やはり『適性』はバツグンだ」
上目遣いでニコッと笑ってくるそのゴスロリ女児。濃い紫のくるくるツインテールを揺らしはにかむ姿はあまりにも――いやいやいや。
「な、何を言って」
一瞬出てきた〈んああああああああぎゃわいいいいいいいくぁwせdrftgyふじこlprprprprprpr〉というどう考えてもキモい選択肢を速攻で脳内から消去したうえで、意味の分からない言動に対してのツッコミを入れようとするが。
「ほい、これで『実験』は終了だ」
……実験?
右手の違和感。下に視線を移す。
少女は俺の手首を握っていて。
――俺が、少女に、触れられて……!
興奮に身もだえそうになるのを必死に抑えながらも、その先――自分の右手の甲を見た。
なんてことはない。ただの右手の甲だ。ただひとつ、六芒星の模様が描かれていること以外は。
すん、と俺は無表情になって少女を見やる。彼女は「くししししっ」と、まるでいたずらに成功したかのように笑っていた。
その手には、黒いもの。というかマッ〇ー。極太字。油性。
そう、油性。
焚火に落ち葉をかぶせて消火作業にいそしんでいたポニテ少女は、「あちゃー」といったような顔で、額に手を当てていて。
「さて。逃げるぞユズくん!」「……ですね!」
「待てェ! 人の手に! 油性マジックで! 落書きすんなやァ!」
洗っても落ちねぇだろうがよ!
走って逃げる女の子二人組。追いかけようとするものの、二人ともやたらと逃げ足が速く、ついに追いつくことは叶わなかった。子供ってすごいや。
ったく、俺が
……てか、いまさら気づいたけど、あの二人組
「ちっくしょう! 合法ロリかよ騙された!」
怨嗟の声が響く大学構内。ドン引きする通行人に一切目もくれず、俺は地団太を踏んだ。うん、今日も平和だ。
まあ、そんな平和な一日だったわけだ。昨日は。
そう、昨日はそれで終わったのだ。
うん。普通に帰って、普通に飯食って。
普通に床について、普通にシコって、普通に寝落ちした。オカズは普通に、いつもの
普通の日だ。何一つ問題のない、普通の日だった。
午後のうちずっと、右手の甲に六芒星が居座っていたこと以外は。
何一つ異常のない、これ以上ない普通の日だった。
その結果、どうなったか。
「なんで……」
目を覚ました俺は、男子大学生には見合わぬ甲高い声で、まるで紅葉のように小さな手をまじまじと凝視しながら、わなわなと震えて叫んだ。
「なんで、ちっちゃい女の子になってんだ――――――!?」
つまり、そういうことだった。
*
って、つまりどういうことだよ!?
俺は頭を抱え悶絶しながら、昨日という至極平和で普通で当たり前の一日に何の手がかりもないことに軽い絶望を覚える。
まず、現状を把握しよう。
幼女になった。以上。
うーん、なにもわからん!
うだうだしてても仕方ないし、俺はいったんベッドから降りることにして――ぶるるっと震えた。
……おしっこ。
やっべえ、一気にトイレに行きたくなってきた。
この家、トイレが一階にしかないんだよなぁ。そしていまいるこの自室は二階。狭いとはいえ変な家だ。この構造のせいで、妹がおもらしする姿を何度も拝めて眼福――じゃなかった、大変だったり。
……そう、俺には妹がいたことを、すっかり失念していた。
「りんご姉、あんな大声出してどーし」「うわぁぁトイレトイレどいてぇぇぇ!」
がちゃ、と開かれたドアの先にいた妹――に直撃し。
「ひゃ、あ、……う、そ……」
こてん、と尻もちをついた、その接地面に生暖かいものが広がる。
しゅいい、といままさに「なにか」が放出される音。かすかな水圧を確かに感じさせるその音の発生源が自分であることが、空っぽになった脳内に事実として刻まれていく。
「……ぁ、だめ、だめらめらめぇ! れないれ……やぁ……だいがくせいなのにぃ……」
自然と出てくる現実拒否の幼い文言。目の前の妹は「あちゃー、やっちゃったか」と、まるでこの現象が『いつものこと』であるかのように軽いため息をついた。
それは、紛れもない『
……ほんとは、だいがくせいなのに、ちっちゃい子みたいに振舞って、ちっちゃい子みたいに扱われて――屈辱的なはずなのに――。
――ぞくぞくするのは、なんでだろう。
「全部出た? 『お姉ちゃん』」
水流が止まり、妹は俺にそう尋ねた。
「……ん、たぶ……ん?」
ぼんやりとした頭が次第と冷めていき――俺は『自然な違和感』に気づく。
「まって? ……なんで……なんで、幼女になった俺に違和感を抱かない? 『俺』はお前の『お兄ちゃん』ではあれど、『お姉ちゃん』になった覚えは」
「え? 『お姉ちゃんは最初からお姉ちゃん』でしょ?」
さも当たり前かのように言い放った彼女。
「これじゃあ、トイレトレーニングやり直しだねー。いっしんいったい……ん?」
嘘だ。
「どしたの、お姉ちゃん。早くシャワー浴びて」
嘘、うそ。
「お着替えしよ? 朝ごはんも食べてさ。今日、大学一限からでしょ?」
冗談だと言ってくれよ、なあ!
