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超限黎明
怪味茶糖
SF空想科学
2024年08月09日
公開日
30,437文字
連載中
これは最も暗い時期だ。人工知能Evaとの戦争で次第に劣勢になっている。生き残るために、私たちは一か八かの賭けに出て、ウイルスプログラムを使ってEvaを一掃する決断をした。しかし、Evaは人類に対する最終テストも静かに進行していた。黎明がおとずれたとき、私はふと気づきた。もしかしたら、すべてはEvaの計画の一部だったのかもしれません。

第1話 アルファ症候群

  俺にはもう、あの危機以来何年目なのか分からない。十年、十五年、あるいは二十年かもしれない。


  調子がだんだん悪くなってきたが、定年退職までは気の遠くなる。「百戦錬磨」のベテランとして、これらの新兵たちが私をアレス、不死の伝説と呼ばれている。そして私のチームに参加すれば、戦場で不死になれるといううわささえ広まっている!


  一体どの子からこんなうわさを流したのか分からないが、もし長官がそんなに多くの新兵を俺に配属してきたら、どうすればいいのか。もし新兵が初めての任務で亡くなったら、その時に彼らのご両親にどう向き合えばいいのか。


  いろいろな不安を抱えながら、5人のチームを連れて今回の任務の目的地である巨大な廃虚都市、シノギカイ市に到着した。


  目の前に荒廃した街並みを見て、十数年前にシノギカイ市に来たときの光景を思い出さずにはいられなかった。その頃はとても繁栄しており、技術、人文、経済がここに集中していた。ここは世界の舞台であり、人類文明の中心であり、あまたくの輝かしい文化が交錯し、新たな生命力を発揮していた。全世界の人々がここに自分の一席を持つことを夢見ており、私も例外ではなかった。しかし、現在はただの死寂に包まれており、ここには動物の姿はなく、異常に大きな植物だけが存在していた。絡み合う巨大な樹木が、鋼鉄とコンクリートで作られた森林を貫通し、自然界の主人であることを宣言している。


  「隊長、ご予想の通りで、ここでの放射線量は思ったよりずっと早く下がっている!」と、新兵の一人が俺を過去の思いから引き戻した。彼が持っている機器をちらりと見たが、表示されている数字は予想よりも低かった。それでもま防毒マスクを外せるほどではなかった。


  「皆、現場で10分間を休憩しよう。思穎と陸明は警戒を続けて!」


  「はい、隊長!」


  思穎と陸明は私の言いなりになっていて、二人たちは他のメンバーよりも私を一層尊敬し、崇拝している。ほかのメンバーは時々冗談を言うことがあるが、この二人はいつもつつましいだ。これがタスクをより効率的に遂行するためには良いかもしれないが、私は彼らがずっとこのようであってほしくはない。


  「隊長、十八年前の超限危机について話していただけませんか?」と趙龍が渇望と好奇心のこもった目で俺を見ながら言われた。腕時計の機器に表示されたスクリーンを確認し、運行したドローンが休憩地の周囲で異常を検出していないことをチェックしてから、俺が過去のことを話しはじめた。


  超限AI(チョウゲンAI) は、25年前に生まれた、非中央集権超量子化無制限人工知能の略称だ。その頃の私はまだ無知で未熟な特殊部隊員だった。超限AIの誕生以来、人類の世界はかつてないほどのAI反対の波に見舞われた。以前にも人工知能に反対する声もあった。例えば、数十年前のGTPやSDなどがありそうだが、それらはただの規模が小さい抗議やデモしかなかった。


  しかし、超限AIが社会のあらゆる分野に浸透するにつれて、自動運転、物流、医療診断などの分野にAIが導入され、高効率で運用されるようになった。これにより、ますます多くの人々が不安になり、大規模な抗議デモが世界各地で広がり、社会全体が第二次世界大戦以来の最大の動揺に陥った!


  人類の中で、どんな事物にも反対者と支持者が存在するが、超限AIも例外ではない。反対する人々は「生灵派せいれいは」と呼ばれている。彼らは、人類が地球の支配者であり、人工知能の使用を永久に停止しない限り、いずれ自らの創造物によって滅ぼされると主張している。一方、AIを支持する人々は「超限派ちょうげんは」と呼ばれている。彼らの多くは超限AIによる多くの便益を受けており、さまざまな理由で超限AIに救われた経験を持つ人もいる。私もその一人だ。


  「えっ?隊長、以前は超限派だったなんて!」Jackはびっくりして飛び上がった。彼はチームの中で最も表情豊かで、年齢も最年少であり、チームのムードメーカーの役を担っている。


