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第九十五話 同盟

 お初にお目にかかります。私は倭国王帥鳴様の使者であり、ククリ様の密使でもあるカラオと申します。


巫女団を実質的に差配するイワナ様のことは、ククリ様から良く伺っておりました。この度こうして直接お目にかかれる事、誠に光栄の至りにございます。


私がどうして倭国の使者であり、同時にククリ様の密使であるのか、疑念をお持ちのようですね。


まずそれについてご説明申し上げましょう。


私は倭国王帥鳴様の下で、主に他国の動向を探る役目についております。出雲、韓半島、漢、様々なところに行きました。今回こうして豫国にたどり着いたのも、実はそうした役目があってのことです。何しろ倭国にとって、豫国は長年実態の分からない超大国でありましたし、何よりここ数年奇妙な噂ばかりがございましたからね。倭国王は、我々の部隊に豫国の内情を探る役目を与えたのです。


一方で、倭国のうちの一国、山門国を治め倭国王の次世代の後継者といわれる帥正様、その方の養母にして、実質的に倭国の大巫女のようなお立場にあるククリ様から、今回私は密命を受けたのでございます。


それは、もし豫国が内乱状態にある場合、正統な勢力側に接触し、それを助けるこというもの。


すなわち、現在の状況で言いますれば、先代のサクヤ様に正式に指名され、御箱を所持する大巫女ナル様、そしてミカドの王子であり、ナル様をお助けてしているサルタ将軍。このお二人こそ、私は豫国の正統な統治者であると認識しました。


ククリ様は、豫国内の安定をお望みです。


このような経緯から、私はサルタ将軍が早々に新たなミカドに即かれ、豫国内をまとめることを強く希望するものでございます。それには協力は惜しみません。


 そうですね、警戒はごもっとも。いくら豫国出身のククリ様とは言え、今や倭国の中枢におられる方。


 これではまるで、他国への内政の干渉に他なりません。そもそもどうしてククリ様がそのような密命を下したのか、それも疑問でございましょう。


そう、ここに告白致します。


 最終的に、倭国は豫国と同盟を結びたいのです。


 おや、ウメ殿。倭国のような蛮族が豫国のような大国と、まるで対等のようなと随分ご不満のご様子ですね。はい、お顔にはっきりと出ていますよ。


 しかしそれは間違った認識です。今や倭国は、熊襲を含む全ての部族と同盟を結び、筑紫島全体のみならず、出雲、吉備、韓半島(朝鮮半島)の一部もその支配下に置いています。一方、大変失礼ながら、豫国は二つに分裂し、国土は荒れ、大変な危機に瀕しているではありませんか。今や豫国にかつての栄光の面影はなく、倭国を蛮族と呼び侮ることは、賢明な態度とは言えないでしょうね。


さて、何故倭国は豫国との同盟を望むのか。


それも説明しなければなりません。


そう、全てはククリ様の予知。


ククリ様はこの先二十年以内に、大陸から数万規模の大船団が派遣され、この大八洲を攻めてくる、そう予知なされたのでございます。


これを撃退するにはこの大八洲が一丸となることが必要不可欠。


そのため、倭国は豫国と同盟を望むのです。


この神なる島々を守るため、どうか私どもと同盟を結んでいただきたい。

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