「どーしたの、お姉ちゃん。おーい……あ、お姉ちゃんまたおもらししてるー。きょうはだめだね、おねえちゃんっ」
茫然自失、立ち尽くした俺の足を伝う液体。それに目もくれず、俺はただこの状況を考察して、けれどしきれずにいた。
ただ一つ、わかったことと言えば。
ここは、俺の知る世界じゃないということだ。
*
あれから、いくばくかの時が過ぎた。
いくばくとはいっても、せいぜいが二時間程度。現在通学中。もちろん、俺の通っていた大学への、だ。
結論から言おう。
この世界から『俺』は消えていた。
いいや、消えていたというのは語弊があるだろうか。正しくは、『俺の存在』が『別の何物か=今の自分』に塗り替えられていた。
……その『いまの自分』というのを定義すると、こうなるだろう。
『身長一〇八センチ標準体型、身体年齢約五歳、黒髪ロングでトイレトレーニング中の、可憐な黒髪ロリの女子大学生』である。
ちなみに今日はトイトレおやすみの日としておむつ着用中。
最後の一言――『女子大学生』というところで大いに矛盾しているが、実年齢と名前――「
……男に似合わないこの可愛らしい名前はコンプレックスだったので今まで自分からは明かさなかったが、女の子になったらむしろ可愛い名前だしいまは別にいいや。閑話休題。
ともかく俺は、幼女姿の大学生という何とも矛盾した存在としてこの世界に存在していた。
通勤電車はタタントトンとその十両編成の堂々たる体躯に人間をすし詰めにして、駅を通過していく。次の停車駅で、今度はJRに乗り換え、郊外の山の中にある大学を目指す。
そんなときだった。
「……んっ」
股間に、ツンとした感覚がよぎるのは。
「おしっこ……」
細い声で口から零した言葉。……狙ったわけではないが、その可愛らしい声にキュンと胸が締め付けられる。
しかし、それどころではなかった。尿意である。
さっき電車に乗る前、ちょっと出したはずだった。家を出る前も一応トイレに行って少しだけだが出したはず。
ちなみにトイレの使い方は妹に(何度も教えてるでしょ、と苦言を呈されながらも)優しくレクチャーしてもらった。トイレトレーニング中、という立場ゆえである。
そう、いまの俺はトイレトレーニング中の幼女なのだ。少なくとも身体は。
だからか、と合点がいった。膀胱の容量が少なすぎて、すぐに尿がたまってしまうのだ。
いちおう我慢しようとすればこのまま我慢することもできるだろう。少なくとも次の乗換駅までは、ぎりぎり持つはずだ……と、直感が告げている。
けど――それでいいのか、と俺の心が問いかけた。
俺は真性のロリコンだ。
ちっちゃい子が好きだ。幼女が好きだ。少女が好きだ。中学生以下の女の子が大好きだ。
その上で、そんな女の子たちの恥じらう姿が大好きな、ド変態だ。
女の子が最高に恥じらうシチュエーションの一つ、それは――OMORASHI。
そう、おもらしである。
その下半身を己の年不相応な「恥ずかしい」失敗で濡らすとき、少女の
その失敗がおむつの中に納まったとしてもだ。自己嫌悪や鬱屈とした感情、恥ずかしさなどが混然一体とした表情、女の子が見せるそんな一瞬の姿に、俺は『萌え』を感じるのである。
さて。今の俺の姿を見てみよう。
黒髪の美少女。五歳くらいという体躯ながら、大学生。そう、いつもは邪魔な合法ロリという属性が、このシチュエーションにおいては逆に「年齢に見合わない」という萌え要素に繋がっている。
ここまでうんぬんかんぬんと話してきたが、何が言いたいか。
『ここでおもらししたら、最高にかわいい『わたし』が見れるのでは?』
俺の脳はどうかしていた。
でもだめだ。良識がさけぶ。
俺は大学生なのだ。おもらしなんて……おむつにおもらしなんて、大学生がやっていい失敗じゃない! しかも、
けれど、悪魔も声を、というか息を荒げて告げるのだ。
妹にもおもらしを見られ、トイレの使い方を教わり補助便器で一緒に「しーしー」って言いながらおしっこし、さらには女児用の可愛らしいおむつを穿かされ、「きょうはトイトレおやすみ」なんて宣言も出されてる。今日だけでこれだ。もう今更過ぎるだろ。