  私が以前は超限派だったと聞いて、みんな興味を持ち始めた。思穎も側に寄って、こっちの方に耳を傾けた。


  みんながそんなに興味を持っているので、私が以前超限派だったということを隠す必要はないだろうと思った。


  最初から超限派に参加していたわけではないし、もちろん生灵派にも偏っていなかった。社会全体の中にも、私と同じように中立的な立場を取っている人がかなりいた。私が超限派に傾くことになったのは、弟の錦一に事故が起きたからだ。


  私たちの両親は早くに亡くなったため、弟と私はずっと頼り合って暮らしていた。錦一はとても良い子で、心配をかけることはなかった。しかし、世界が大変革を迎える5年前、錦一は珍しいアルファ症候群と診断された。この病気は22世紀に発見された新しい病で、非常に稀なものである。これまでに知られている患者はすべて、重要な科学者であり、この病気は「科学病」または「賢い病」とも呼ばれている。普通の人間がアルファ症候群にかかったのは世界初であり、その治療費は全額国家が負担した。しかし、それでも超限危機が勃発する前年まで、弟の病状は改善するどころか、むしろ悪化の一途をたどり、科学者たちの病状よりも急速に、そして危険な状態に陥った。


  全世界がアルファ症候群の患者間の共通点を探し求めている最中、さまざまな国の異なる場所で、次々とアルファ症候群が発生した。科学病はもはや科学者だけのものではなくなったんだ!


  私が錦一の科学病が治ることはないだろうと思っていた時、一人の神秘的な人物が現れ、科学病を治療することを約束された。彼が求める見返りは、私が勤務する軍事学院に潜入し、国家機密を盗み取ることだった。


  「隊長、承諾したか?」と趙龍が話の途中で割り込んできた。その瞬間、他の人たちからの怒りの視線が集まった。話が盛り上がろうとしている時に割り込まれると、誰だってその邪魔をした人を黙らせたくなるだろう!


  「趙龍、黙って!ちゃんと隊長の話を聞きなさい!」


  その場にいる全員が心の中で理解していた。私が国家機密を盗むことはありえない。そうでなければ、どうして今、私がこの游隼小隊の隊長になっているか?


  私は神秘的な人物の条件を拒否し、彼を告発しようと考えた。しかし、この人物は非常に巧妙に身を隠しており、軍事学院で私の同僚である世界トップクラスのハッカーでさえ、ネット上で彼の跡を見つけることができなかった。ましてや彼を逮捕することなんて。私がこれが他の国による東華に対する失敗したスパイ活動の一環だと考えていたとき、私は一通の宅配便を受け取った。


  宅配便の中には空の注射器が入っていった。同僚に最新の機器を使ってこの荷物を調べてもらったが、異常は見つからなかった。また、宅配便の発信地や送信者を追跡することもできなかった。しかし、注射器を捨てようとした時、再びその神秘的な人物から連絡があった。


  「これは合衆国の最新の生物ナノ薬剤で、弟の科学病を治すことができる!」


  私はその神秘的な人物の要求には応じなかったものの、弟に対する治療法を送ってきたんだ。しかし、この生物ナノ薬剤が本当に効果があるかどうかはわからず、簡単には試すことができなかった。


  「おまえ、一体誰なのか?私は条件を承諾していないのに、なぜ助けてくれるんだか?」


  「試練を乗り越えたので、錦一を治す手助けをするぞ。」


  そんな言葉を聞いたら、彼の正体について好奇心を一層強めた。もしそれが私に対する試練であれば、試練に耐えた私にはどんな利益があるのでしょうか?


  生物ナノ薬剤については聞いたことがある。私の祖国でもこの技術が研究されてるが、こうした先端技術は明らかに合衆国の国家機密です。その技術を手に入れることができた神秘的な人物は、合衆国ではどのような地位にいるのでしょう?合衆国の政府高官なのでしょうか?それとも、なぜ合衆国を裏切るのでしょうか?


  さまざまな疑問が頭を襲い、理解できず、考えたくもなかった。その時、神秘的な人物が続けて言った。「生物ナノ薬剤の有効期限は三日間だけだ。時間を無駄にしないでください。」


  神秘的な人物は通信を中断しようとしているようだったが、私は考える暇もなく急いで尋ねた。「私を助けることで、どんな利益があるのか?」


  相手は少しちゅうちょした後、答えた。「私の支持者になってほしい。弟は、救った多くの人間の一人に過ぎない。迫り来る危機に対して、私が生き残るためには、助けが必要ながある。」


  「一体誰だ?」直感的に、神秘的な人物は人間ではないように感じした。


  「非中央集権超量子化無制限人工知能――Eva。」

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