「……おわりです」
石谷は、しずかにろうそくの火を吹き消した。
「首吊り死体に恋をする……か。これ昔ボカロ曲でもあったけど、ありえないんだよね」
眼鏡のほうの佐藤が、早口でまくしたて始めた。何やら不満があるらしい。
「だってさー、首吊ったら普通顔が下を向くわけじゃん。星空を見ている君に惚れたけど……なんてリアリティーがないじゃん」
「うるさい! 僕はそういうロマンチックでバッドエンドなのが好きなの!」
石谷は顔を真っ赤にした。彼がこんなに怒ったのを見たのは初めてかもしれない。
「まーまー。喧嘩してたら日が暮れちゃうよ」
仲裁するのは学級委員長の植木。でも、まだ二人言い争っていた。
「おしっこもれちゃいそうだよぉ~~~~!!!」
おしっこマンの痛切なる祈りが届いたのか、喧嘩は治まった。