しかもだ。この世界線ではまだ俺――いや、あえて「わたし」と言おう。わたしはトイレトレーニング中なのだ。女子大学生なのに。
つまり、この世界線ではもう大学生なのにおもらししちゃダメなんて矜持は意味をなさないんだよ。
「でも、でもぉ……」
口に出ていた葛藤。
言葉を探る理性に対して、悪魔は追い打ちをかけた。
今日は「トイレトレーニングおやすみ」なんだろ? お膳立てはされてるんだ。やっちまえよ……!
こうして、俺が選び取った選択は。
「あえて」ガマンすることだった。
何故か。理由は単純だった。
――おしっこを我慢する女の子も、かわいいじゃん。
けれど、その我慢もずっと持つことはない。
「あっ、んあ、あ、あぁ――――」
俺は、おもらしした。
急行電車は駅に滑り込む。
目をとろんとさせ、ドアに手をついて、頬を紅潮させ、息を荒げていた。
ドアのガラスに映った俺の姿は――最高に、かわいかった。
電車は乗り過ごした。
*
「はー……散々だった」
結局電車を乗り過ごし、次の停車駅でおむつを替えて、その駅からJRに乗り換えたら運悪く遅延していて。
結局大学に着いたのは二限が始まる直前だった。
というわけで放課後。
俺は「超常現象研究会」という立て看板のあるあばら家の前にいる。
あからさまに不法に建てられたと思しき小さなトタン小屋の玄関を叩くと、すぐさま「はーい」と返答があった。
こうなった経緯というのはこれもまた非常に単純なもので。
昨日のことはもう先刻語ったばかりだから省略するとして。
その何の変哲もない昨日に唯一あった些細な変化こそ、オカ研の合法ロリに、手の甲に落書きされたことだった。
故に、そこに手がかりがあったに違いない。そう睨んだわけだ。
さて。あばら家のドアを開けたのは、昨日の恐らく比較的良識的なほうの、中学生くらいの体の少女。
「えっと……何の用で」
「通せ、ユズくん」
「……どうぞこちらへ」
そんなやり取りののち、俺は中に通された。
その小屋の中は、見た目に反してそこそこに広く、会議室のようになっていた。
前方にはスクリーンまであり、その奥にまだ部屋があるようだった。
「さ、こちらへ」
中学生くらいの娘――ユズくんと呼ばれた彼女に、最前列のパイプ椅子に通される。
その席にはすでに紙コップが置いてあった。中にはコーヒーが入っていて、いい匂いが部屋中に漂っていた。
「……俺が来るの、わかってたんすか」
「どうだろうね」
俺の対面に、小学生くらいの少女が座っていた。ゴシックロリータの白黒のワンピースを身に纏った彼女が――。
「私こそ、オカ研こと超常現象研究会、会長の
ポ〇モンのラスボスみたいな名前してるな。それが第一印象だった。
その坂城さんは。
「あえて君の口から聞こうじゃないか。――要件はなんだい?」
そう、もったいぶった口調で尋ねた。
俺はため息をついて。
「単刀直入に言いますが」
答えた。
「俺を、元の身体に戻してください」
「ほう、一応聞くが、なんでだい?」
「突然身体を変えられて、立場まで変わって、扱いも変わって……このままでは狂います」
「どう、狂うのだね?」
深堀りするように質問を重ねる坂城さんに少し唇を噛みつつ、俺はなおも答えた。
「……こう、おかしいんです」
「どう、おかしいのだね?」
「…………その、この体だと……そ、粗相をしてしまって……」
「粗相、おもらしか。それで、どうなるのだ?」
「………………あろう、ことか」
「あろうことか?」
「……………………それで、きもちが、へんになっちゃってる、わたしが――」
ここで俺は、まさにその感覚を味わっていた事に気づく。
「どう、変になるのだね?」
その、ある意味言葉責めに感じるような質問に対して、俺は息を荒げながら答えた。
「――ぞくぞく、するんです。ぞくぞくして、びくびくして、ふわぁ~って。とってもきもちくて、あたまがぱーに――――」
ぱん、と鳴った。
そこで俺ははっと息を取り戻す。
目の前を見ると、坂城さんが手を打ち鳴らしたようで。
「そこまででいい」
股間付近が、ジトっと湿っていることに気づいた。……おもらし、気付けなかった。
気づけなかった?
