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#21 登録者数500人突破うぇーい

 最初の冒険プレイから翌日。


「おおー……!」


 YabeeTubeのページを開いていた私の口から思わず感嘆の声が零れた。

 なんと私の登録者数が五〇〇人を超えていたのだ。一気に十倍以上だ。


「『「旧支配者のシンフォニア」始めました』って動画を投稿しただけでここまで増えたかあ」


 このゲームが注目されている証拠だ。とはいえ、急増したなんて言えるのは元々の登録者数が少なかったせいでもあるんだけど。四十七からの十倍なのだからそんなにはイキれない。


「動画の高評価数もまだ二桁だし……」


 まあこの辺りはどうしようもない。動画を見た人全員が評価ボタンを押すなんて事はまずないのだ。ましてや登録者全員が動画を余さず見るなんて事もない。視聴回数を増やしてくれただけでも感謝しなくては。


 ていうか何気に祝詞のりと動画が一番高評価数が多いんだけど、どういう事なの。皆、意外とこれが好きなの?


「まあいっか。――よし、それじゃあ引き続き冒険を頑張っていきますか」


 VRヘルメットを被り、ベッドに横たわる。

 私の意識が急速にゲームの世界へと沈んでいった。





「ところでよお、このゲームって何が目的なんだ?」


 朱無あかむ王国の首都、瑞加祷みずかとう市でマイと合流後、彼女は唐突にそう問い出した。


「ん? 目的って何の話?」

「ほら、プレイヤーじゃなくてキャラクターとしての目的だよ。フツーのRPGなら魔王をブッ倒すとか敵国をブッ潰すとか、そういうのがあるだろ?」

「ああ、そういう意味」


 彼女が言っているのはゲームのストーリーの事だ。

 このゲームのPCキャラクター達は何を目的に冒険者になったのか。プレイヤーならば「ただ楽しいから」とか「流行りだから」といった理由で済ませられるが、PCは違う。PCはこの世界の住人だ。命懸けの戦場、危険な冒険に出るには相応の理由が求められる。


「公式ホームページや取扱説明書に世界観について書いてあった筈だけど」

「オレが長い文章読むの苦手なの知ってんだろ」

「あー……」


 はい、知っています。幼馴染として。

 逆に私は設定集とか事典とか読むのが好きなんだけど。仕方がない。ここは私が簡単に説明するとしよう。


「端的に言えば、発掘と開拓かな」


 このゲーム、『旧支配者のシンフォニア』の舞台はどこかというと、何と日本だ。剣と魔法の世界ではあるが、異世界ではない。しかも西暦にして三〇〇〇年の日本だ。現実の私達がいる時代よりも一〇〇〇年先の未来がこのゲームの舞台なのである。

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