「ひょっ、いえ、勿体ないお言葉です……!」
ゾヘドさんにお礼を言われてしまった。推しに直接「有難う」と言われるなんて、それだけでもう天に昇る心地だ。こちらこそ有難う御座います!
「や。皆、お待たせ」
「マナちゃん!」
などと私が舞い上がっているとマナちゃんが来た。運営スタッフとミーティングに行っていた彼女だが、こうして戻ってきたという事はそれも一段落が着いたのだろう。
「諸々の調整は済んで、ひとまず『ハテグ=クラ祭』は問題なく終わらせられそうだよ。後は閉会式を行うだけ。皆のお陰だね、ありがと!」
「は、はひ!」
ゾヘドさんに続いてマナちゃんにも礼を言われるなんて。今日死んでもいいかもしれない……!
「『ハテグ=クラ祭』を最後にもう大きなイベントはないからね。明日から一週間の余暇を挟んでサーバーは閉鎖。今回のテストプレイをβ版として、正式版の製作に取り掛かるよ」
「……この一週間でやり残した事を終わらせておけって話だね」
「カンストまでレベル上げしてみるとか、
ルトちゃんとマイがマナちゃんの言葉に続く。
一週間かあ。何しよう。敏捷値極振りを更に極めてみるか、それとも未体験のイベントがないか探してみるか。最終日は運営側から何かするつもりはないっぽいけど、こっちで勝手にお祭りとかしようかな。それとも皆で集まって打ち上げでもいいかもしれない。うーん、悩むなあ。
「で、サーバーを閉鎖したらすのこちゃんとはこうして直接は会いにくくなるから、その前にすのこちゃんに訊きたい事があるんだけど」
「私に? 何でしょう?」
急に改まってどうしたんだろう。疑問には思うものの逆らう理由がないので、私も彼女に向き直る。すると、
「すのこちゃん、チクタクマン社のVTuberにならない?」
「えっ、ええええええええええ!?」
なっ、なっ、なっ、何を言い出してんですかこのお方!?
何かと思ったらまた突拍子もなくとんでもない事を言われたんですけど!