そのあと、女の人はお父さんが家の中に入ったことを怒ったりはしませんでした。僕とお父さんは、気まずくなりながら家に帰りました。
家に帰った後、お風呂に入りながら女の人のことを思い浮かべました。月明かりに照らされて、少ししか顔が見えなかったけれど、とてもきれいな人でした。また、会いたいと思いました。
だから、夜になったらこっそり会いに行きました。
でも、洋館に着いてから思いました。彼女になんて話しかけよう。家に勝手に入って行っていきなり話しかけたら、あのおじさんと同じ不審者じゃないか。
洋館の玄関の鍵は、相変わらず開いていました。でも、僕は中に入りませんでした。
その日は、僕が洋館に行ったときから、女の人はバルコニーに出て星空を眺めていました。
その姿を、僕はずっと、眺めていました。