「一、何があっても最後まで百物語を続けなくてはならない」
渡辺霊子は、淡々と言葉を紡ぐ。
「いやだ! 助けて! 助けてくれ!!!」
廊下に逃げたクラスメイト達が、黒い毛むくじゃらの手に次々と捕まっていく。
「ニ、語り手の話を阻害してはならない
三、話し終わったら、必ずろうそくを吹き消すこと」
バキバキ、ゴキン! 嫌な音が聞こえる。
「四、話し終わっていないのにろうそくを吹き消してはならない」
やがて、静かになった。
「五、何が起きても百物語が終わるまで、部屋を出てはいけない」
教室には、十数人ほどのクラスメイトだけが残された。ただ一人を除いて、みな、恐怖を顔に張り付けていた。
渡辺霊子が、薄い唇の端を吊り上げて笑う。
「さぁ、百物語のつづきをはじめましょう」