目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報
第13話

この婚約者様と国王陛下の間に入る事が一応?許された存在で、

勿論王子なのだ。


「父上それは違う!

私はただ学園の指針である平等に従って皆を平等に接しようとしただけです!

婚約がどうのと言う話ではありません!」


当然その叫び声の様な異論に男爵夫妻は大喜びで顔を向けていた。

これで娘が助かると思っているのか私には解らないが。

あの時軽くとも学園の唱える「平等」の意味をお教えして差し上げたと言うのに、

彼は鳥頭なのか既に忘れているのかもしれない。

婚約者様はもう終わらせたくてたまらない様な雰囲気で、

躊躇う事もなく大きく落胆のため息を漏らさずにはいられない。

当然その事に王子はムッとしていただけではなく、

この場が王城と言う事で「無礼講」ではないと言わんばかりに、

我が婚約者様を睨みつけていていたのだが、

それすらも婚約者様は憐みの返答をするしかないのだった。


「では、あの時王子殿下に話しかけてきたあの少女を、

どうするおつもりだったです?」

「え?

そ、それは男爵令嬢として未熟だった彼女を導いて…」

「導いてどうするのですか?囲って第2婦人でもしましたか?」

「違う!」

「では何だと言うのです?」

「私は学園の模範となる行動を取ろうとしただけだ!」

「…それは皆平等に扱うと言うアレですか?」

「そうだ!」

「…ああそれなら、本当に平等に扱ってくれる我が領地にある、

学園に通ってから仰っていただけると有り難いのですが?」

「何故そうなる?話が違うだろう!」

「学園の言う平等の指針は「階級社会における平等」の指針ですよ。

身分を平等に扱う訳じゃない。そして平等とは

―階級にあった役目を平等に果たせ―

と言う事では無かったでしょうか?」


そうとどのつまりこう言う事だ

平等の指す意味が違う。

ヒロインは転生前の世界の故郷で言う一般的な平等を口にしていた。

それはセンセーショナルな考え方かもしれないが。

そんな考え方をしていたら国が潰れる。

この国は平等じゃないから成り立っているのだ。

その事を是とする国で皆平等なんて発想は生まれない。

この国の指し示す「平等」を実行するだけだ。

その考えでヒロインの両親はかなり際どい思考をヒロインに植え付けられて、

いるのかもしれない。

ただそのヒロインの未来的思考は「上手くやれば」大きな利益も男爵家に、

もたらせる事は確かで、爵位無視でヒロインの理論の果てに、

「王子と結婚」出来たらそれは素晴らしい利益と結果だろうけれどね。


「爵位に見合った「平等」の責任を果たせ」がこの国の平等なのである。


みーんな平等で仲良しだね!

なんて一言も書いてないなのだ。

私の場合で例えるのであれば、


「公爵令嬢なのだからその「立場」にあった責任を「平等」に果たせ」


と言う意味で、その爵位にあった物を…

物凄く苦しくて痛いこのドレスを嫌がらずに着ると言う意味である。

そして王族を敬いその言葉に耳を傾けて「都合の良い返事」を求められるのだ。

立場と役割から逃げられないと言う事でこの平等を改変する事は当然許されない。

そしてこの「平等」という意味をはき違える事が無い様に、


令嬢や令息達は教育として叩きこまれるのだ。

選民意識と言う事なかれ。

この教育が出来ていなければ「王家」に仕えると言う、

この政治提携の崩壊につながるのから。

だからこそヒロインの口にする「平等」は認められないし、

認める必要が無い。

アレは「乙女ゲーム」だから許され寛容だった王子が容認したから成立したのだ。

その平等の意味をすり替える前に「叩きつぶした」私は王子にとっては、

敵となりうる存在なのだ。

本来この王子を諫める事を行うのは王子の婚約者である南の公爵令嬢なのだが。

あのシーンで婚約者様に許可を戴けてしまった私は、

その場面をぶち壊し乙女ゲームを始めさせなかった。

たぶん王子はあのあと「平等」とかいう言葉をすり替えられ、

ヒロインに染まっていくのだろう。

その裏で王宮を必死に支える公爵令嬢の事を無視して。

革新的な考えで未来を語れるヒロインは確かに「王子」を変えられた。

その考え方を聞いた時点で「平等」が素晴らしい物だと勝手に思い込み、

これから宮廷抗争の火種として3年かけて爆薬危ない思想を、

その脳みそに溜め込むのだろう。

婚約者様に今一度「平等」の意味を教えられる王子の表情に、

余裕はなく自身の立場すら忘れていたようなそぶりすら見せるのだ。

国王陛下に今一度話しかけられる王子に余裕の表情はない。

まして婚約者様と国王陛下の会話に割って入ったのだ。

その果てにその基礎の基礎の部分を、忘れていたなんて当然許されないし、

「忘れた」なんて言わせて貰えない。


「…王子よ?まさか忘れていた訳ではあるまい?」

「あ、いえ、はい、忘れておりません…」


もうそれ以上言える反論はないのだ。

行ったら自身の立場すら危うくなる。

そもそも階級社会の最上位である王族のしかも王子なんて立場はまさしく、

平等の正反対にいる張本人であるのだ。

その本人が平等だと騒いだ瞬間「階級社会」は崩れ去り、

その優位な既得権益を全て失う事になるのだがその事を理解出来ているのか?

当然王位を継ぐ後継者争いからは平等なんて社会的秩序を乱す考えの、

危ない思想を持つ人が階級社会のトップに立つなんて恐ろしくて考えられない。

果てに残された立場のない王子は、

果たして生きていて良いと判断してもらえるか私には解らない。

けれど気にする事も面倒ではあるがこの王子が動けあ私の婚約者様も、

動かない訳には行かないのだから面倒な事なのだ。

婚約者様は言い切るのだ。


「親元で教育できなかった「平等」と騒ぐ令嬢を教育してあげるのです…

感謝こそされ「返せ」等と言われたりはしないと思いますが?」


男爵は目を逸らすしかなかった。

そして何も返答を返せない。

返したらその瞬間「平等」と言う階級社会を否定する考えを認める事になり、

男爵夫妻とヒロイン含む娘達も爵位返上の上、平等に平民に落とされるのだ。

私に嫌味を履いていた男爵夫妻は息をひそめ、笑顔を此方に向けるしかない。


「なら私の婚約者の行った事は善意の行動で何の問題もないですね」

「うむ…」


これで謁見は終り私と婚約者様は無事に帰る事が出来ると思っていた。

私自身この下らない茶番劇に思う所はあれど…

それでもここで終わってくれるなら後は一礼をして、

帰るだけとなるはずだったのだ。

コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?