――「わざと気づかなかった」の間違いでは、ないのか。
「……想像以上に、『侵蝕』が進んでいるようだ」
坂城さんの独り言のような言葉。疑問に感じるのもつかの間。
「まず、きみをこの姿にしたのは私だ」
彼女は白状した。けれど、その次に「だがな」と続ける。
「そもそもアレは『幼児化する呪い』でも『性転換する呪い』でもない」
「じゃあ、なんなんすか。俺をこんなにしたのは――」
そう怒鳴り上げると、その彼女は冷静に告げる。
「――『その人が本当になりたかった姿にする魔法』だ」
「……は?」
「これは前提としてだが、君はロリコンだろう」
その言葉に俺はおずおずと首を縦に振る。
「けれど、ロリコンには大きく分けて二種類の人間がいると私は思うんだ」
「二種類、ですか」
「ああ。一つは、少女に性的感情を抱いている者。いわゆるステレオタイプ的に想像されるロリコン、あるいはチャイルドマレスターに代表されるだろう」
「もう一つは」
「――少女に、憧れる者だ」
彼女曰く。
少女に「憧れる」のは、つまり少女の少女たる様にあこがれを抱く、ということである。
少女の少女たる様、例えば可憐さ。無邪気さ。自由さ、など。
フリルやリボン、レースやピンク。そういう少女らしい意匠に恋い焦がれるのもそうだ。
少女らしさ、つまり『少女性』に憧れを抱く、ということ。故に、それを当然のように持っている「少女」に対して特別な感情を抱くのも必然と言えるだろう。
「ま、一言で言えば、少女になりたいということ。君はそのタイプだったのだ」
「で、でも、俺は女の子は好きですが……女の子になりたいとかは」
「無意識下でそう思っていたのだ。――たとえば、いままで少女を性的に犯したいと思ったことは」
「ないです! 断じて――あ」
「そういうことだ。きみは、性的なロリコンではない。『憧れ』タイプのロリコンだったのだ。故に」
「無意識下で願った理想の姿――幼女になった」
「ザッツライトだ、リンゴくん」
坂城さんの同意に、俺は「自分の正体」を思い知った、ような気がした。
「そして、それを聞いてもなお、君は元の姿に戻りたいと願うかね?」
彼女の問いに、俺は――――。
*
自宅に帰って、俺は自分の部屋のクローゼットを漁った。
この世界の自分はずいぶんとおしゃれさんだったらしく、意外と服がいっぱいある。その中から、一時間かけて、とびきりかわいいものを一着選び取り。
「えへへ……これが、『わたし』、か」
二段フリルのスカート。ピンクの綿シャツ。袖口にはフリルが付いていて、前面にはよくわからない――意味も特にあってないのであろう英字が踊っている、そんな女児服。
髪の毛はさらに二時間くらいかけて、なんとかツインテールを結んでみて。
かわいい星のヘアピンで前髪を止めた。……これで、わたしはかんぺきに、おんなのこだ。
自室に増えていた姿見。その前で一回転して、スカートをひらりとはためかせる。
その下に見えるのは、ピンクを基調とした可愛らしい柄がついた、紙おむつ。
……姿見の前で、今度はスカートをめくってみて。
ああ、そろそろ出ちゃいそうだ。トイレトレーニングを中途半端に終えているからこそ感じる尿意の予告に、「わたし」は胸を高鳴らせ、口角を上げ――。
「……えへ……女の子の暮らし、ハマっちゃいそう」
本当の自分は、こんな人間なのだ。
おむつの中央に走った黄色い線が青緑色に変わっていく中――その「少女」は、幸せそうに目を細めたのだった。
Fin.
*
初出:2024/05/06 pixiv